■■■■ それでも君を愛してる
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* * *
ようやくセリスに追い付いて、二人並んで雑木林の向こうにある海岸を目指した。
二人きりで並んで歩くのは久しぶりだ。
何故か妙に緊張してしまって何を話していいやらわからず、お互い何も話さないまま歩いていたけれど、それが気まずいとも思わず、逆に心地良いものに感じた。
潮風が頬を撫でていく。
海岸が近い。
それにしても、こうやってセリスと一緒に歩いているだけでも幸せに感じる俺は…
かなり重傷かもしれない。
「ねぇロック…」
「ん?」
名を呼ばれ、俺は隣を歩くセリスを見た。
「私…今すごく幸せ」
「え?」
セリスは俺の方を向き、一瞬だけ目を合わせ恥ずかしげに俯いたと思うと、少し微笑んで小さく呟いた。
「なんかね、こうしてロックとただ一緒に歩いてるだけなんだけど…すごく幸せに感じるの…」
「――――…!」
一気に顔が赤くなるのを感じた。
ヤバイ…!かわいい!かわいすぎる!!
照れくさそうに下を向き、俺から顔を背ける彼女が心底愛おしくて。
彼女が自分と同じ事を思っていた事が何よりも嬉しくて。
俺はセリスの左手を取ってギュッと握った。
彼女は少し驚いたように俺を見上げた。
「俺も…幸せだよ。セリス」
俺のその言葉を聞いて、彼女はまた照れくさそうに俯いて小さく微笑んだ。
セリス、お前はいい意味で変わったよな。
出会った頃のセリスは本当に頑なで、全然心を開こうとしなかった。
それまでは帝国の常勝将軍と呼ばれる程だった彼女だ、簡単に心を開けないのは当然だろう。
だけど、俺と接する事でどんどん柔らかく綻んでくのが見ていてわかった。
皆の前でもそうだけど、俺の前では特別そうだったように思う。
自惚れかもしれないけれど、自分が彼女を変えたのだと思うと…愛しさは募る一方で。
これからもずっとそうであってほしい。
俺の顔を見るたびに微笑んで
俺と話すたびに照れ笑いして
俺と過ごす時だけ素直なお前を見せてほしい。
…無意識にそんな風に考えてしまう自分の独占欲に、思わず苦笑した。
――――ほんとに俺、重症だな…。
* * *
そうこうしている内に、俺達は雑木林を抜けて海岸へ出た。
白い砂浜、青い海、そして傾きかけた太陽が照らすオレンジが綺麗なコントラストとなって見るものを魅了する。
こんな所でセリスと二人きりなんて…
『ウフフッ!捕まえてごらんなさ〜い』
『アハハッ!待てよコイツぅ〜』
夕日と海をバックに砂浜を素足で追いかけっこするという萌える妄想をし始めた俺は、顔を緩ませてあほ面を下げていたがふと我に返り、自分の世界に没頭しそうになるのを頭を降って無理矢理中断する。