voice of mind - by ルイランノキ


 ルヴィエール13…『アールの行く末』

 
「くそっ……どこ行きやがったあの女……」
 と、シドが息を切らしながら言った。
「早朝で人が少ないので直ぐに見つかると思ったのですが……」
 ルイも息を切らし、辺りを見渡しながら言った。
「手掛かりもねぇしな。それに捜すにはこの街は広すぎやしねぇか?」
 
二人は、街中を走り回っていた。アールを捜しに出たものの、手掛かりは何一つ無く、途方に暮れる。
 
「二手に別れましょうか」
「そうだな」
 
──と、その時、遠くから女性の悲鳴が聞こえてきた。
 
「何だ?」
「アールさんかもしれません!! 行きましょう!!」
 
二人は悲鳴が聞こえてきた方角へと走り出した。アールの安否が気が気でなかった2人は気持ちばかりが先走っていた。彼等にはアールを守らなければならない役目がある。
 
「あの女……世話がやけるな……」
 シドは少しうんざりしたように言ったが、内心は酷く心配しているのが顔に出ている。
 
向かった先には、ルヴィエールで一番大きい図書館があった。図書館の前では大勢の住人が青ざめた顔で立ち尽くしていた。中には子供を抱きかかえ、その場から逃げだす者もいた。さっき聞こえた悲鳴は、どうやら街の住人だったようだ。
 
「……何かあったのですか?」
 駆け付けたルイが、その場にいた男に尋ねた。
「あ……あれを見てくれ!」
 男は図書館を指差した。
 
ルイとシドは目を懲らして館内を見遣ると、真っ黒い魔物がうごめいているのが見えた。
 
「なんだよあれは……」
「誰かの仕業でしょうね……タチの悪い誰かの……」
「どうすんだ?」
「時限結界が張られているようです。もしかしたら魔物を放出する気なのかもしれません。今のうちに住人達を避難させないと……」
「避難って何処にだよ!!」
 と、焦るシドが叫ぶ。
「住人達は私が誘導します!」 
 と、騒ぎを聞き付けた街の管理人がやってきた。「魔物達はあなた方に任せても宜しいでしょうか?!」
「えぇ……しかし出来れば援助を願いたいのですが。街の中での戦闘は危険ですし、魔物の数が多すぎます……」
 と、ルイが言った。
「分かりました。スィッタに連絡し、戦闘部隊を直ぐに手配します。──街の皆さんは南口のホールまで避難して下さい!!」
 管理人はそう叫び、街の中心部にあるスィッタ施設へと走って行った。
 
「戦闘部隊ってなんだよ……んなもんあんのか。さすがでかい街だけあるな」
「戦力になるなら何でもいいですよ。それより、中の様子が見えづらいですね。それに……」
「あの女が巻き込まれてなきゃいいな」
「えぇ。一先ず、カイさんに連絡しないと……」
 ルイは携帯電話を取り出し、カイに電話を掛け、状況の説明をした。
  
暫くして、街中に取り付けられたスピーカーから避難命令が発令された。
昨日まで笑い声が飛び交い、賑わっていたルヴィエールの街は一変し、身を守ろうと避難所へ向かう人々で入り乱れ、大混雑の騒ぎとなった。
  
 

[*prev] [next#]

[しおりを挟む]

[top]
©Kamikawa
Thank you...
- ナノ -