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ようこそ三日月堂へ!

可愛いは正義

第47話

朝食を終えたあと、土方さんに少しいいか?と誘われ、とある一室へと案内された。先に謝っておくという謎の謝罪を土方さんから受けたあと、襖が開けらたその部屋を見て私は言葉を失った。



「(…カオス!)」

「…まぁ、男所帯はこんなもんだ。」



そこは昨日言っていた、押収した書物やその事件に関する書類などを保管している部屋らしいが、とても保管しているようには見えないその荒れ果てた部屋に、私がおそるおそる一歩踏み入れると、埃がぶわっと舞い、思わず咳き込んだ。



「こっこれは…ゴホッ、大変そうですねっ」

「こんな状態だが、正式に買取査定を申し込みたい。…受けてくれるか?」



てっきりその話はまだ先のことだとおもっていたが、どうやら先ほどお会いした長官様が、たまたま別件で屯所に来ていたので、早速この話をしたところ、すんなりと許可が出たようだ。



「分かりました!えっと…では、本来はこちらが用意した書類に依頼主の個人情報の記入などをして受付をするんですが、その紙を今持っていないので、口頭で確認させてもらいますね。」

「おう、なんだ?」

「まず、代表者の名前は近藤さんで大丈夫ですか?」

「ああ、そうだな。」

「あとは、連絡先ですが、」

「俺のケータイでいい。」

「わかりました!あとは査定後の確認になりますので、ひとまずはこれで。では早速、査定は今からでいいですか?」



私がそう言うと土方さんは眉間に皺を寄せ、今日ってお前休みだろ?と聞いてきた。休みは休みだが、別に個人営業なので休むか仕事するかは本人の自由で、それで言えば私は問題ないので、そう正直に答えると、なぜか土方さんはため息をついた。何のため息?と首を傾げると、土方さんは何やら考え込み、そしてようやく口を開いた。



「…明後日でもいいか?」

「明後日ですか?土曜日…大丈夫ですよ!お店が昼までですから、その後お伺いしてもいいですか?」

「あぁ、頼む。」

「でも、本当に今日じゃなくていいんですか?わたしなら全然平気、」

「いや、俺の手が空くのが土曜日なんだよ。今日はこれから仕事が詰まってて、…悪ぃ。」



あ、そうなんですね!と納得しかけて、私はふと不思議な点に気がついた。



「手が空くっていうのは、お手伝いして下さるということですか…?」

「まぁ、そうだな。というよりかは、書類関係は俺じゃねぇと、いるかいらないかの判断ができねぇ。」

「あ、なるほど!」



それなら土方さんの都合のいい日に全て合わせますといって話は落ち着き、私たちは埃っぽいその部屋を後にした。





「では、お邪魔しました!」



土方さんの送って行くというご厚意を遠慮し、私はひとりで歩いて帰ることにした。距離も近いし、お天道様だって明るい。帰りに買い物もしたいですしと、いろんな理由をつけて断ったのだが、これ以上あまり真選組のみなさんに迷惑を掛けたくなかったのが正直なところだった。



「(土方さんってやっぱりちょっと過保護。)」



帰り際、近藤さんと総悟にも一言声を掛けようとしたが、近藤さんはまだ長官様と話をしているようで挨拶ができなかった。総悟はおそらくまだ屯所内にはいるが、私を送るついでにサボられても困るといって、土方さんに制止されてしまった。



「(一応、帰ったらメール入れとこ。)」



そんなことを考えながら歩いていると、だんだん自分のお店が見えてきた。さて、休みとはいえ、やらなきゃいけないことはある。まずは掃除、それから村山さんからの依頼のアルバムも進めたいところだ。



「(あ、その前に先に買い物行かなきゃ…)」

「名前ーーーっ!」



そんなことを頭の中で考えていると、突然大きな声で呼ばれ、そして勢いよく誰かが突進してきた。思わず尻餅をつきそうになったところを、なんとかぐっと足に力を込め食い止めた。



「びびびびっくりしたーっ!か、神楽ちゃん?!」



突進してきたのは驚くことに神楽ちゃんだった。私はそっと彼女の肩に手をおき、自分の身体からその身を離してから、視線を合わすように彼女の顔を覗き込んだ。



「おはよう神楽ちゃん。万事屋さんの依頼は済んだの?」

「うん!さっき終えて帰ってきたネ!」

「そっか、それで突然どうしたの?もしかしてずっとお店の前で待ってたの?」



だとしたら大変!いつからいたのかは分からないが、外で待たせたことが申し訳ない。私は、お腹は空いてないか、喉は渇いてないかと、神楽ちゃんに訊ねたが、帰ってきた言葉は予想外のものだった。



「名前にお願いがあるネ。」



そういって神楽ちゃんは俯き、何か言いたげな様子を見せた。



「お願い…?神楽ちゃんのお願いなら、わたし喜んで聞くよ?」



だから、何か言ってごらん?と私がいうと、神楽ちゃんはゆっくり顔を上げて、そして恥ずかしそうにあのね、と口を開いた。



「…で、」

「で?」

「デートして欲しいアル!!」



こんな可愛いお誘いを頂いのは生まれて初めての私は、咄嗟に神楽ちゃんを抱きしめ、もちろん!と大きな声で答えてしまった。

あぁ、可愛いって素晴らしい。



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