それでも君を愛してる

3


(今は二人きりで来てる訳じゃないんだよな。ラブラブしたいのはやまやまだけど、とっとと食料捕って帰らないと…)


 海と言えばやっぱり魚だろう。
 釣れるかどうかはわからかったが、釣れなかった場合は貝でも拾えばいい。
 とりあえず二人で釣りをしようと思い、持ってきた釣竿を取り出した。



「セリス、コレ。釣ざ…」



 2本のうちの1本をセリスに渡そうと、にこやかに隣にいるであろう彼女を見遣った。
 だが、そこに彼女はいなかった。



「あれ…セリス?」



 不思議に思って辺りを見回した次の瞬間…






・・・・・・・・・・。






 俺は唖然とした。

 彼女の姿はもう俺の隣にはなく…














バシャン!




バシャン!!




ザッパ〜ンッ!!!





 彼女は海の中に立っていた。

 水面から身体の半身だけを出して。
 そして魚を捕っていた。




 素手で。




 何と言う手捌きだろう。
 その様はまるで、熊が鮭を捕るかのごとく左へ右へ魚を掬い上げ、しかもウマそうな魚、マズそうな魚を怒涛の速さで選別し、ウマそうな魚だけがどんどん砂浜にあげられていく。

 それはもう鮮やかに。
 そして果てしなく華麗に。





あれは…あれは誰…ですか??





 どれだけ目を擦っても、どれだけ目を瞬かせても、あれはセリスに他ならなかった。

 水飛沫を豪快に上げながら、魚を取る彼女。
 その顔はさながら能面の如く、動きは精密機械のように寸分の狂いもない。確実に魚を追いつめてあげていく。
 まさに、狙った獲物は逃さない、そんな気迫さえ漂っている。

 そんな神懸かった彼女に呆気に取られている内に、何故だか目の前が滲んできた。
 俺の視界を遮るこの温かくてしょっぱいものは一体なんだろう。





 …あぁセリス。


 俺がいない間に…君は変わってしまったんだね。


 出会った時よりも強く、そしてずいぶん野性的に…。


 でも…でも俺はそんな君でも…




 いや!






 そんな君が大好きさッ!!!!








「捕ったどぉぉおおおお〜〜〜〜ッッッ!!!」





 セリスはとびきりデカイ魚を頭上に掲げて、打ち寄せる大きな波をものともせず
夕日と水平線に向かって咆哮をあげた。
 まるで後光のように夕日が逞しい彼女を神々しく照らしている。
 俺は、そんなステキで眩しい彼女の姿を温かい目で見つめて微笑み、頬に温かいものが流れるのを感じた。


 そして、フェードアウトしていく意識の中、彼女に対する変わらぬ…いや、これまで以上の愛を沈みゆく太陽に誓うのだった…。




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