ようこそ三日月堂へ! |
ごちそうさまでした。 第43話 最後のデザートまで美味しくいただいたあと、そろそろお開きにしましょうとなり、私がカバンから財布を取り出すと、近藤さんは慌てて、いいからいいから!と、私の手を制した。 「え?いや、自分の分はお支払いします!」 「いやいやいいのいいの!ここは俺に任せて!それにそのつもりだったんだから!女の子に支払わせるなんて、ありえないから!」 「そうだぞ、名前。ここは素直に甘えろ。」 「そうですぜ、素直に甘えるのがいい女でさァ。」 「そ、そうですか…?じゃあ…その、…お言葉に甘えて…。」 私がそういうと近藤さんはおう!と勢いよく返事をして、支払いを済ませてくれた。食事を誘って頂いただけでも嬉しいのに、奢りだなんて。私はお店を出てからも、改めてお礼を言って頭を下げた。 「そんな気にすることないさ!」 「ありがとうございます!」 「近藤さん、いま山崎から連絡があって、少し到着遅れるだとよ。」 「お?そうか、ならまだ中にいたらよかったなー!っても、そんなに時間もかからんだろう。」 しばらくここで、四人仲良く待とうか!と近藤さんに言われ、私は頷いた。そういえば、山崎さんのお仕事は監察だと聞いたが、こういう送迎も監察のお仕事の一部なのだろうか?と考えていると、総悟が隣で鼻歌を歌いだした。どうやら美味しいお酒に酔ってご機嫌のようだ。 「そうだ名前ちゃん、三日月堂書店は買取をやってたよね?」 「はい、持ってきて頂くか、こちらから伺うこともできます!」 「トシ、そろそろあの部屋、片付けた方がよくないか?」 「あー…あそこな。確かに不要な書類や書物で埋まってたな。」 そう言って何やら近藤さんと土方さんは、話し合いを始めた。不要な書類や本とは、なんだろうか。 「よし、そうしよう!名前ちゃん、ひとつ相談良いかな?」 「はい?」 「俺たちの屯所の一室に、いま大量の書類と本があるんだけど、それを査定して買い取ってもらえないかな?」 「それは構いませんが…どういった本でしょう?」 「片がついた事件事故の書類を管理している部屋でな、その中に証拠として押収した本が結構あんだよ。」 「…そ、そんなもの売って大丈夫なんですか?」 「なに、こっちが押収したもんだからね。それに片もついてるとなっちゃ問題ない。本来捨てるものだが、捨てるにも大変だからなー!もちろん、これは上にも話を通して、正式に真選組として、また三日月堂さんに依頼を申し込むつもりだけど、どうかな?」 そう近藤さんに言われた私は、正式に組織からの依頼であれば…といって、受けることにした。 「なら、近々お店に依頼を出しに行くよ。」 「はい!」 たくさんあるから、多分丸一日潰れるよと言われて、私は俄然やる気になった。頑張ります!と元気よく返事をすれば、近藤さんも土方さんも笑って、頼むと言ってくれた。 「名前。」 「ん?あれ、総悟、口元抑えてどうしたの?」 「お、おいまさか総悟!!」 「え?」 「総悟ォォォ?!ダメェェェ!!」 急に総悟が名前を呼び、私の肩に手をかけながら俯いたかと思うと、そのまま何を思ったのか、総悟は私の足元に思いっきり吐いた。 「…(吐いた?はい…た…)吐いただとぉおお?!?!?!」 「なっ!!名前ちゃん動いちゃダメ!」 「とりあえず総悟!名前から離れろ!!」 「うぇええ…」 「総悟ォォォ!?!?」 思いっきり総悟に吐かれた私がどうしていいか分からずにいると、近藤さんが完全にダウンしている総悟を男前にも肩に担ぎ上げ、丁度迎えに着いた山崎さんの車にそのまま乗せ込んだ。そして、私も土方さんに無理やり手を引かれ、助手席へと乗せられた。 「ちょ、よ、汚れます!!車が汚れます!!」 「気にすんな!あとこれ被せとけ!」 そういって土方さんは自分の羽織を脱ぎ、私の汚れた足元に羽織を落とした。 「土方さんの羽織がぁぁぁ?!?!」 「気にすんなつってんだろが!!あと落ち着け!!屯所まではすぐだ!山崎、急いで出せ!」 そういって土方さんも後部座席に乗り込むと、山崎さんは私にシートベルトしてしっかりつかまっててね?といって、車を急発進させた。 top | prev | next |