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ついに、

やってきたぜ!



「南のリゾートアイランドよ〜!」


蒸し暑い梅雨が明け、夏がやってきた。
俺達早乙女学園の生徒全員でやって来たのは…そう、南の島にあるリゾート地だ。

そしてここで今日から行われるのが…


「それではこれより、早乙女学園夏合宿を始める!」


そう、夏休みの合宿だ!


1学期の授業が終わり、テストも乗り越えた。いよいよ待ちに待った夏休み──本格的な休みに入るその前に、アイドルや作曲家を目指す俺達のスキルアップの為に、一週間の特別カリキュラムが組まれている。

ここらでいっちょ、気合い入れて頑張らないとな!楽しみだぜ!



現地に着いて、最初のオリエンテーション。日向先生と月宮先生の話に全校生徒が耳を傾ける。

「この合宿の主な目的は二つよ!まずは個々のスキルアップ。みっちり、特訓するからね!最終日には成果を披露する場も設けているわ」
「そしてもう一つは…卒業オーディションのペア決めだ!この合宿中に確定させる!」


日向先生の高らかな宣言に、周りの生徒達の空気もピリついたのが分かった。いよいよ、卒業オーディションに向けて本格的に動き出すって訳だな。1学期の授業を終えた今──大方、【組みたいヤツ】もそれぞれ決まっている頃合だろうしな。

…て、



「あれ?香織と直希はどこ行った?」


行きのバスまでは確かに一緒にいた二人の姿が見えない。後ろを振り返ってトキヤとレンの顔を見るが、二人とも知らないようだ。
横にいた蜂谷に聞いても、蜂谷も周りを見渡してから首を横に振った。

んー?まぁ良いか…。
香織一人なら心配だが、まぁ直希も一緒だろうし、アイツがいれば大丈夫だろ。




「HAHAHAー!レディースエーンドジェントルメーン!!」
「うおっ」
「うわ、出た…」

派手な爆発音と花火と共に、学園長が空から現れた。毎度毎度、すげぇ登場の仕方だな…。しかしながら俺達生徒も学園長のぶっ飛び具合にはだいぶ慣れてきたせいか、前よりは驚かなくなった。蜂谷にいたっては、眉間に皺を寄せて明らかに引いた表情をしている。


「ソレデハー、合宿の開幕宣言をスル…その前ニー…」
「ん?」
「オープニングセレモニー…ココで【アル生徒】にパフォーマンスをしてもらいマース!」


すると突然、学園長の背後に特設ステージが現れた。ずっと布で隠れてて気になってたけど…まさかステージになってたとは…。

けどそれよりも驚いたのは──


「香織と…直希!?」


ステージの上に見えた人影。
一台のピアノの前に座る直希と、マイクを持って立つ香織の姿がそこにはあった。


周りがザワザワと騒ぐ中、ポーンと鍵盤の音が響いた。すぐにテンポよく流れるピアノの伴奏…それに香織の歌声が軽やかに乗る。さらにリズムに合わせて振り付けも完璧にこなす香織の姿に、俺達生徒は全員釘付けになっていた。


「以前から思っていましたが…」
「……」
「うん。本当に綺麗な歌声だよね」


ステージで華麗に舞う香織は紛れもなく【アイドル】そのものだった。

完璧な仕上がりの直希の楽曲と、圧倒される香織のパフォーマンス。
それに魅了されると同時に、頭にチラつくのは卒業オーディション、そして【デビュー】の文字。きっと、その場にいる全員が思った。


『この香織に勝てなければデビューはない』と。






「ありがとうございました」


軽く息を切らして一礼をする香織に、拍手が沸き起こった。周りの奴らに負けないくらい、俺も大きく手を叩いた。拍手に安堵した表情を見せた香織は、ふにゃりと笑顔を零す。ようやくいつもの香織の姿に戻ったような気がして──何故だか俺もホッとしてしまった。


だってさ。さっきまでの香織はあまりにも輝いていて…少し遠い存在のように思えてしまうくらいだったから。



「…悔しいですね」

ぽつりと呟いたのはトキヤだった。まっすぐに香織を見つめるトキヤの表情は変わらないが──きっとレコーディングテスト1位だった立場として 、思う所があるんだろうな。


そりゃそうだ。
レコーディングテストの時とも、追加テストの時とも違う…香織の完璧なパフォーマンス。俺だって…正直、今の時点では全く歯が立たねぇと思ってしまった。


「やってくれるね、ボスも」

レンがニヤリと笑って学園長に視線を送る。
恐らく…これが学園長と先生の狙いだったんだろう。合宿に向けて生徒達の士気を高めるために──きっと俺達に香織と直希のパフォーマンスを見せたに違いねぇ。


「おう!やってやろうじゃねぇか。負けてたまるかよ…!」


素直に認める、圧倒された。だけど同時に負けたくねぇと思った。こうなりゃとことん練習して、絶対香織にだって追いついてやる。


来たる合宿の課題に全力で取り組もうと決め込んだ俺は、力強く両手で拳を握った。





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