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ようこそ三日月堂へ!

その依頼、三日月堂がお受けいたします。

第11話

「さてと。で、名前ちゃん。その妖書なんだけど、探してくんない?」



銀さんの一言に私は頭が追い付けず、返答に困っていた。それに、叫んだり泣いたりして、お腹の空き具合も増している。万事屋さんたちとのお話もまだ終わりそうにないし、とりあえず何か出前でもとってみんなで食べようかと考えていると、突然、玄関から粋のいい声が聞こえてきた。



「はーい!ちょっと誰かきたみたいなんで、待っててくださいね。」

「あ、俺が出るわ。」

「なんで?」



ここ私の家ですよ!という私の声を無視して、いそいそと玄関に向かう銀さん。仕方がなく後ろをついていくと、玄関先には大きなお皿をもった男性が立っていた。



「はい、注文いただきました特上寿司の詰め合わせですね。お代金は、」

「はいはいすいませんねー、ごくろうさまでーす。」



お寿司?お寿司なんか頼んだ覚えないのにと思って首をかしげていると、皿を受け取り代金を支払った銀さんがこちらを向いて、腹が空いては戦はできぬっていうだろ?といって、居間に戻っていった。どこまでも説明不足でマイペースな人だなと思いながら、私も居間に戻ると、すでに寿司取り合戦は始まっていた。



「あ、名前さん、嫌いなネタってありますか?早くとっちゃわないとこの2人に食べられてってオイイイィ!お前らもうちょっと落ち着いて綺麗に食べろやァァ!」

「ばっきゃろー!寿司は新鮮さが売りなんだよ!寿司の良さを殺さずに食ってやるのが優しさってもんだ!」

「銀ちゃーん、この上のいらないから、下の米が欲しいアル!」

「贅沢食いのまさかの逆ゥゥゥ!?神楽ちゃんそれはだめだから!ちゃんと食べ」

「待って、ついていけないです。人の家でなにしてんですか。」



なにって寿司だよ寿司。お前寿司食ったことねぇの?と腹立つことを銀さん言われ、寿司くらい食べたことあります!といいながら、机の上の寿司皿を覗くと、もうほとんどのネタが消えていた。皿の大きさからして結構入っていたはずなのに。



「ほら食え、たまごにかっぱ巻きに、あとはなんだ?とってやるよ。」

「なんでわたしにはそのおいしそうなマグロとかハマチとかくれないんですか。」

「お子ちゃまだからだろ。」

「お酒飲む仲なのに、こういう時だけ子ども扱いしないでください。」



そもそも勝手にいつお寿司なんか頼んだんですかと聞けば、私が新八君から話を聞いている間だという。お金は俺が支払ったんだから問題ねぇだろ、と言われたが、この特上盛り。どう考えたって、家賃も給料も払えない人が払えるものじゃない。そう心配すると銀さんは最後の一貫であるサーモンを食べながら、万事屋に臨時収入が入ったんだよといった。



「本当にわたしも食べていんですか?」

「おー、つってもほとんどもうねぇーけどな。」

「…お腹空いてるので、たまごでもなんでもいいです。」

「しゃーねぇからこのいくらはやるよ。」

「わーい。(サーモン食べたかったっ…!)」



割り箸を割り、手を合わせていただきますといってから銀さんにもらったいくらを口にする。おいしいお寿司に自然と口角があがる。空腹もピークに達していたため、すぐに次のネタに箸を伸ばそうとすると、こちらをみてニヤニヤしている銀さんに気が付いた。



「な、なに」

「食べたな?いま食べたな?」

「え、だって食べていいって。」

「あぁ、いいよ?でもこれで、名前ちゃんは俺らの依頼を断れなくなったからな。」

「へ?な、なんでですか。その話はとりあえずご飯食べ終わったあとにでも、」

「だってこれ、妖書を探してくれっていう依頼者からもらった前払いの金で買ったお寿司だもん。」



銀さんのその一言に私はお箸でつかんでいたネタを落としてしまった。この人、まさか、



「わ、罠にハメましたねっ!!」

「こーんないい寿司を依頼者からの金で食ったのに、その依頼を無下にする、なーんてこと、名前はしないよなぁ?」



最低最悪悪人だ!と銀さんに怒鳴れば、なんとでもいえ。でも寿司は食ったよな?と、悪人面をされてしまい、私は絶句するしかなかった。助けを求めようと神楽ちゃんと新八君に目を向けるも、2人はお寿司を食べるのに必死でこちらなんて見向きもしない。なんならもうお寿司の皿は空っぽになっていた。どんだけ日頃、おいしいものを食べれてないんだろうと思うと、切なくなってきた。



「…わかりました、わかりましたよ!万事屋さんの依頼、手助けさせてもらいます!探せばいーんでしょ、妖書!」

「んじゃあ、よろしく頼むわ。あ、名前ビールとかねぇの?今日はこのまま宅呑みしよーぜー。」

「それよりも!依頼、受けるからにはちゃんとしたこと教えてくださいよ!探せってだけ言われても、困ります!」

「ん?おお、そうだな。んじゃあまずは乾杯しながらといきますか?」

「どうしてもビールが呑みたいんですね、このダメな大人め。」



私はため息をつきながら、こうなってしまったら私もやけ酒だ!と、台所に向かい、冷蔵庫に冷やしてある缶ビールを取り出し、銀さんに手渡した。



「まじで缶ビールあんのかよ、名前ちゃん意外とおっさん」

「それ以上いったらビールぶっかけますよ。」



今晩は長くなりそうだ。



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