愛情とガラクタに囲まれて

1


 ねぇ、分かってる?



 私はあなたが好き。本当に好き。



 ケンカしても、イジケて拗ねられても、それさえも許せてしまうくらい



 どんな時でもあなたが好きよ。





 …だけど。





 ねぇ、分かってる?





 こんな私でも










 ―――我慢の限界があるという事を。










『ガラクタと愛情に囲まれて』











「セリス!ただいま!」

「お帰りなさい!ロック」



 半月振りにトレジャーハントから夕暮れ時に帰って来た彼は、何をするよりも先に、家に入るやいなや私をきつく抱きしめて、そして優しい口づけをくれた。

 何よりも嬉しい瞬間。
 半月の間1人寂しく待っていた事も、その一瞬で全てを忘れられるくらい。



 私達は今、アルブルグに住んでいる。

 2年前にケフカを倒し、ロックとお互いの想いを確かめあったあと、この街に居を構えた。
 小さい家だったけれど、プロヴァンス風の様式のこの家を私は気に入っていた。
 それに、愛する人とずっと一緒に暮らせる事が幸せで仕方がなかった。


 とは言っても、トレジャーハントが主な仕事のロックは家を空けることが多いのだけれど…。





 短い時は2週間ほど。
 長い時はひと月家を空けることもしばしば。

 だけど私はそれでも構わなかった。
 寂しくないと言えば嘘になる。
 けれど私も花屋で働くようになって忙しくしているし。
 それに、どんなに夢を追って帰りが遅くなろうと、彼が帰って来てくれる唯一の場所はココだから。
 だから安心して待っていられるのだ。



 だけど…。



「セリス!聞いてくれよ!今回のハンティングはすごかったんだぜ!」

「なぁに?どんな話か楽しみね」

「ああ!今回はほんっとに大変でさぁ」



 キッチンのダイニングチェアに腰掛け、彼が意気揚々と旅の話をしてくれる。
 私はそれをにこやかに聞いて相槌を打つ。

 彼の話は私が経験した事のないような話ばかりで、聞いてるだけでも本当に楽しかった。
 それに彼のその話す時の顔といったら、まるで子供がその日の大発見を母親に報告するような、少年のような笑顔なのだ。
 私はその日だまりのような笑顔がたまらなく好きだった。



 だけど…だけどね?

 ひとつだけ。

 あなたには言えない不満があるのよ。





prev next#
back

- ナノ -