それでも君を愛してる

1


 再び皆と一緒に戦う事になった。
 俺はようやく過去の自分にケリをつけ、セリスに正直に想いを告げる事ができた。



「もう二度とお前を離さない…」
「ロック…!」



 お互いの想いが通じ合い、俺達は晴れて恋人同士になれた。





 けれど。





 俺は全く知らないのだ。


 世界が崩壊した後、彼女がどういう風に過ごしてきたのかを…。










『それでも君を愛してる』











「よし!この辺で飯にしようぜ!」


 雑魚敵との戦闘が終わった所でマッシュがそう言った。




 俺達は今、サマサの村から北へ行ったところにある小さな島に来ている。

 エボシ岩という所へ向かうため、俺とセリス、そしてマッシュとティナの4人でパーティを組み、この地を訪れた。
 この岩の中の洞窟には、どうやら謎が隠されているらしい。
 その洞窟に入る前に腹ごしらえをしておこうという算段だった。



「じゃあ俺とティナはここで飯の準備をしておくから、お前とセリスは海で何か食えそうなモンを取ってきてくれ」



 にこやかにそう言うマッシュに俺は首を傾げた。



「何で?料理するんならセリスとティナが一緒の方が…」



 途中まで言いかけて、マッシュが俺に一生懸命目配せしていることに気づく。
 ますます俺は首を傾げた。


(なんだ??何が言いたいんだ?)


 ふと考えて、ようやく一つの結論にたどり着く。
 最近マッシュとティナは仲がいい。
 それはフツーに仲良し、というわけではなく、明らかにお互いに恋愛感情を抱いているという感じだ。
 つい最近皆の元へ戻った俺から見てもすぐ判る程に。


(なるほど…そーゆー事か。)


 アイツ、ティナと二人きりになりたかったんだな?
 だからあえてティナと居残って料理するなんて…、でもそれは俺にとっても、セリスと二人っきりになれるという好機だった。
 ニヤリ、と口元を緩めて笑っているとセリスがそんな俺を横目に、



「ロック?何してるの?行くわよ?」



 そう言ってセリスが海の方へ先に歩いて行ったので



「あ!ちょっと待てよセリス!」



 俺は慌てて道具袋から釣竿を2本とバケツを出し、そしてマッシュに『グッジョブ!』の意味を込めて親指を立てて合図をしてからセリスの後を追った。



「たくさん捕ってきてね〜!」



 ティナが手を振って見送ってくれた。



* * *




「んじゃ、飯の準備するか〜。」
「マッシュ」
「ん?どーした?」
「ロック…大丈夫かな?」
「大丈夫だろ、アイツなら」
「そうよね…」




 俺はこの時、二人に違う意味で心配されていた事など知る由もなかった…。




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