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ようこそ三日月堂へ!

喧嘩するほど仲がいい?

第25話

「名前!!!!」

 

そのあまりに切羽詰まった声に驚きながら振り向くと、鋭い目つきをした土方さんがこちらに向かって走ってくるのが見えた。



「おいっ!!大丈夫かって、……なんだこりゃ。」

「あれ、土方さんじゃねーですかィ。」

「え?!トシ?!」

「あ゛?なーんで大串くんまで名前のこと知ってんの」

「わー!待って待って!一気に喋らないで!展開急すぎてついていけてないから!」



とりあえず走ってきてくれた土方さんに先ほどぶりですと挨拶をすれば、あぁと少しバツの悪そうな顔をされた。



「まさかまだ総悟といたとはな…しかも近藤さんまで…。」

「偶然お会いしまして…。」

「…お前が、遠目に人に囲まれてるのが見えて、また危ない目に遭ってんじゃねーかと思ったんだが…、いやまぁ、危ない奴らに違いねぇか。」



そういって土方さんはポケットからタバコを取り出し、口に咥えた。心配してくれたことが嬉しくて、なぜかついにやけてしまいそうになった私は慌てて口元を隠した。



「なに?なんなのこの空気なんなの」



そういって突然私の前に立ち、視界を遮ったのは銀さんだった。



「こんなとこでおまわりさんがサボってていーんですかー?」

「サボりじゃねぇ、見廻りだ。お前らこそ公衆の面前でぎゃあぎゃあ騒ぎまくって迷惑なんだよ、しょっぴくぞ。」

「その前にお前んとこの大将がストーカーしてんのはいいんですかー?」

「ストーカー?はっ、なんのことだか。」



あれ?なんか喧嘩始まった?ということは、2人は顔見知りなんだろうかと一人首を傾げていると、銀さんがくるっとこちらに振り返った。



「お前のいってたおまわりさんってこれ?」

「おいこれってなんだ。なんでてめぇにこれ呼ばわりされなきゃなんねーんだよ。」

「えっと、お二人ともお知り合い?」

「「こんなやつ知らねー。」」

「いやハモってます。」

「「ハモってねぇ!!!」」

「わー!すごい!!」

「いや、名前…喜ばすためにやってんじゃないの、これ。こいつが真似してくんの。」

「は?真似してくんのはてめぇだろうが。」



いつか銀さんに親切なおまわりさんを、土方さんには私の友人を、紹介できたらいいなと思っていたのだが、まさかこんな仲のいいような悪いような関係だったとは。私は苦笑しながら、でもせっかくの機会だしと思って、咳払いをひとつした。



「えっと、土方さんは、その、お店の常連さんで、前によくしてもらったっていうおまわりさんも、こちらの土方さん。」

「…。」

「前に土方さんに言ったわたしの友人っていうのが、こちらの銀さんです。呑み仲間ですね!」

「…。」

「名前ちゃん、俺前に言ったよな?親切なおまわりさんは実はー?」

「おおかみさんかもしれないっていう話ですか?だからそれは心配ないと、」

「いやいやいや!それよりももっとタチの悪いニコチン中毒やろうだからねこれ?一緒にいたら名前ちゃんも悪い毒吸っちゃうから。ね、やめときなさい、こっちおいで。」

「おい聞き捨てならねぇな、つーかその手放せ、汚ねぇ天パが移んだろうが。おい、名前。俺が前にその友人はいい奴か?って聞いたら、お前なんて答えた?」

「(え、なんで二人から尋問みたいなこと受けてんのこれ!!)…え、えっと、た、たぶんと…。」

「え?!多分んん?!名前ちゃん、俺のこと何か疑ってんの?!」

「違う違う!!!ほら、おまわりさんからみた銀さんっていい人に分類されるのかどうかわからなくて!!!」

「お前!!泣くぞ銀さん!!」

「ご、ごめんなさい!!いい人です!わたしからしたら、銀さんはいい人ですよ?!」



完全に二人の喧嘩に巻き込まれて、私が困り果てていると、横から新八くんのお姉さんが、大丈夫?と助け舟を出してくれた。



「(やっと!助けが!)お、お姉さん!!」

「今から万事屋でお鍋するんですけど、よかったら名前さんもどうです?」

「え゛?!(どのタイミングでお誘い?!)」



場違いなお誘いに困惑しつつも、その誘いに乗っていいものかどうか悩んでいると、お姉さんの隣にきた神楽ちゃんが、来てヨ!と可愛らしい笑顔で手を握ってきた。…断る理由なんてないです。可愛いです。



「でも、突然お邪魔してもいいんですか?」

「突然じゃねーよ。」



そういったの銀さんだった。どういうことですか?と問えば、銀さんはお前を誘うつもりでさっき店に行ったんだと驚くことを口にした。



「え?!すいません!」

「別に構わねぇよ。偶然ここで会えたんだし?」

「でもなんで急にお鍋ですか?」

「いやー、また臨時収入が入ったんだよ。」

「臨時って、別の新しい依頼ですか?」

「いんや、あの依頼。」

「え?」



銀さんはそういうことだから今日は万事屋で鍋するぞといって、片手に持っているスーパーの袋を見せてくれた。



「ていうかお前が来てくれないと困るんだよ。」

「へ?」

「人助けだと思って頼むわ。」

「ひ、人助け?え?どういう…え、なんで銀さんそんな汗かいてるんですか?なに?なにに怯えてるの?」



よく訳がわからないが、ここで誘いを断る理由がとくにないため、そちらがいいなら是非と言って、私は今晩、万事屋のお鍋パーティーにお呼ばれすることになった。



「そうと決まったら家に帰んぞー。」

「あ、待ってください!土方さんに、ってあれ?あ!ちょ、ちょっと待っててください!真選組のみなさんに挨拶を!」

「あー?んなもんいらねぇよ。ほら、行くぞ。」

「いやいるいる!銀さん腕離して下さいっ!」



私は腕を掴んでいる銀さんの手を無理やり離して、いつのまにか喧嘩を終えて帰ろうとしていた土方さんたちのいる方へ向かった。迎えがきているらしく、ちょうどみなさんがパトカーに乗り込むところだった。



「お!名前ちゃん!」

「あ、大将さん!す、すいません!なんだかまともにお話しできなくて…」

「いやいや!今度またゆっくり話そう!あ、あと大将さんっていうのなんか新鮮で、それもまたいいんだけど、俺、近藤勲っていうから、そうだな…勲って呼」

「近藤さん、俺の愛刀が暴れたそうにしてまさァ。」

「いやいやいやいやいや!冗談だよ冗談!なんでも好きなように呼んでくれ!」

「えっと、はい!近藤、さん?」

「うん、よろしくね名前ちゃん。」

「はいっ!総悟も買い物付き合ってくれてありがとう!」

「おー。」



それからといって、助手席に乗り込もうとしていた土方さんを見やると、いつもより倍眉間に皺を寄せてタバコを吸っていた。



「お前のダチがあいつだったとはなー。」

「お二人が知り合いだったことに私も驚きました…。」

「なんかされたらすぐ言えよ。あと、変なことに巻き込まれそうになったらすぐ逃げてこい。」

「変なこと、ですか?」

「あいつらすぐ厄介ごとに首をつっこむからな。危ない目に遭いたくなかったら、俺の言うことは聞いとけ。」

「は、はいっ!」

「そんじゃーな。」



そういって土方さんはタバコの火を消して車に乗り込んだ。後部座席の窓があいて、近藤さんが手を振ってくれたので、私も振り返して見送った。



「今度こそいくぞー。」



車が発進すると同時に後ろからかかった銀さんの声に、私は応えるように振り返り、今度は万事屋のみんなのもとへ駆け寄った。



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