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ようこそ三日月堂へ!

素直が一番

第50話

「帰れ。」

「そう冷たいことをいうな銀時、俺らの仲ではないか!」

「神楽ー、ちゃんと手洗えよー。名前、今日は悪かったな、とりあえず上がっていけ。」

「え、あ、はい…」

「銀時、俺は」

「お前は帰れ。」



そういってピシャッと閉められた玄関の向こう側で、桂さんがまだ何か叫んでいるが、銀さんは気にする様子もなく、私の背中を押して、ほらほらといって中へと案内してくれた。



「つーか、なんでヅラと名前が一緒にいんだよ、銀さんそんなこと聞いてねぇけど。」

「いや、わたしも桂さんと銀さんが知り合いだったって、先ほど知りました。」

「うむ、俺と銀時の付き合いは長いぞ。そうだな、どこから話そうか銀時!ハハハッ!」

「え、」

「…てめぇ、何勝手に上がってやがんだァァァっ!!!」



背後から、物音もさせず部屋に入ってきた桂さんに驚いていると、銀さんが思いっきり桂さんの背中を蹴った。そして容赦なく、床に倒れた桂さんを叩きのめす。え、二人は本当に友人?と疑いたくなるその光景に私が戸惑っていると、先に部屋に入っていた神楽ちゃんが戻ってきて、気にすることないネといって、手を引いてくれた。



「名前も手洗いうがいするアルよ〜」

「う、うん…。」





「名前さん、今日はありがとございました。」

「こちこそ、神楽ちゃんと遊べて楽しかったです!」



案内された居間のソファーに腰掛け、私は新八くんに差し出されたお茶を受け取った。すると部屋の端っこにいた定春がのそのそと近づいてきたので、こんにちはと挨拶をして頭をそっと撫でた。あぁ、やっぱりこのもふもふすごい…!



「神楽ァー、お前名前に迷惑掛けてねーだろうなぁ?」

「掛けてネーヨ。お前、何様アルか。」

「おいィィィ!!!反抗期か!反抗期かコノヤロー!!!」



神楽ちゃんはまだ銀さんに言われた一言に腹を立ててるのか、さきほどから態度が冷たい。銀さんもさっさと一言謝ればいいものを、そっちがそうならこっちも!の態度ばかり繰り返す。そんな二人に私と新八くんは顔を見合わせ、困ったように眉をひそめた。



「神楽ちゃん、ほら、ちょっと立ってごらん?」

「…なにアルか?」



私がそう言うと、神楽ちゃんは言われた通りソファーから立った。そして私も同じく隣に立ち、銀さんと新八くん、それから桂さんに向き合った。



「私たちのこの着物、すごく可愛くないですか?」



私はそう言って自分の着物を見せるような素振りをした。



「え、あ、はい!よく似合ってますよ!」

「うむ、華やかだな。」



そういって新八くんと桂さんは感想を言ってくれたが、銀さんはチラッとこちらを見るだけで、なにも言わない。



「髪型も、私は少し切っただけですけど、この神楽ちゃんの髪型!すっごく似合ってると思いませんか?」

「うん、たまにはそういうのもいいと思うよ!」

「俺は、女子の髪型はよく分からんが、リーダーによく似合っていると思うぞ。」



二人の率直な感想に、神楽ちゃんはやっと嬉しそうにはにかんだ。うん、やっぱり褒められたら嬉しいよね。



「こ、これ名前が選んでくれたアル!髪も名前が頼んでくれたネ!」

「そうなんだ、よかったね神楽ちゃん。」

「うんっ!!」



新八くんと桂さんのおかげで、どうやら機嫌を取り戻した様子の神楽ちゃんは、近くにいた定春に飛びつき、定春にも似合うアルか?と着物を見せ始めた。それに応えるようにワンッ!と吠える定春は、銀さんよりも正直でいい子である。



「犬ができて、なんで銀さんはできないんですかね。」

「うるせェェェ!!俺を犬以下みてぇないい方すんじゃねェェェ!!」

「いや、」



みたいな言い方ではなくて、そのまんまの意味で言ったつもりなんだけど…といったら、また銀さんの怒号が飛んできそうなので、私はそっと口を噤んだ。



「名前!今日はありがとうネ!」

「こちらこそ楽しかったよ!またデートしようね!」

「うん!!それじゃ定春の散歩に行ってくるアル!!」



ついでに姐御のとこにも見せてくるネ!といって、神楽ちゃんは嬉しそうに万事屋を飛び出していった。



「…銀さん、早く仲直りして下さいね?」

「べっつに〜?喧嘩なんかしてねーし。」

「はいはい。」

「そうだぞ、銀時。こういう時は男が折れてやるもんだ。お前は本当に女心がわかっておらぬな。」

「おめぇは女男関係なく人の心が分からねぇ奴だけどな。つーか、帰れよ!!なに呑気に茶飲んでやがんだっ!!」



二人が言い合いを始めたのを横目に、そっとケータイを取り出し、時間を確認したわたしは、そろそろ家に帰ろうとそっと席を立った。



「じゃあ、わたしもそろそろ帰りますね。」

「ならば、名前殿は俺が送っていこう。」

「バカヤロー!!万が一お前が見つかったら、隣にいる名前も犯罪者だと間違われるだろーが!!つーことで、てめぇはひとりで帰りやがれ。」

「確かに銀時の言う通りだな。では、俺は先に失礼するとしよう。」



そういって桂さんも席を立ちあがり、そしてそのまま失礼したといって呆気なく帰って行った。ろくに銀さんと会話もせず、お茶を飲んだだけで帰っていった桂さんに、一体、何しに来たんでしょう?とつい私が言葉を漏らせば、銀さんはいつものことだろと吐き捨てた。



「気にしなくていいですよ、桂さんはそういう人ですからね。」



新八くんのその言葉になぜかわたしは妙に納得したため、ひとつ頷いた。桂さんはよく分からない謎の人で、きっと理解し難い人だ。



「…あー、名前、今日は本当に悪かったな。神楽のために結構金使ったんじゃねーの?」



突然そういって銀さんは立ち上がり、詫びしなきゃなーといって台所へと姿を消した。



「お金のことはわたしが勝手にしたことなので気にしないでください。あ、新八くんも、今度一緒にお出かけしましょうね!」

「えっ!?」

「名前ちゃーん、それ単なるデートの誘いになってんぞー。」



そう台所から銀さんが叫び声が聞こえると、目の前の新八くんがで、デート!?!?!といって、急に顔を赤らめた。



「あ、いや、そういう意味じゃなくて、」

「ほらほら、どうすんの新八くんが勘違いしちゃったよー?幼気な少年の心を弄んじゃいけないよ名前チャン?」



そういってニヤニヤしながら台所から出てきた銀さんに冷ややかな視線を送る。なんだかその言い方は無性に腹が立つ。私は新八くんに向き直り、銀さん抜きで!をあえて強調し、神楽ちゃんとよかったらお妙さんも一緒に、今度四人で出かけようね?と言い直した。



「あ、はい!」

「…おい、俺が入ってねーよ。」

「わざとですよ。」

「んなカリカリすんな、ほら。これ、詫びに飲ませてやるよ。」



そういって差し出されたコップを受け取り、中を覗き込むと、ピンク色の液体に甘ったるい匂いがした。



「なに、これ?」

「いちご牛乳。」

「…お詫びこれ?」

「俺の大好物。」



…知らないよそんなのと思いながらも、差し出されたものは無下にできず、私は一応、ありがとうございますといって、コップに口つけた。



「それ飲んだら送ってくわ。」



やっぱりいちご牛乳はとてつもなく甘く、好みじゃないなと思いながら、わたしはそれを飲み干した。



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