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ようこそ三日月堂へ!

デザートに恋話はつきもの?

第42話

そろそろお腹いっぱいになってきたころ、近藤さんがよかったらといってメニューを渡してきた。



「女の子はデザートは別腹だろ?」

「わぁ!!デザートもどれも美味しそうですね!」

「まだ食えんのか、お前。」

「はい!別腹ですよ!」

「なら酒も飲めんだろィ。すいませーん、お酒追加でー!」

「いやお酒はちょっと…あぁ!まだ入ってるのになんで注ぐかなぁ?!」

「早く飲みなせぇ。」



そういってお猪口に注がれた日本酒は、総悟が大好きだという銘酒で、確かに飲みやすくて美味しい。美味しいのだが、日本酒はどうも怖い。



「(また酔って意識なくさないようにしなきゃ…。)」



前に一度、銀さんと呑んだ時に失敗をしているため、あまり日本酒は呑みたくないのだが、それを許してくれない総悟のせいで、さっきから手元のお猪口から日本酒がなくなることがない。隙があらば注いでくるなんて、パワハラもいいところだ。



「そういや最近かぶき町で人気のスイーツがあるって知ってるかい?」



突然、近藤さんがそんなことを聞いてきた。私は首を傾げ、土方さんは知らないというように首を横に振ったが、総悟は知ってまさァといって場所を的確に当てた。



「そうそう!すっごい並ぶんだよー、あそこ!」



どんな味なのかなぁ?なんていう近藤さんに、私はあることに気が付いて、それを悟られないように曖昧に返事を返した。びっくりした。多分そのスーイツは今朝食べたばかりのあれで、なんなら、真選組の敵である桂さんから頂いたものだ。誰がそんなこと馬鹿正直に話せるだろうか。心拍数が異常に上がる。



「(わ、話題を変えなきゃ…!)こ、近藤さんも甘いものがお好きなんですね!」

「いや、俺じゃなくてお妙さんがね!手土産でいつか持って行きたいんだけど…」



あぁ…っ!まさかここでお妙さんの話題!これもどうせなら避けたい話だ。だって、お妙さんには雰囲気のいい美少年、柳生さんがいることを私は知ってしまったのだ。こんな風に、何かしてあげたいと願う片思いの近藤さんを見ていると、やるせなくなる。



「俺ねぇ、本当にお妙さんのこと好きなんだよー!」

「そ、そうなんですか…。」

「だからって、大将がストーカしていた挙げ句、毎回こてんぱんにやられて帰ってこられても、こっちは困るんだがな。」

「馬鹿だなぁトシ、あれはお妙さんの照れ隠しに決まってるだろ!」

「そう本気で思ってるなら、馬鹿はあんただよ。」



そういって土方さんは煙草を吸って、ため息と一緒に煙を吐いた。ああ、苦労が目に見えてわかる。総悟はというと、新しく追加で運ばれてきた日本酒を私に注ぎながら、諦め悪いところも近藤さんのいいところでさァと、持ち上げた。



「そうか!そうか!総悟にそう言われちゃ照れるなー!そうなんだよ、男はな!そんな簡単に諦めちゃダメなんだよ!」

「…まさか、近藤さんの行き過ぎた行動を助長しているのって総悟ですか?」

「…多少なりとな。」



本当に苦労人なんだなぁと土方さんを労わるように見つめると、土方さんは苦笑いを浮かべながら、私の方に手を伸ばし、私の手からお猪口を取り上げた。



「あ、」

「総悟、もうこいつに酒はやめておけ。」

「なんでィ、勝手に名前の酒を奪うんじゃねーやい。」

「そうだ!名前ちゃん!」



私を日本酒地獄から救ってくれた土方さんに、お礼を言おうとしたら、近藤さんに大きな声で呼ばれた。な、なんでしょう?と問えば、近藤さんはにんまりとしながら、名前ちゃんはどうなんだい?と言い出した。



「なにがでしょう?」

「恋だよ、恋!」

「恋?」



女の子はこういう恋バナ好きでしょ?なんていって、近藤さんは乙女のように、どうなのどうなのと迫ってきた。…どうって言われても、



「…す、好きな人ならいません。」

「おー!なら、好きなタイプは?」



おーってなんだ。なんの歓声だ。と思いながら、近藤さんの次の問いについて考える。好きなタイプ…。



「…近藤さんはどうなんですか?」

「ん?俺か?俺はお妙さんそのものだな!」

「そうですよね、聞いたわたしが馬鹿でした。」



なに分かりきったことを聞いてるんだ、私。でも、この手の話はあまりしたくないのが本音だ。かといって話を断ち切ることもできない私は、隣にいる総悟に、総悟は?と話を振った。



「俺ですかィ?」

「うん。やっぱりドエムな子?」

「順応な雌ブタは嫌いじゃねーが、つまんねぇ。」

「すごいこと言ったねいま…!(順応な雌ブタって…)」

「土方の野郎にも聞いてみろよ。」

「あ、じゃあ土方さんは?」

「……答える義務がねぇ。」

「(わーお!男前回答!)」

「これだからむっつりスケベ野郎は。」

「誰がむっつりスケベだっ!!!」



なるほど、そういう回答があったか!と思った私は、そのまま土方さんの台詞をパクって、近藤さんに、私も好きなタイプは答える義務がありません!と冗談げに答えると、3人とも可笑しそうに笑ってくれた。



「恥ずがしがらんでもいいのになぁ!女の子はみんな恋する乙女じゃないか!」

「いやー…そんなことはないと思いますけど。」

「そうかい?名前ちゃんだって、いずれはきっと素敵な恋をして綺麗になっていくさ!」

「近藤さん、それセクハラでさァ。」

「えっ?!そ、そうなの?!」



嘘?!嫌な思いさせた?!なんて近藤さんが慌てだしたので、私はそんなことないですよとフォローを入れておいた。ただ、近藤さんの言葉が、どうにも引っかかってしまい、それを否定せずにはいられなかった。



「…恋は、しないと思います。」



私が小さく笑いながらそう漏らすと、3人は不思議そうに私を見た。そして総悟が、なんででィ?と聞いてきた。



「……いまで十分幸せだからです。これ以上の幸せは…、望みません。」

「ええ?!名前ちゃんそれは…!」

「あ、いえ、わたしが万が一、誰かを好きになったとしてもきっと…その、すぐ振られちゃいますよ!」



そういって私が笑うと、近藤さんはそんなことないよ!と驚いた様子で、こちらに身を乗り出してきた。



「もっと名前ちゃんは自信を持たなきゃ!!言っとくけど、名前ちゃんは可愛いよ??ねぇ!トシ、総悟!」

「…なんだ、えらくネガティブだな。」

「なにかフラれる要素があんのかィ?どれ、言ってみやがれ。」

「絶対それ弱みにして握ってくるからやだ。」



私はそういって、それよりも!と、声をあげて、近藤さんにそろそろスイーツを頼みませんか?と提案した。すると、近藤さんはこれ以上話したくない私の気持ちを察してか、それ以上は突っ込んでこず、そうだねといって、店員を呼びつけてくれた。





素敵な恋をしてー



この世界の人間じゃない私が、この世界の人を好きになることはありえない。恋をするなんて、私にはありえないことなのだ。改めてそう自分に言い聞かせた私は、そっと苦笑を漏らした。



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