voice of mind - by ルイランノキ |
3階への階段を上がると、まず横並びに2つの部屋があった。その隣にも通路を挟んで1つの部屋がある。通路を抜けると左側の壁沿いには横長の部屋、反対側には2つの部屋がある。
4階への階段は更に奥にあるスペースの角。1階の門口がある方角を手前の中心と考え、左下に2階から3階への階段、右下に4階への階段がある。
アールはルイの名前を呼んだが、返事は返ってこなかった。
「部屋を見て回ろう」
ベンが率先してそう言った。
まず階段を出て目の前にあった部屋には魔物がいた。キマイラの戦闘で回復薬を多く使ってしまったため、なるべく無駄な戦闘は避けたい。魔物は魔法によってその部屋から出られないのか、襲い掛かってきても廊下へ出て部屋のドアを閉めれば中の魔物は大人しくなった。
「これといって宝物などは置いていないようだから戦闘は避けよう」
ベンはそう言うと、今度は隣の部屋のドアを開けた。
そこはなにもなかった。木のテーブルがひとつ置かれているだけの部屋だ。次に通路を挟んで壁側にあるひとつの部屋も覗いた。魔物が待機していた。部屋の中を確認するために一度攻撃をしかけたが、魔物以外にはなにもないと確認するとそれ以上の戦闘は避けた。
通路を渡り、左の壁沿いにある横長の部屋を覗いた。左端に机があり、小さいランプが置かれている。反対側の壁には絵が飾られており、壁一面には本がずらっと並べられた書籍だった。
「難しい本ばっかり」
と、カイ。
「…………」
シドは飾られている絵を眺めた。茶色い壷が描かれている。しかもよく見ると壷の柄なのかひび割れなのか描かれているそこに小さな穴が空いている。虫食いなどではなく、意図的に開けられたと思われる穴だ。
「この壷……1階になかったか?」
と、ベン。
「意味深だな」
「ジャック、お前、ちょっと1階の部屋を見て来い」
「え……」
正直面倒だった。やっと3階まで上がってきたというのに1階に下りろとは。
「ろくに戦ってないだろう。それくらいやれ」
「……わかった」
「2階の板に気をつけて」
と、アールが注意を促した。
「あぁ」
ジャックは2階へ下り、どうやって1階への階段までいけばいいんだ?と頭を捻ったが、ルイが消えてしまった階段下の【H】へ恐る恐る足を踏みおろすと、何も起きなかった。反対側からこの部屋を通るときはなにもおきないのかもしれない。しかしながら面倒なことが起きるのは絶対に避けたい。一応、【H】→【G】→【F】→【D】の順を通った。なにも起きることなく、階段へ到着。1階へ駆け下りた。
アールはジャックの戻りを待ちながら、残りの2つの部屋を覗いた。ヴァイスがそんなアールに付き添ったが、魔物はいなかった。宝箱や気になるものは特にない。
「ルイいないね……」
と、部屋を出るアール。
「無事だ。心配するな」
「わかるの?」
「血の匂いがしない」
「…………」
「……すまない」
1階へ下りたジャックは茶色い壷が置いてある部屋へ入った。壷に触れてみる。四方八方から眺めてみるが、ただの壷。中を覗いてみるが、なにも入っていない。壷を抱えたまま、壷が飾られていた台も調べてみたが、ただの台だ。
「壷持ってくか……」
念のため部屋を隅から隅まで調べた。なにもない。ジャックは2階へ上がり、板を踏む順を間違えないように気をつけながら3階へ戻った。
「これといってなにもなかった。一応壷を持ってきたが」
と、ベンに渡す。
ジャックがしたように、ベンも壷を様々な方角から眺めて中を見遣るが何もない。手を入れた。底には勿論なにもない。内側を手の平で触れてみるが何もない。
「あるとしたらここにありそう」
と、アールが壷の上の方を指差した。
壷は口が窄んでいて、中は大きく膨らんで、底は窄んでいる。その窄んでいる口から大きく開いている部分の裏を指したのだ。上から見ると死角になり、手をつっこめば一番見落としがちの場所だ。
ベンは浅く手を入れて、指を曲げてそこに触れた。なにか硬いものが指先に触れる。爪を立て、それをはがし取った。
小さな鍵だった。差し込む部分は丸くなっている珍しいものだ。
「見落とすところだった。冴えているな」
と、ベンはアールに言った。
「あ、いえいえ……」
と、照れくさそうに笑う。
そんな二人を見て、シドは不満な顔をした。
鍵を絵の穴に差し込んだ。鍵穴の奥に引っかかるものがあり、強めに差し込むとカチャ、と小さな音がして左側の壁を覆っていた本棚が右の壁側へスライドするように移動した。
「隠し扉だ!」
と、目を輝かせるカイ。
シドが大きくスライドさせると、その奥には書籍よりひとまわり小さな部屋があった。その奥にテーブルがあり、鍵が置いてあった。
「なんの鍵だ?」
ベンが覗き込む。
「さぁな」
と、シド。
「収穫はそれだけだねーえ」
と、クラウン。
「4階に上がろう」
ルイを捜さなきゃ。
一行は鍵を手に、4階へ向かった。
Thank you... |