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ようこそ三日月堂へ!

おしゃれと甘いもの

第48話

「どこか行きたいところがあるの?」

「…ふつうの、女の子の遊びがしたいアル。」

「(ふつうのおんなのこ?)」



神楽ちゃんの可愛らしいデートのお誘いを受け、私はひとまず神楽ちゃんと一緒に家に入り、お茶を出しながらまずはこれからの予定を決めることにした。



「そっか、じゃあとりあえず…町に行こうか?」



私がそう言うと神楽ちゃんは嬉しそうに頷いた。その時、ポケットに入れていたケータイが震え、取り出してディスプレイを見ると、着信は新八くんからだった。



「ごめんね、ちょっと待っててね。」



そういって私は居間から出て、少し離れた階段のところで通話ボタンを押した。



「もしもし、新八くん?」

「あ、すいません、名前さん!そっちに神楽ちゃん行ってませんか?」

「うん、来てますよ。」

「やっぱり…すいません、実は…」



昨日依頼を受け行った場所がここからひとつ離れた町で、そこはここかぶき町と違って、若者が集ういわば都会だったんです。そこで、同じ歳くらいの女の子を見た神楽ちゃんが随分と羨ましそうにしてて…。あんな風に遊んでみたいってポロっと口にしたんですが、銀さんが、お前には似合わないだのなんだのいって怒らせてしまって…。それで依頼が終わってかぶき町に戻ってくるなり、神楽ちゃん、走ってどこかに行ってしまったんです。最初は姉上のところかと思ったんですが、来てないっていうので、もしかしたらって…



「(なるほど…)同じ年の女の子のお友達はあまり?」

「そう、ですね。子どもらしい遊びは、近所の子たちとしてますが、そういった女の子のって言われると、僕たちもその…わからないので…。」



確か神楽ちゃんは出稼ぎにきてて、親とは離れて暮らしてるって言ってたっけ?私は神楽ちゃんの気持ちを考え、そしてひとつ頷いた。



「新八くん、わたし今日一日、神楽ちゃんと遊びまわってきます!!」





「名前本当にいいアルか…?」

「ん?うん、とっても似合うよ!だからわたしがプレゼントしたいの!受け取ってくれる?」

「…嬉しいアル!!」



まず私たちがやってきたのは呉服店だった。女の子といえば服だ!と意気込んできたものの、着物のことはさっぱり分からない。それは神楽ちゃんも同じらしく、店員さんに色々教わりながら、神楽ちゃんと一緒に彼女に似合うものをあれやこれやと悩みながら選んだ。



「(あんなに立ち鏡の前でニコニコされたらもう一着くらい買ってあげたい気分になる。)」



可愛い女の子に弱い自分に苦笑していると、神楽ちゃんが、これを着たまま出掛けたいと言い出したので、わたしは店員さんにお願いし、来てきた服を袋に詰めてもらい、会計を済ませた。



「そういえば名前も今日は着物ネ!」

「う、うん…ちょっとね。…あ!神楽ちゃん、髪は?美容室とか行ってるの?」

「びようしつ?私の髪は銀ちゃんに切ってもらってるネ!」

「(銀さんすごい…!)」



まさかの返答に驚きつつも、神楽ちゃんの髪は何もおかしなことはなく、とっても綺麗に整えられている。銀さんの謎の散髪技術に感動しつつも、たまには美容室でプロに切ってもらうのもいいだろうと考え、次は美容室に向かうことにした。





「あまり髪型変えないほうがいいよね?じゃあ、毛先整えて、少し軽くしてもらおっか?」

「う、うん…。」



初めての美容室にたいへん緊張気味の神楽ちゃんを落ち着かせるために、私もついでだと思い、隣で髪を切ってもらうことにした。



「名前は短くするアルか?」

「ううん、私も整えるくらいかな。あ、すいません、この子の髪、仕上げに少しセットしてもらえますか?」



そういって私も神楽ちゃんもプロの美容師さんに髪を手入れしてもらい、そして神楽ちゃんには、仕上げに女の子らしい髪型に結い上げてもらうことにした。



しばらくして私のほうが先に出来上がり、そのまま隣で神楽ちゃんの仕上げを待つことにした。神楽ちゃんは人に髪を触られるのが緊張するのか、ずっと強張ったままだ。その姿が初初しく、私はつい吹き出してしまった。



「はい、お待たせしました。その素敵なお着物に似合う風に髪を結い上げてみましたよ。」



そうして美容師さんの手によって、普段では見られない可愛い髪型にしてもらった神楽ちゃんは、自分でその姿を鏡で見て、とっても嬉しそうに、そして恥ずかしそうに笑った。



「名前!私、いつもと違うネ!」

「うん!とっても可愛い!!!(ナイス美容師さんっ!!!)」



それはそれは可愛らしさが倍増しており、私はケータイを取り出して思わず写メを撮ってしまった。それくらい可愛い、素晴らしい!画像保存!!



「よし!じゃあ、身支度も整ったし!次は美味しいもの、食べに行こっか?」

「うんっ!!!」





次に神楽ちゃんを連れてきたのは、お店の常連さんに教えてもらった洋菓子店。ここのタルトが絶品で、一度は来てみたいと思っていたところだった。



「わたしの好みで連れて来ちゃったけど…洋菓子は好き?」

「けーき?」

「うん、そうだよ。他にもここのオススメはタルト!」

「たると…私、食べてみたいアル!」



そういって目をキラキラさせる神楽ちゃんに癒されながら、お店の入り口に手をかけようとすると、先に中からドアが開いた。



「あ、すいませ、」

「む?名前殿?」

「なっ!(どどどうしてここに?!)」



お店から出てきたのは、まさかの指名手配犯であるはずの桂さんだった。



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