voice of mind - by ルイランノキ


 サンジュサーカス8…『ココモコ』

 
結局ココモコ村に着いたのはあれから3日後だった。
 
一行は疲労ですっかり老けこんでいた。魔物が現れてもむやみやたらに倒すことが出来ないのはただただ体力を奪われるばかり。
 
村には街のような受け付けはなく、面倒な手続きなく入ることが出来た。
ただ、一行は村の中心まで歩き進め、足を止めた。時刻は午後2時。その村は綺麗に家が並んでいるものの、しんと静まり返っていた。人の気配が全くない。
 
ココモコ村は入口から真っ直ぐに伸びたメイン通路があり、左右には二列ずつ計14軒の家が建っている。左側には10軒。残り4軒分は公園になっており、メイン通りの突き当たりには村人達が集まる一階建ての集会所がある。また、左側には転送ロッカー、右側には小店がある。
全部で24世帯の小さな村だ。
 
「なんかブラオ思い出すね。人一人いないなんて……」
 と、アールは不安を口にした。
「出掛けているわけではなさそうですしね」
 ルイは一軒の家を見遣る。窓が開けっ放しになっており、落ち葉が室内に入り込んでいた。
「ルイ、さっきの公園、見てみよう」
 と、アールは公園に向かう。
「俺は向こう見てくるわ」
 シドはそう言って集会所の方へ向かった。
 
アールに着いてきたのはルイとカイだ。ヴァイスはまた別行動をしている。
 
「あった。あれ、噴水だよね」
 公園に足を踏み入れる。
 
家4軒分の広さの公園だ。周りを囲む木々には所々に枯れ葉がついており、殺風景だった。
 
「あーっ!」
 と、カイが駆け出した。その先には拾った写真に移っていた奇抜なデザインのベンチ。
 
ベンチの脚はベンチの中心にあり、三角形の上部一点で支えられている。カイはすぐにベンチの端に座ってみたが、傾くことはなかった。
 
「やはりここだったのですね」
 ルイは写真が撮られたと思われる場所に立ち、写真を見遣った。
「この村の人ってことかな」
 と、アール。
「おそらく、そうだと思います」
「ブラオのときみたいに、魔物に襲われたのかな……ドルバードではなさそうだけど」
「調べてみる必要がありそうですね」
 
アールたちは公園を出てメイン通路に出た。村の奥からシドが戻ってくる。
ヴァイスは屋根の上から村全体を眺めていた。
 
「誰もいねぇな。けど奥にゲートボックスがあった」
 と、シド。「真新しいやつがな」
「そうですか、それなら助かりますね。ただ、誰もいないとなると勝手に寝泊まりするわけにはいきませんね。公園にでもテントを張りましょうか」
「聖なる泉はなかったの?」
 と、アール。
「ねぇな、残念ながら」
「ですが外よりはゆっくり休めるはずです。村全体を囲む防壁結界が張られていますし」
「ちっせぇ村なのにゲートボックスはあるわ防壁も張ってるわ……村に魔術師がいたんだろうな」
 
村人が一人もいないとはいえ、人がいなくなってから何年も経過しているようには思えない。数ヶ月前までは誰かがいたような、そんな気配があった。
ルイが公園にテントを出すと、ヴァイスが戻ってきた。
 
「真新しい足跡があるようだ」
「私達のじゃない?」
 と、アール。
「いや、随分と小さい」
 ヴァイスはその場に片膝を着いて地面を見遣った。
 
アール達も近づき、それを見遣る。そこには明らかにアールの足よりも小さな足跡があった。
 
「ほんとだ。子供だね……」
「風や雨などに消されていないとなると、つい最近のものでしょうね」
 と、ルイは今一度周囲を見遣った。
「大人の足跡はないの?」
 アールはヴァイスを見遣ると、ヴァイスは立ち上がって首を左右に振った。
「ゲートボックスがありますから、この村の子供とは限りませんね。他所から来たのか、もしくはこの村の子供がどこかから一時的に戻ってきたか。子供だけで村に住んでいるとは思えませんし」
「だな」
 と、シドはテント内へ。
「休むには早くない? やることないけど」
「そうですね。ですが早めに済ませておきたいことがあります。僕は一先ずこれからモーメルさんの家へアーム玉を持って行こうと思いますが、アールさんも一緒に来ますか?」
「いくいくーっ!」
 と、走ってきたのはカイだった。
「ヴァイスは?」
 と、何となくアールは訊く。
「あぁ……」
 
ヴァイスの場合はモーメルの家へ行くというより、ムゲット村へ行くのだろう。
 
「どうしようかな……私が行っても邪魔になるだけかもしれないから、お留守番しとくよ」
「わかりました。ではシドさんのことよろしくお願いします。なるべく早めに戻りますね」
「うん、モーメルさんとミシェルとラムネによろしくね」
 

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