voice of mind - by ルイランノキ


 見知らぬ世界15…『voice SID』


〜SID Voice of mind〜

 
この世界は、少しずつではあるが確実に、終わりへと近づいている。

人間より魔物が大半を占め、飲み込まれてしまうのは時間の問題だった。

そんな中、最後の希望をかけ、黒魔術士ギルトが禁じられた扉を開けた。

別世界へと通じる 扉。

俺達も最後の望みをかけた。
 
だが、そこに現れたのは簡単にヤれそうな女だった。
最後の望みは 消えたと確信した。

お前を初めて見た時からずっと俺は、信用などしていなかった。

仲間は次第に受け入れ始めている中、
俺だけは違った。
所詮女だ。女に何が出来る。

一度も剣を手にしたこともない女が
魔物を見たこともない女が
生き物を斬り殺したこともない女が
ただ元の世界に帰れないからと諦めてもがいてるだけじゃねーか。
 
お前にこの世界の何が解るんだ。
お前に世界は救えやしない。
この破滅に向かう世界を、お前が救えるとは思えない。
 
 
旅に出て、訪れた“雨の日”
俺はお前に暴言を吐いた。
お前は言い返すこともせず、黙っているだけだった。
 
俺は無神経だったことに気付けなかった。
今思えば、お前はこの世界に来たときからずっと、休む暇もなく 苦しみ続けていたんだ。
 
雨が降る外へと飛び出して行ったお前をルイ達が捜しに行ったが、見つからなかった。
お前が帰って来たらちゃんと謝れと散々言われ続けている時に、びしょ濡れになって、傷だらけになって、そして長かった髪をバッサリと切って、お前は帰って来た。
 
あの時のお前の目は
今も忘れられない。
 
鋭い目付きで お前は言った。

 

「覚悟は決めたから」


と。
 
あの時の覚悟を忘れたのかよ
 
少しだけ
ほんの少しだけ
 
期待してやったのに。


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©Kamikawa
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