voice of mind - by ルイランノキ


 サンジュサーカス11…『地下』

 
電話を切ったアールは周囲を見回した。シドの姿がない。
 
「シドー?」
 
いつの間にか女の子の声も聞こえなくなっていた。
女の子よりもシドを捜していると、すぐに見つけることが出来た。村の中心を真っ直ぐに伸びているメイン通りを歩いて来る。
 
「いねぇぞ」
 と、不機嫌なシド。「死んでんじゃねぇの」
「なんでよ……さっきまで笑い声してたじゃない」
「だから死んでんじゃねぇの。生きてる人間の声とは限らねぇだろ」
 と、シドは公園へ戻る。
「……ちょっと。怖いこと言わないでよ」
 アールは辺りを警戒しながらシドの後を追った。
 
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モーメルが帰宅したのはカイが暇を持て余し過ぎて2階の客室で眠りこけた頃だった。
ルイがミシェルと畑の草むしりを手伝っていると、そこに帰宅したモーメルが顔を出した。
 
「ここにいたのかい。姿がないから帰ったのかと思ったよ」
「おかえりなさい」
 と、ミシェルとルイは立ち上がる。
「アーム玉の仕分けも済んだようだよ。うるさいのはどこにいったんだい」
「カイさんなら2階の部屋で休んでいます。勝手にすみません」
「うるさいよりはいいさ」
 と、モーメルは家に戻る。
 
「お手伝いありがとうございました」
 ミシェルはそう言って手を差し出した。「軍手、私が戻しておきます」
「すみません、ありがとうございます」
 ルイは軍手を外してミシェルに渡すと、家へ戻って行った。
 
ミシェルは鼻歌を歌いながら草むしりを再開した。機嫌がいいのはワオンとの交際が順調で、そのことをアールに伝えるとアールも喜んでくれたからだ。
 
モーメルは仕分ける機械からアーム玉を取り出し、テーブルに運んだ。
仕分ける前と後ではアーム玉の色の並びが変わっており、小さな魔法文字の印しがつけられている。
 
「あんたらの今のレベルを考えると、使えそうなのはこの辺りだね」
 と、モーメルは一部のアーム玉を別の容器に移し入れた。
「僕の武器を強化出来るもの、取得出来そうなスキルはありますか?」
 ルイは立ったままテーブルに身を乗り出した。
「いくつかあるが、一気に取得するとコントロール出来なくなるから、一番必要なものから試してみるかい?」
「お願いします」
 
モーメルは一度外に出ると、家の隣にある巨大倉庫へ移動した。倉庫の扉を頑なに閉めている南京錠を外し、扉を開くとそこにはモーメルが作り出した魔道具が眠っていた。中には闇の取引きで手に入れた道具などもある。
 
「どこに仕舞ったかねぇ」
 モーメルはアーム玉の力を武器に移す為に使う魔道具を探しはじめた。
 
ルイも倉庫内に入り、手当たり次第に探すがどれも埃かぶっていて下手に動かすと埃が舞ってしまう。
 
「モーメルさん、この下には地下が?」
 
ルイは足元を見遣った。いくつかの壺が重なるように置かれていて開けることは出来ないが、床に鍵付きの四角い扉がある。
 
「……あぁ、もう長らく使っていないよ。鍵もどこにやったかねぇ」
 
そう言ってモーメルは近くにあった箱を開けると、綺麗に収納されている布を一枚引っ張り出した。
 
「あったよ。ここで済ませよう、カイが起きてきたらやかましいからね」
 
倉庫内の中央にスペースをつくり、布を広げた。布の中心には複雑な魔法円が描かれている。ルイは手順を知っていたため、手際よく布の中央にロッドを置いた。
 
「まずはなんの力が欲しいんだい」
「攻撃魔法も手に入れたいところですが、まずは回復魔法を。特に今はスイミンの魔法を解くスキルが欲しいところです」
「あるよ。大概スイミン魔法を使ってくる魔物が出る場所にはスイミン魔法に対抗するアーム玉や道具が宝箱に入っているものさ」
 

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