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ようこそ三日月堂へ!

おじさん、おばさん。私、初めてお友達ができました。

第6話

「万年金欠プー太郎さんですけどね。」

「金欠は認めるが万年じゃねぇし、ちゃんと仕事してんだから、ぷーさんじゃねぇよ。」

「ぷーさんじゃなくてプー太郎ね、誰があんな可愛いクマさんと天パを間違えるんですか。」

「クマの毛むくじゃらと俺の天パも似たようなもんで可愛いだろうが。」

「お登勢さん、お酒おかわりお願いします!」

「はい出ました〜、名前ちゃんお得意の無視ですぅ〜」

「おい、銀時。あんた自ら金欠を認めておいて、酒飲みにくるってどういうことだい?あたしゃ、まだ今月分の家賃もらってないんだけどねェ?」

「おい、名前。イカの塩辛も食おうぜ。」

「お前も無視がお得意じゃねぇかァァァ!!」



あの団子屋さんの一件以来、坂田銀時さんこと銀さんとはよくこうして一緒に呑みに行くことが増えた。とはいっても、居酒屋に入るのは決まって銀さんがパチンコで勝った時で、それ以外はここ、スナックお登勢で呑むのが定番だった。



「銀さん、家賃も払えずツケも溜まる一方って、それ大丈夫なんですか。大人として。」

「俺ァ大人になったつもりはねェんだよ、階段なんか登ってねェんだよ、階段なんざ降りる一方なんだよ。」

「それ人間の進化を退化してるってこと?人間からもう猿になりつつあるってこと?猿だってもっと賢いよ?猿に謝ろう?」

「優しい顔して背中撫でてんじゃねェェ!んだよ、その哀れみはァァァ!!」



ここスナックお登勢の二階に銀さんは住居兼、職場である万事屋を構えていて、まだ10代の子2人を雇っているという。不安定な仕事なくせにふらふらしてる銀さんに正直呆れつつも、こうして私を呑みに連れ、たまに吐く私の弱音を嫌がらず聞いてくれることには、感謝せずにはいられない。



「(何だかんだ面倒見のいいお兄ちゃんって感じだなぁ。)」



銀さんやスナックお登勢で知り合った人達と話していると、前の世界のことを考えることが増えた。今まで三日月堂のことばかり考えてきた私が、こうして外に出て、他の事も考えれるようになったのは、私の中に少しでも心のゆとりが出てきたからだろうか。それは私にとって果たしていいことなんだろうか。



「なんだァ?そんな顔で酒なんか呑んでも美味くねぇぞ、ほら。」

「あ、そろそろやめておきます。結構回ってきたし。」

「おいおい銀さんが注いでやる酒が呑めねぇって」

「うん呑めないごめんね!お登勢さん勘定お願いします!」

「即答ですかコノヤロー。」



酒は呑んでも呑まれるなですから、と言いながら自分の分だけ勘定を済ませる。最初は銀さんが奢ってくれていたが、毎回奢られる訳にもいかず、たまには私がといって奢ろうとすると、女に奢られるのは性分じゃねぇとかなんとか格好つけて断られてしまうので、それなら自分の分は自分で払いましょ、という約束になった。



「お前自転車だろ?気をつけて帰れよー。」

「うん、銀さんもほどほどにね。お登勢さん、ご馳走様でした!美味しかったです!」

「またいつでもおいでよ。」



そういって優しく見送ってくれたお登勢さんに軽く頭を下げて私は店を出た。銀さんがお兄ちゃんなら、お登勢さんは、お母さんみたいだ。深月さん夫婦たちとはまた違った温かさをすごく感じる。



「なーんですぐ家族に当てはめるんだろ、わたし。」



独り言を言いながら自転車に跨り、ペダルを漕ぐ。ふと空を見上げると、今日は綺麗な満月だった。前の世界では、わたしはどういうことになっているんだろう。ここに来る前、自分が何をしていたか分からないせいで、こればかりは想像するしかない。もしかしたらわたしは死んだのかもしれない。それとも、別の私が前の世界で生きているんだろうか?…なんだか、考え出したら頭がパニっくになってきた。お酒の酔いも、夜風に当たって冷めてくどころか、回ってきた気もしなくもない。



「あれ?あの姿…」



かぶき町の歓楽街の中を通っていくと、とある店の前で、よく見知った人の姿が見えた。声を掛けようか一瞬迷ったが、隊服ということは仕事中なんだろうと思い、静かに通り過ぎることにした。



「おい。」



はずだったのに。



「っ…!!!」



声を掛けられるのと同時に自転車の後ろを思いっきり掴まれ、危うくバランスを崩して転倒しかけた。瞬発力が多少なりとあって本当に良かった!私はまだ若かった!と思いながら、おそるおそる後ろを振り向くと、



「(こ、ここここわいいいいい!!!)」

「お前、こんな時間に何してんだ。」



鬼の形相の真選組副長様がいらっしゃいました。



「ひひひ土方さんお務めご苦労様さまです!!!!」

「ああ、で?何してんだって、聞いてんだよ。」

「な、なにって、自転車漕いでました!!」

「んなの見りゃ分んだよ!!そうじゃなくてこんな時間に女1人でどこにっ!…おい、お前、酒呑んでんのか?」

「の、呑んできました!!!(え?なんでなんでものすごく怖い!!)」



さっきから煩いこの心臓は、自転車から転倒しそうになった恐怖からなのか、お店では見たことないこの土方さんの鬼の形相のせいなのか、お酒が回りすぎてるせいなのか、もう何なのか分からず、私はただただ心臓に手を当てながら、土方さんから浴びせられる質問に答えた。



「未成年飲酒に、飲酒運転。あと、自転車のライトが未点灯。はい、逮捕ー。」

「えええええ?!?!?!土方さんんん?!?!?」



この世界の逮捕基準ってそんなに低いんですか?!


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