■■■■ 愛情とガラクタに囲まれて
3
今やこの家は『ガラクタ屋敷』と命名されてもおかしくないくらい物で溢れ返っていた。
住みはじめた当初はひと部屋をお宝部屋と称して置場にしていたけれど、いつの日からか所狭しと並べられていた物が高々と天井まで積み上げられ始め、収まり切らなくなったお宝は次の部屋へと溢れ出し、納戸、テラス、果てにはキッチンにまで進出しはじめた。
それでも、何とか寝室だけは死守してきた。
疲れて帰ってきたロックがすぐにでも心地よく眠れるように。
けれど…その寝室もそろそろ危うい。
本当にもうそこらじゅう物で埋まっていた。
今も、微妙な均衡を保ちながら積みあがっているガラクタに囲まれて、ダイニングテーブルで狭々しくお茶を飲みながらロックと笑って会話している。
その笑顔の奥で私は思う。
ああ…いつか…
……私も埋まるかもしれない……。
「あ、そうそう!」
鬱々とした気分になってきた所で、突然何かを思い出したようにロックはポンと手を叩く。
「とっておきの物があったんだった!」
そう言い、「チョット待ってて」と私の髪にキスをした後、部屋を出ていった。
…とっておきの…もの…?
って…もしかして…
指輪、とか??
私達はまだ結婚していなかった。
だけどもう一緒に暮らし始めて2年。
そろそろ…プロポーズなんかされてもおかしくないはずだった。
『セリス。とっておきのものって言うのは…コレなんだ』
(パカッ!と蓋を開く)
『嘘…!コレって…、』
『ああ。エンゲージリングさ。セリス…愛してるんだ。俺と結婚してくれないか…?』
『ロック…!もちろん!喜んで…!』
『セリス…!』
二人はひしと抱き合った。
遠くで鐘の音が聞こえたような気がした。
〜Fin〜
「なんちゃってなんちゃってなんちゃってぇ〜〜〜〜ッ!!!」
バシバシと机を叩きまくり、そして頬に両手を当て宙を見上げた。
「あぁ…私にもとうとう…この時が…?」
「―――…何やってんの?お前…」
「!!?ロック!?…やだ、戻ってたの?」
驚きと恥ずかしさで顔が熱くなった私を見てロックは一瞬不思議そうな顔をしたけれど、その後優しく微笑みを返し、私の肩に手を置いた。
「俺が手に入れた最後のお宝…セリス、扉の向こうに置いてあるから見てきてくれ」
熱い眼差しでそう言われ、私は胸が締め付けられそうになりながら頷いた。
(どうしよう、ドキドキする…!)
1歩づつ、ゆっくりと歩みを進めた。
コツリ、コツリと足音が響く。
いつもは何気なく往来している通路がやけに遠く感じる。
普段は何とも思っていなかった古びた扉が、まるで夢の扉のように神々しく光って見えた。
もう少しなのに、なかなか辿り着けない。
(もう少し…もう少しで私に幸せが―――…!!)
ようやく扉の前まできた。
後はこの扉を開くだけ。
私は意を決して目を固く閉じ、ドアノブに手をかけ、グイッっと手前に扉を引いた。
期待と興奮を胸に、少しずつ目を開けていく。
目の前にあったものは…。