voice of mind - by ルイランノキ


 説明不足の旅5…『voice RUI』

 
〜RUI Voice of mind〜

 
君の古傷を知った夜、君の夢を見た。
 
真っさらな何もない空間の真ん中で、震えるようにうずくまっていた君は、
大切そうに何かを胸に抱えていた。
 
何度声を掛けても答えてくれない君に、僕は少しずつ近づいて気付く。
 
君が大切に抱えていたものは、
錆び付いた無数の釘や針が突き刺さって変形している心臓だった。
 
君はゆっくりと顔を上げ、
血まみれの両手で僕に心臓を差し出しながら言った。
   
 『助けてくれるんだよね……?』
 
君の左胸にはポッカリと穴が開き、粘り気のある赤い血液が流れ足元を濡らしていた。
 
残酷な光景に僕の体は小刻みに震えていた。
それでも救いたいと思う気持ちから、恐る恐る両手を差し出すと、君の手から僕の手に移された君の心臓は
僕の体温で溶けたアイスのように指の隙間からドロリと落ちた……。
 
 『助けてくれるんじゃなかったの……』
 
僕の手には釘や針だけが残され
君はゆっくりと崩れるように倒れた。
 
穴が開いた胸から血が吹き出し、僕は君の血を浴びた。
慌てて君の胸に手を置いて塞いだけれど、
とめどなく溢れ、真っさらな空間を隙間なく赤く染めた。
 
 『ウソツキ……』
 
 
君が発した最期の言葉は、僕の胸を貫いた──
 

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©Kamikawa
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