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ようこそ三日月堂へ!

おまわりさん、お仕事熱心ご苦労様です。

第7話

「待って下さい土方さん!自転車も確かにお酒を呑んだら飲酒です!それはもう認めます!ごめんなさい!」

「ごめんなさいで済んだらおまわりさんいらねぇんだよ、ほら調書とるからこっちこい。」

「待って待って待って!!!ライトも!ライトも確かに夜は点灯しなきゃいけないんですけどね!でもね!ライトつけたら重くなるんですよ!!!」

「そういう言い訳もおまわりさんは聞き飽きてんだよ。つべこべ言わずこっちこい。」

「待って待って待って待って待って待って!!」

「うるせェェェ!!おい、公務執行妨害も追加だ。」

「そんな理不尽なおまわりさん怖すぎるわァァァ!!あっ!!で、でもこれだけは言い訳でもなんでもなくて!!」

「んだよ。」



「わたし成人してるので未成年飲酒には当てはまりません!!!!!」



この私の悲痛な叫びに、一瞬周りが静かになったかと思ったら、今度は土方さんが大きな声で「はぁァァァ?!」と叫んだ。



「おっ、ま!どう見ても未成年だろ!!」

「ありがとうございます!!」

「なんの感謝だよ!!!」

「よく間違われるんですけど、これでも成人してるんです!!」



私は慌てて保険証を取り出し生年月日のところに指差した。違う世界から来たとはいえ、戸籍がこの世界に存在しているので、こうして保険証を持つことができてよかった。でもまさかそれが身分証明書として役に立ち、心の底から感謝する日がくるとは思わなかった。



「…はぁ〜。」

「(溜息を吐きたいのはこっちです!!)」

「なんでィ土方さん、まさか冤罪で女性を捕まえようとしたんですかィ?」

「そ、総悟!」

「こりゃァ大問題だ。お姉さん、こいつ訴えますかィ?」

「え゛っ?!」



突然私の前に現れた隊服の男性は、中性的な綺麗な顔立ちをしているのに、挨拶もなくただひたすら私に向かって土方さんのことを指差しながら、訴えるのはいまでさァ、遠慮はいらねェ、必要であればこの場で斬りつけてもいいぜと、こっちの身が震えることを真顔で言ってきた。



「おい総悟、お前ちょっと黙れ。」

「それともなんですかィ、土方さん。職権乱用でこの場をたまたま通ったこの女性をとっ捕まえて、日頃溜まりに溜まりまくった性欲の吐き口にしよ」

「黙れえええええ!!!」



何だかよくわからないがこの男性と土方さんは仲が良いとは言えない間柄のようで、私のことはそっちのけで言い合いをし始めた。お店の前で隊服を着た2人が騒いでいて果たして良いものがどうか戸惑っていると、そのお店から綺麗な女性がひとりでてきた。



「あらやだこんなところでお二人方はなにをしてらっしゃるのかしら?」

「「あ。」」

「早くこのゴリラ駆除してくれません?」



その綺麗な女性が手にしているものをみて、私は慌てて両手を口にあてた。そうしないと危うく叫び声をあげるところだった。いやでも、見れば見るほどこれは酷い。思いっきり顔に殴られたアザがある男性が女性に首根っこ掴まれてぐったりしているって、一体なにがあってそうなるというのか。



「ひひひひ土方さん!!わたしのことよりもあっち!!あっちの方がヤバイ!!!!」

「あれは…あれはいいんだよ、あれは通常通りだ。」

「なにが?!なにが通常?!」



私がひとり慌てる隣で土方さんはタバコを吸い始め、部下であろう人に連れていけと一言指示をふり、意識を失っている男性はパトカーに乗せられ行ってしまった。ここはかぶき町の歓楽街。こういうことはこの町では日常茶飯事で、土方さんの言うように通常なのかもしれない。この町の女性は私が思う以上に強いのかもしれない。



「(女性もおまわりさんも怖い町なんだここはきっと!!わたしが甘かった!!!ごめんなさい!!)」



もう外でお酒を呑むのはやめようかと考えていると隣から小さな声ですまねぇな、と声がした。



「え?」

「勝手に未成年だと思っていたことだ。すまなかった。」

「だ、大丈夫です!こればかりは慣れているので!」

「だが、飲酒運転とライト未点灯はお前も認めてんだ。今後は気をつけろよ。」

「は、はいっ!」

「あと女がこんな時間にひとりで歩いてんじゃねぇよ。呑みに行くならせめて家の近くにするとか、誰かに送ってもらうとか、タクシーとか使え。何かあったらどうすんだよ。」

「は、はい…。」



ごもっともな説教に私が項垂れていると、土方さんは溜息をつきながら近くにいる部下のひとりの方に歩いて行ってしまった。呆れられてしまったのかと不安になり、足元を見つめる。調書とるって言ってたけど、あれは本当だろうか。もうとっくにお酒が抜けている頭には、後悔の文字だけが浮かんでいた。



「おい、気分でも悪いのか?」



後悔の深さが頭をさげる角度にまで反映されて、もうほとんど腰を曲げて下を向いていた私に、土方さんは心配して顔を覗き込んできた。慌てて私が大丈夫です!といって顔を上げると、飲めといっていつの間に買ったのか、ペットボトルの水をわざわざ蓋を開けて渡してくれた。



「す、すいません…。」

「家まで送っていく。自転車は押して帰るぞ。」

「へ?」

「なんだ、自転車おいてパトカーに乗りてぇのか?」

「滅相もございませんっ!!!」

「ならとっとと行くぞ。」



そう言って歩き始めてしまった土方さんを止める術などなく、私は慌てて自転車を押して土方さんの後を追いかけた。


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