■■■■ 愛情とガラクタに囲まれて
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「んで!これが苦労の末の戦利品!『カトブレパスの瞳』!これ手に入れるのにどれだけ苦労したか…」
そう言ってロックが出してきたものは、人の頭程の大きさの、丸くて透き通るキレイな青珠だった。
「すごい…キレイ…」
「だろ?」
ロックはぱちりと片目を瞑って得意げに笑った。
本当に透けた青が鮮やかで、幻想的でとてもキレイだった。
私も思わず魅入るくらいに。
「次はコレ!『イクシオンの角』!これも色々あってさぁ…」
そう言って次のお宝をテーブルに置いた。
彼は目の前にあるダイニングテーブルからはみ出る程の長〜〜〜い角についての苦労話を語ってくれる。
実に楽しげに。
―――にしても…角、ねぇ…。
「んで次は『デモンズウォールの破片』!」
―――それは…岩、よね…?ただの。
「それとコレ!『トンベリの包丁』!」
―――コレ…ってただ倒してパクってきただけじゃ…。
私の思いを余所に、彼はまだ興奮覚めやらぬ思いで語り始める。
…ねぇロック。
様々な冒険譚を語ってくれるあなたは本当に素敵よ。
キラキラ、キラキラ、眩しいくらい。
でも…でもね…?
ごめんなさい、私には…
どれもガラクタにしか見えないの…ッ!!
ここ2年でロックがトレジャーハントに出掛ける事十数回。
その内時々は空振りに終わる事もあった。
けれど成功した暁には、彼は様々な手土産を持ち帰って来る。
それはもう、大きな物から小さな物まで。
…くだらないガラクタから、有り得ないガラクタまで。
そりゃあ彼にとっては全て、命懸けで得た物なのだから貴重な宝物だと思う。
珍しい物や、希少価値のある物もたくさんあると思う。
けれど私には…正直その価値がサッパリわからない。
角やら岩やら包丁なんて持って帰ってこられても、本当にそれが宝と言えるのかさえ私にはわからなかった。
寂しい事だとは思う。
彼の好きなものの事なのに判ってあげられないなんて。
でもどうしようもなくて。
旅の思い出話だけをにこやかに聞く事しかできない自分が本当にもどかしい。
そう思うのだけど。
宝の価値がわからない私にもひとつだけ言える事がある。
そしてそろそろ気づいて欲しいの。
そうやってあなたが『お宝』を持ち帰ってくればくるほど、
…この家が狭くなるという事に。