戦場のメリークリスマス

3



* * *



 一方その頃。



 ティナの部屋でお茶会が繰り広げられていた。
 セリスとリルムがそれぞれお菓子を持ち寄り、紅茶を飲み、クッキーをつまんで女同士のおしゃべりに花を咲かせていた。



「セリス…、ロックがキライなの?」



 ティナの問いに、セリスはクッキーを口いっぱい頬張りながら首を傾げる。



「え?好きよ?どうして?」
「だって…欲しいものが英雄の盾なんて…」



 先程のロックとのやり取りをセリスから聞いた上でのティナの言葉に、



「だって、ロックが欲しいものを言えって言うんだもの。今欲しいのは英雄の盾なの。どうしてもアルテマを覚えたいのよ私」



 クッキーを食べる手を休める事なくセリスは答えた。



「でもクリスマスプレゼントにそれはどうかと…」
「え?何?ティナ何か言った?」
「いえ、何も…」



 聞こえなかったと言った意味合いの言葉が何とも凄みのあるようなものに聞こえ、これ以上何も言うまいとティナは口を噤む。



「だけど、確かに欲しいとは言ったけどまさかロックだってそんなのプレゼントしないわよー。しかもクリスマスプレゼントよ?」



 そう言って笑うセリスに「さっきドロボウが血塗られた盾装備して出掛けて行ったよ」と言おうとしたリルムだったが、あえて言わないでおく。



「ドロボウ…さすがに不憫だね…」



 リルムが若干の哀れみを込めて呟いた。



* * *




 夜を徹して戦った甲斐もあり、血塗られた盾はその呪いが解かれ、見事英雄の盾へと変化を遂げ、ロックの手に握られていた。




 12月24日、早朝。

 遂に…255回の戦闘を完遂したのだ。




 放心状態の彼に、頑張りを讃えるかのように鳥が囀る。
 山並みの間から朝日が差し込み、柔らかく彼を照らした。
 その眩しさで我に返ったロックは、



「…こうしちゃいられない!」



 感慨に浸る事もせず素早い足取りでその場を去り、飛空艇へ戻っていった。



 自室に戻るなり、ロックは寝る間も惜しんでようやく手にしたそれを丁寧に磨き、いそいそとラッピングしてリボンまで掛け、プレゼントする為の準備をした。
 手先の器用なロックはラッピングまで完璧にこなした。

 真っ赤なラッピングに金と翠と白のチェックのリボン。
 結び目にはベルの飾りまで付けて、見た目にもクリスマスらしい。



「よし、完ペキ!これで中身も可愛いもんならよかったんだけどな…」



 残念ながら中身はべらぼうに重い装備品な上、まるで色気のカケラも感じられない盾である。
 クリスマスにあげるようなものだろうかと自分に問いたくなったが、セリスが望んだものだ。
 彼女が喜ぶなら色気がなかろうが何だろうがこの際構うまい。



「さて…後は夜を待つばかりだな」





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