キケンなカノジョ。

※女主攻



「ご一緒しても良い?」

休み時間に食堂で昼食を取っていると、その女子生徒はトレーを持って突然現れた。



「おーみょうじ!もちろん良いぜ」
「珍しいねレディ、今日は一人なのかい?」
「いつも一緒の友達がお休みなの」


手入れの行き届いた綺麗な長い髪を揺らし、ごく自然に自分の隣の席に座る彼女──同じクラスのみょうじなまえさんを横目でちらりと見てから、箸を動かして食事を進めた。


同じクラスと言えど、そこまで親しいわけではない。だが彼女はレンや翔と自然に会話し、見事に溶け込んでいる。人見知りせず誰とも親しく出来る性格なのだろう。



「…あ、いけない」
「どうしたんだい?」
「カフェラテを買ったつもりだったのに、間違えてブラック買っちゃったみたい。どうしよう」


みょうじさんが紙カップの中身を覗きながらポツリと呟いた。食堂の入口にある自動販売機で購入した物だろう。横からはコーヒーの香りが漂っている。


「私、ブラック飲めないのに…」
「それならイッチーにあげれば?コーヒー、好きだったよね」
「えぇ、まぁ…」
「ほんと?じゃあ貰ってくれる?」
「はぁ…ありがとうございます」
「こちらこそ助かる!ありがとう、一ノ瀬くん」


にっこりと笑うみょうじさんがブラックコーヒーが入った紙カップを差し出した。代金を払おうとしたら「間違えて購入した物だから」と遠慮されてしまい、お言葉に甘えてそれをご馳走になる事にした。

特に何も考えず、いつものように紙カップを口元へ運ぶ。


「ごちそうさま。次自習だったよね?私、先に教室戻ってるね」
「おう!また後でな〜」


手を振って軽い足取りで去っていくみょうじさんの後ろ姿を見つめる。悪いと思いつつ、彼女がいなくなりどこか安心している自分がいた。


「(嫌いという訳ではありませんが)」


明るくて人当たりが良い、そんな人物。

まるで自分と正反対かのようなみょうじさんに、どこか苦手意識を持っていた。

まぁ…特にこれから関わる気もない。私とみょうじさんは、ただのクラスメイトだ。



「危険な香りがするよね、彼女」
「ん?そうかー?普通に良い奴だろ」
「…いや、気のせいかな」


レンの言葉が少し気になるが、特に何を言うこともなく食事を終え、三人で教室へと向かった。間もなくSクラスの教室へ着く、というところで突如身体に違和感を覚える。廊下の真ん中で、思わずその場で立ち止まり、額を押さえた。


「イッチー?」
「すみません、少し頭痛がするので休んでから行きます。…先に向かって下さい」
「おいおい大丈夫かよ!?確かに、顔色悪そうだな…」
「どうせ自習だし、保健室で休んでなよ」
「…そうさせてもらいます。失礼します」


二人の言葉に甘えさせてもらい、踵を返して保健室へと向かった。


顔が熱く、息切れがする。午前中には何も異変は見られなかった。突然の体調不良に、少しばかり動揺するが仕方ない、身体を休めることが先決だ。


ふらつく足元に気を取られながら、やっとの思いで保健室に到着し、ドアを開けた。そこには養護教諭も生徒も誰一人居なかったがとにかく横になりたく、ブレザーを脱ぎ捨ててから一番手前のベッドに倒れ込んだ。


一呼吸置いて、仕切りのカーテンを閉める。さすがに授業中に休んでいるところを他の生徒に見られたら気まずい。



「(仕事を詰め込みすぎましたかね)」


制服のワイシャツ1枚で仰向けになり、首元に指を引っ掛けてネクタイを緩めた。初めは頭痛と思ったが、その症状は軽い。むしろ熱を持った身体がただだるく、動かす気になれない。…少し、寝れば治るだろう──そう思い瞼を閉じたと同時に、誰かの手によって開いたカーテンが音を立てた。



「…っ!?みょうじさん…?」
「ごめんね。一応ノックしたし声も掛けたんだけど」


カーテンの向こうから現れたのはみょうじさんだった。何故、彼女がここに?今は授業中では…いや、Sクラスは自習だった。ダメだ、熱のせいで思考まで鈍っている。


「具合どう?…んしょ」
「なっ…」

次の瞬間、みょうじさんのとんでもない行動に驚愕する。あろう事か、靴を脱ぎベットに登って、寝そべる自分の身体に跨ってきたのだ。



「じゃあ手始めに」
「な、にを…してるんですか…!」


カチャカチャと私のベルトを外しにかかるみょうじさんにぎょっとし、その手を止めたいのに身体が言う事を聞かない。

それどころかさらに熱を持ち、脈打つ下半身──身体の異変の理由に気付いた時には


もう、遅かったようだ。

まさか──




『私、ブラック飲めないのに』


「何かっ…盛りましたね…!?」


その問いにみょうじさんの唇が綺麗な弧を描いた。
嬉しそうに笑う目の前のこの女性に、自分はまんまと嵌められたのだ。



「そんな変な薬じゃないよぉ。ただの精力剤だってば」

心底楽しそうに笑いながら、みょうじさんは私の足の間に割って入った。手を伸ばし彼女の頭を掴んで引き剥がそうとするも、相手が女性だという理性が働き、この身体も相まって力が入らない。

そして…されるがまま生々しいソレが取り出される。こんな屈辱を味わうのは、初めてだ。


「もう、こんなに熱くなってる」
「あなた、いい加減に…!」
「もー、こんなにヒクヒクさせて、説得力ないよ?」
「…っ」

慣れた手つきで竿を下から上に撫でる手。全身に強い快感が走る。


「いただきまーす」
「やめなさ…ぁっ、」


声を出すのだけは避けたいと思い、必死に声を押し殺していたが…みょうじさんがソレを口に含んだ瞬間に微かに声が漏れる。嬉しそうに反応したみょうじさんが、咥えたまま髪を耳にかけた。

その仕草があまりに色っぽく…目が離せなくなる。目を伏せたみょうじさんの顔と、その小さな口から出し入れされる自身に。


「…くっ、あ…」
「ぁん…もうっ、おっきくて口から出ちゃうよ一ノ瀬くん」
「黙りな、さ…」
「イっちゃいそ?良いよ、飲んであげる」


根元を勢い良く擦られ、先端には彼女の舌が這う。昇り詰める快感に抗う術なく、限界に達すれば…みょうじさんは嫌がる素振りも見せず、いとも簡単に白い液体を飲み込んだ。


顔を上げたみょうじさんの口端からは、飲み切れなかった白い精液が伝う。官能的な表情を浮かべたなまえさんは満足気に微笑み、身体を起き上がらせ、私の太腿の上に跨った。

右手で竿を擦られれば、意思に反してまたそこに血が巡る。それが、堪らなく情けなくて、悔しい。


「出したばっかりなのにもう勃ってるね。精力剤の威力ってすご」
「はぁっ…は…」
「もう一回余裕で出せそうかなっ、と」


ブレザーを着たままの彼女は、上着のポケットからコンドームを取り出す。予め準備していたなど…確実に、確信犯だ。



「何が…目的ですかっ…?」

歯で封を切って、スムーズにゴムを被せたみょうじさんは、ショーツだけ自身で脱いで跨り腰を落としていく。


「目的?」
「何か…っ、狙いがあるんでしょう…?写真でも撮って週刊誌にでも売るつもりですか…!」
「やだぁ、そんな安いことしないよ」


音を立てて飲み込んでいく様が視界に入り、顔を横に向けて視線を逸らした。暖かいものに包まれる感覚…情けなくもそれに喉が鳴ってしまう。


背けていた顔は、みょうじさんが頬に添えた手によって正面に戻された。視線が合うと、色っぽく笑った彼女に…悔しくも目が奪われる。



「そのクールな顔を、快感で歪ませたかったの」
「…あっ、…くっ、は…」


みょうじさんが上下に動く度、中がうねるように蠢く。学校の保健室で、しかも恋愛禁止の学校で…このような羞恥を働く罪悪感と背徳感が襲う。

しかしながら、制服は一切乱さず、いやらしく腰だけ振って私を見下ろすみょうじさんと…全身の快感に逃げられなくなっているのも事実で。


「ねぇ、私の彼氏になってよ」
「誰が、あなたなんかと…!」
「えー?こんなにっ、身体の相性も良いのに…?」


残念ながらそれは否定出来なかった。

生まれて初めて味わうこの感覚は…薬のせいなのか相手がみょうじさんだからなのか。いつも冷静であるはずの私が、今はあまりに余裕がなく判断がつかなかった。



「一ノ瀬くんは…っ、ぁっ…好きな女の子はいるの?」
「あなたには…っ、関係ないでしょう…?」
「気になる女の子は?」
「…っ、は…」
「ふーん、そう…じゃあ当ててあげる。Aクラスの七海さんでしょ」
「…!黙りなさ…」
「あはっ、おっきくなった。図星かしら」


良いようにされるがままなのが、心から腹が立つ。無理矢理にでも抜いて、彼女を置いてここから去ってしまえば良いのに…これを体験してしまうと、もう抜け出せない──。気が付けば二度目の絶頂を味わうまで、夢中でみょうじさんの腰を掴んで揺さぶっていた。









「あ、授業終わった。そろそろ教室戻らなくちゃ」
「はぁっ…はっ…」
「じゃあ私、先に戻ってるね。制服と髪、直してから来た方が良いよ、一ノ瀬くん」


二度目の射精の後、手際良くゴムを片付けたみょうじさんは…息を切らすことなく私からさっさと退いて保健室のドアを開いた。その切り替えの早さにまた、驚かされる。


「それじゃまたね、トキヤくん。それと、待ってるから」
「え?」
「告白の返事!」



バタンと保健室のドアが閉まった頃、次の授業の予鈴が鳴った。情けなく乱れた制服を見下ろしながら彼女の言葉を反復し…思わず頭を抱えた。



『ねぇ、私の彼氏になってよ』
「どこが告白ですか…」


一方的な物言いと、強引な突然の行為に頭を悩ませながらも…次会った時に、どう返事をしようかと。真剣に考えてしまっている自分に気付き、嫌気が差した。



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