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ようこそ三日月堂へ!

またひとり、お友達が増えました。

第20話

陽も落ちてあたりが真っ暗になった頃、ようやく私は質問攻めから解放された。付き合わせて悪かったと言う土方さんに、私はとんでもないと手を振り、改めて真選組の方に助けてもらったことに、お礼を述べた。



「傷、たいしたことなさそうだが、一応の処置だからな。」

「はい、ありがとうございます!」

「そろそろ送っていく。」



そういって土方さんが立ち上がると、今まで隣にいてずっと黙っていた総悟が、俺がといって立ち上がった。



「俺が送っていきやす。荷物はどこで?」

「…食堂に預けてる。自転車は別のやつに届けさせる。名前、それでいいな?」

「え、あ、はい!」



私が返事をするよりも早く総悟は部屋を出て行ってしまった。私がつい首を傾げてしまうと、土方さんは苦笑しながら、あいつも反省してんだよと言った。





パトカーの後部座席に私の買い物袋を先に乗せ、そのまま乗り込もうとしたら、助手席に座れと総悟に命令された。パトカーの助手席に乗るのは少し緊張するのだが、断るのも気が引けて、私は黙って助手席に乗り込んだ。



「あの、今更ですけどお偉い方とかに挨拶しなくてよかったんでしょうか…?一応、お部屋借りて、長居してしまいましたし…。」

「そんなのは副長の土方で十分だろィ。それに大将はいま出張中でいねぇんでさァ。」



総悟の言葉にそれなら仕方がないと納得し、私はシートに深く腰掛けた。今日はすごく疲れた。家に帰ったらとりあえず軽くご飯を食べて、すぐに休もう。あれ?でも何か忘れているような…



「つーかその敬語やめろィ。」

「え、急ですね。」

「俺ァ、一応あんたより年下なんでね。ま、こっちは敬語使う気なんてねーけどな。」



…年下?え?いま年下っていった?私は運転している総悟の顔をまじまじとみて、嘘でしょ?と声を漏らした。



「んでィ、そんな大人に見えんのかい?ま、おめぇの方が確かに下に見え」

「年下にわたしはいままでおちょくられていたのかぁぁぁ…!!」



なんてことだ!と、私は叫びながら両手で自分の顔を隠してうな垂れた。年下に、年下に私はメンチきられて、鼻で笑われ、挙句の果てにはナンパされてるところを助けてもらったというのか。なんて、なんて恥なんだ。



「気にしなさんなァ。名前は俺より下でィ。」

「いや勝手に格付けしないで、下じゃないから、下にならないから。」

「つーことで今後敬語使ったら罰ゲームな。」

「大丈夫、ありがたくタメ口でいかせてもらう。」



総悟がもし年上だったら、それこそ頭が全く上がらずにいただろうが、年下なら、少しはこっちが強気でいてもよさそうな気も…する…いや、無理だ。



「(絶対君主感すごいもん。)…ねぇ、総悟って生まれたときからドエスなの?」

「俺のこのルックス見て分かるだろィ、生まれたときはそりゃあ天使でさァ。」

「じゃあどこで悪魔になったんだろうね。」

「なに言ってんだ、俺ァ、今も天使だろィ。」

「じゃあ堕天使だ。」

「うまくねー。」

「いや別に笑いを取ろうとしたわけじゃないから、やめて、その失笑ほんとやめて。」





そんなくだらないことを話していると、あっという間に三日月堂に着いた。パトカーから降りる前に、私は1つ気になっていることを総悟に質問した。



「そういえばなんでこの前店に来た時、わたしのこと睨んだり、鼻で笑ったりしたの?わたし、総悟になにか失礼なことしたっけ?」



初めて会ったのは、自転車の飲酒運転で土方さんに道端で捕まった時だ。だけど、あの時はたいした会話はしていない。それなのにどうしてあんな態度を取られたのか、不思議で仕方がなかった。すると総悟は私を一瞬見てから、バツの悪そうに口を開いた。



「…土方の女だと思ったからでィ。」

「誰が?」

「おめぇが。」

「…なんで?」

「土方の野郎が女に優しくしてりゃあ、誰だって勘違いしやすぜ。」



私を土方さんの女だと思ったからあの態度?それって、つまり、



「総悟って土方さんのこと好きなの?!」

「おめぇの店に今からバズーカーぶち込んでやろうか。」

「やめて、冗談に聞こえない。」



でも、土方さんの女が許せない理由は、つまりそういうことになるんじゃないのかと、私が怪訝そうにしていると、総悟はあの野郎が幸せになるのが気にくわないんだと小さな声で漏らした。



「俺ァあいつが嫌いなんでィ。今度、変なこと言ったらおめぇの口ホッチキスで止めるからな。」

「うん、気をつける。」



本当、なんで総悟の言葉は冗談に聞こえないんだろう。なんで年下のくせに主導権握られてるんだろう。私はとりあえず自分の身を守るために、今後、総悟にはなるべく楯突かないで置こうと決めた。



「荷物多いんだろィ、中にいれてやる。」

「え、あ、ありがとう。」



だけど、土方さんが言っていた総悟も反省しているっていうのは、どうやら嘘のフォローでもなんでもなさそうだ。こうして送ってくれたり、重たい荷物持ってくれたり、



「(…あの時、おんぶしてくれたんだもん。)」



きっと、不器用な優しさの持ち主なんだろうと思ったら、なぜだか可笑しくなってきた。そして私はこの時、これから総悟とはいい付き合いになりそうだなと何となく思った。



「じゃ、帰りまさァ。」

「うん、ありがとう。」



総悟と別れて、私は玄関口で靴を脱ぎながら、さっきからずっとなにか忘れてるような気がすると考えていた。そして居間に入った瞬間、とんでもないことを思い出してしまった。



「しまった…!銀さんに連絡してない…」



私は腕時計で時間を確認してからすぐさま電話の元へ走った。



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