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ようこそ三日月堂へ!

三人集まれば文殊の知恵

第49話

まずい、非常にまずい!まさかの桂さんとの遭遇に私の額からは冷や汗が出てきた。神楽ちゃんくらいの歳の子だって、この町に住んでる限り、指名手配犯くらいは知っているだろう。どうしよう、私と桂さんが顔見知りだって知られては、お互いにとってマズイ…!



「…ヅラ?なにしてアルか?」

「ヅラじゃない桂だ!…っとリーダーではないか。」

「え、(顔見知り?!)」



どうこの状況を突破しようかと考えていた私の耳に飛び込んできたのは、まさかのお互いが顔見知りのようなやりとり。え、ヅラ?リーダー?なにそれ、もしかして暗号ですか?



「リーダーとこんなところで会うとは驚いた。銀時もいるのか?」

「銀ちゃんはいないアル。」



そういってふつうに話す二人をまじまじと見つめていると、桂さんが急にこちらを向いた。



「残念だが、今日はエリザベスとは別行動なのだ。」

「あ、え?そ、そうなんですか。(なんの話?)」

「名前、いつの間にヅラと知り合ったアルか?」

「いや…私より神楽ちゃんが、桂さんとお知り合いだったほうにびっくりした…。」



どういう間柄なのか全く検討もつかないが、詮索するのはやめておいた。別に桂さんは悪い人ではない。世間一般的には確かに指名手配犯だが、話してみて感じた良い人というのは、きっと神楽ちゃんと知り合いの時点で間違いない…と思う。



「ヅラ、早くそこどくアル。私、今から名前とここのたるとっていうやつ食べるネ!邪魔すんじゃネーヨ。」

「ヅラじゃない桂だ!!…うむ、そうだったのか。ならば俺も一緒しよう!」



…え?なんで?なんで一緒に?というより、今店から出てきたのにまた入るの?と私が不思議に思っていると、神楽ちゃんも同じことを思ったらしく、今出てきたとこだろ帰れヨ、と顔に似合わず辛辣な言葉を吐いた。



「いやなに、朝からエリザベスとはぐれてしまってな。探している途中で、前にここで一緒に甘味を食べたことを思い出し、中を覗いたのだが、どうやら見当違いだったようだ。」

「エリーまた行方不明アルか?」

「まぁまたふらっと帰ってくるだろう。だからそれまで俺もリーダーたちと一緒に甘味を食べることにしようと思う。」



こうしてなぜか桂さんも一緒になり、三人でお店の中に入った。指名手配犯だというのに、変装もせずにお店なんかに入って大丈夫なの?という私の心配もよそに、意外に店員さんにも周りのお客さんにも気付かれず、すんなりと私たちはテーブル席へと案内された。



「えっと、なにを食べますか?」

「俺は確か前は、ここのぷりんを食べたな。」

「ぷりん!それも美味しそうアル!でも、名前がいってたタルトも食べたいネ…。」

「それなら神楽ちゃん、両方頼んで一緒に半分こする?」

「うん!!」

「ならば俺もそのたるとというにしよう。すいませーん!!」

「え、いやいやいや!!!ちょっと!?」



なにこの人?!バカなの?!周りに気付かれていないとはいえ、自ら大声を出して注目されて、気付かれたらどうするんだ!!!と、私が慌てて店員さんを呼びつける桂さんを制止すると、桂さんは、気遣いは無用だといって、そのままテーブルにきた店員さんに私たちの分の注文も言ってくれた。



「俺の指名手配紙を見たことあるか?」

「い、いえ…。」

「手描きで全くと言っていいほど似てない。おかげで、こうして普通に町を歩ける。まぁ、真選組の奴らには顔を知られているからな、必要あれば変装もするが、日常生活にそこまで支障はない。」

「そ、そうだったんですか…。」



そんなことを話しているうちに、注文したものがテーブルに運ばれてきた。それを目にした途端、神楽ちゃんが歓喜をあげた。その姿がまた可愛らしくて、私はつい笑ってしまった。



「キャッホォォォイイ!!うまそうアル!!」

「リーダー、ちゃんと手を合わせていただきますしないとダメだぞ。」

「いっただきまーーすっ!!」

「(お母さん?!)」



そうしてしばらく三人で美味しい甘味を食べながら、なんてことはない話に盛り上がった。





「神楽ちゃん、万事屋は門限とかないの?」



全部食べ終え、話も一旦落ち着いた頃、私がそれとなく店内の時計に目をやると、もう夕方を過ぎていた。



「ないけど、でもそろそろ定春の散歩の時間アル!」

「そっか、じゃあ送って行くね。桂さんは?」

「そうだな、俺も銀時に会っていくか。」



三人仲良く万事屋へ行こう!となぜかノリノリの桂さんに苦笑しつつ、私がテーブルの上に置かれている伝票を取ろうとすると、桂さんがここは俺がと言って、先に伝票を取られてしまった。



「えっ、いや、大丈夫ですよ!わたしが払います!」

「最年長なのだ、任せておけ。それに、これでも金は持っている。」

「ヅラの金ならもっと食えばよかったネ。」

「ヅラじゃない桂だ!」

「(それ、毎回言うの…?)」



素直に奢られるのは少し気が引けたが、神楽ちゃんが、先に外に出てるアル!といって手を引いてきたため、私はすいませんといって頭を下げ、そのまま先に外に出た。



「桂さん、良い人だね。」

「そーアルか?銀ちゃんはいつも鬱陶しそうにしてるネ。」

「あ、銀さんの友人なの?」

「うん、長い付き合いだって言ってたヨ。」



なるほど、銀さんの知り合いだから神楽ちゃんとも知り合いだったのか。長い付き合いってことは、幼馴染とかかな?なんて思っていると、お店から桂さんが出てきた。私はもう一度お礼を言い、それから三人並んで、万事屋へと向かうことにした。



夕暮れ黄昏時、私たちは周りからどんな風に見えてるんだろう?と思いながら、その並んだ可笑しな影を見て、私はくすっと笑った。



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