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ようこそ三日月堂へ!

知らないあなたの一面

第51話

帰り道、銀さんと他愛もない話をしながら河川敷を歩いていると、遠くから警笛が聞こえてきた。私が桂さんじゃないといいですねと言うと、銀さんは心配いらねーだろといって、興味なさげにあくびを一つした。さっきまでの桂さんへの態度といい、本当に銀さんと桂さんは友人なんだろうか。



「…気になるか?」

「え、」

「俺と桂、どんな仲なんだって。」



ちょうどそんなことを考えていたのを、見透かしたような銀さんの笑い方に、私はなんとなく素直に頷けず、別に。なんて可愛げもなく答えてしまった。



「…追われてる身だって、知ってはいますけど…。でも、悪い人ではないなと思いました。今日だって神楽ちゃんとわたしにデザート奢ってくれましたし。…それに、銀さんと知り合いですしね。」

「なになに、名前ちゃんの中で銀さんの株急上昇中?」

「自分でそんなこと言っちゃうあたりが残念です。」

「辛辣だな、おい。まー、一応?ヅラは、ああ見えて爆弾魔のテロリストだからね?」

「ば、爆弾魔のテロリスト…!?」

「無意味に人を傷つけたりはしねーけど。」



無意味に人を傷つけない、という言葉がやけに重たく聞こえ、その言葉の中に銀さんと桂さんの仲が垣間見えたような気がして、私は言葉が出ず、ただこくんと頷いた。



「いつから名前はヅラと知り合いだったんだよ。」

「あ、少し前です。たまたま道端でぶつかって…その時のお詫びと言って後日三日月堂にいらしゃった時にいろいろとお話を。」

「あー、あいつ変なところで律儀だろ。」

「ふふっ、そうなんですよ、びっくりしました。」



それから銀さんは桂さんの話を色々してくれた。どれも桂さんらしいといえばらしい、可笑しな話ばかりで、私はお腹を抱えて笑い、それに銀さんは少し満足そうにしていた。





「そういやよ、なんで今日は着物なの?」

「あー、これには色々あって…」



桂さんの話が落ち着き、そろそろ三日月堂に着くという手前で、突然銀さんがそう問いかけてきた。私はそれにどう答えていいか分からず曖昧に濁すと、銀さんは余計に気になったようで、答えを急かしてきた。



「…えっと、昨日、真選組の近藤さんと土方さんと総悟の三人と、ご飯食べに行ったんです。」



そう私が口を開くと、銀さんは大袈裟に驚いた様子を見せた。



「ハァァァ?!?!ちょ、名前、税金泥棒の金でなに食ったァ?!」

「…え、や、焼肉。」

「焼肉ゥゥゥ!?!?おいおい!銀さんその久しく聞いてない単語の響きに、心底ビックリだよ!!」

「その帰り際に酔った総悟に吐かれて、そのまま屯所のお風呂を借り、夜も遅いからと一晩泊めてもらったんです!この着物はその時、お借りしたものなんです!!」



銀さんの反応がいちいち面倒なので、畳み掛けるように事情を説明すると、銀さんは立ち止まってまた大きな声でハァァァ?!と叫んだ。



「う、うるさいです!!」

「うるさいじゃねェェェ!!焼肉食った上に、真選組に泊まりだァ??あいつらは警察とはいえ男だぞ、男!!それなのに、風呂入って泊まったなんて、おいおい、名前ちゃんの常識はどーなってんのォォォ??」

「ど、どうって。ご厚意に甘えただけで…」

「お前ね、ちょっとは警戒心を持て、このバカ娘!!」

「ばっ?!バカ娘とはなんですかァァァ!!」



まさかのバカ娘発言に思わず私も声を荒げてしまった。慌てて周りを気にしつつ、銀さんに向かい、土方さんたちはそんな人じゃありません!と私が言い返すと、銀さんは嫌味のように盛大に溜息をついた。



「あのな、何かあってからじゃ遅いからね?いい歳した大人なら分かんだろ?な?」

「いい歳した大人ならのところ、そのままそっくり返します!!」

「ったく…。まぁ、今度また万が一誘われでもしたら、……俺を呼べよ。」



思わず私がなんでですか!と強く反発すると、銀さんは真面目な顔をして視線を合わしてきた。



「心配だからだろーが。」



その一言になぜか私は、さっきまでのようには言い返せず、言葉に詰まると、銀さんはいつもの気の抜けた表情に戻り、それにうまいもん独り占めすんのはよくねーからな、といって歩き出した。



「(なんだ、タダ飯食べたいだけ…。…ん?なんだ?…なんだってなんだ??)」



そんな言い合いをしているうちに、いつの間にか家の前に着いた。なぜか銀さんの顔をまともに見れず、逃げるように送ってくれたことのお礼を言い、玄関の扉に手をかけると、銀さんがおいといって呼び止めてきた。私はなんですか?と言って後ろを振り向くと、またさっきとは違う、優しい表情で銀さんはそれ、といって口を開いた。



「似合ってるぜ。」

「へ?」

「着物、たまにはいいんじゃねーの。じゃーな。」



そう言いながら背を向けて手を振り帰っていく銀さん。その言葉の驚きのあまり、私はお礼の一つも言えず、その場に立ち竦んでしまった。



「心配だからだろーが。」「似合ってるぜ。」



銀さんの言葉を頭の中で反芻する。なぜか、急に顔が熱くなったような、そんな気がするのは、気のせい?



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