■■■■ 愛情とガラクタに囲まれて
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ねぇ、分かってる?
私はあなたが好き。本当に好き。
ケンカしても、イジケて拗ねられても、それさえも許せてしまうくらい
どんな時でもあなたが好きよ。
…だけど。
ねぇ、分かってる?
こんな私でも
―――我慢の限界があるという事を。
『ガラクタと愛情に囲まれて』
「セリス!ただいま!」
「お帰りなさい!ロック」
半月振りにトレジャーハントから夕暮れ時に帰って来た彼は、何をするよりも先に、家に入るやいなや私をきつく抱きしめて、そして優しい口づけをくれた。
何よりも嬉しい瞬間。
半月の間1人寂しく待っていた事も、その一瞬で全てを忘れられるくらい。
私達は今、アルブルグに住んでいる。
2年前にケフカを倒し、ロックとお互いの想いを確かめあったあと、この街に居を構えた。
小さい家だったけれど、プロヴァンス風の様式のこの家を私は気に入っていた。
それに、愛する人とずっと一緒に暮らせる事が幸せで仕方がなかった。
とは言っても、トレジャーハントが主な仕事のロックは家を空けることが多いのだけれど…。
短い時は2週間ほど。
長い時はひと月家を空けることもしばしば。
だけど私はそれでも構わなかった。
寂しくないと言えば嘘になる。
けれど私も花屋で働くようになって忙しくしているし。
それに、どんなに夢を追って帰りが遅くなろうと、彼が帰って来てくれる唯一の場所はココだから。
だから安心して待っていられるのだ。
だけど…。
「セリス!聞いてくれよ!今回のハンティングはすごかったんだぜ!」
「なぁに?どんな話か楽しみね」
「ああ!今回はほんっとに大変でさぁ」
キッチンのダイニングチェアに腰掛け、彼が意気揚々と旅の話をしてくれる。
私はそれをにこやかに聞いて相槌を打つ。
彼の話は私が経験した事のないような話ばかりで、聞いてるだけでも本当に楽しかった。
それに彼のその話す時の顔といったら、まるで子供がその日の大発見を母親に報告するような、少年のような笑顔なのだ。
私はその日だまりのような笑顔がたまらなく好きだった。
だけど…だけどね?
ひとつだけ。
あなたには言えない不満があるのよ。