text


薄暗い店内の奥に案内され、私と奈津美はソファに腰を下ろした。



案内してくれたギャル男風味ホストに



「そのカッコイイ新人くん連れて来てくれんでしょうね?」


と、凄む奈津美。





ギャル男風味は「ただいまお呼びしますんで」そう言って微笑むと席を離れた。







「マジさぁ、かっこよくなかったらどうするよ?」

「とりあえず“話と違うじゃーん!!帰る!!”って言おう」

「それ良いわ」





あはは、と笑いながら待つこと数秒。







「初めまして、ヒカルです」



と、その新人くんが登場した。








………。



………あれ…?






この顔…



どっかで……。








「おぉ!!本当にカッコイイじゃん!!ねぇ、マキ!!?」






奈津美がテンションを上げて私の肩を叩いた。




けれど私はテンションが上がるどころか



思考回路停止状態。






だって…

このホスト









「……仲村…先生…?」

「…瀬戸…くん…?」







そう、あの授業中寝てばかりの瀬戸和樹だった。




あまりにも呆然としているものだから横から、





「あ、どうも〜!!おいヒカル!!何ボケッとしてんだ!!」



と、さっきのギャル男風味のホストが現われた。



瀬戸くんは「すみません」と謝ると私の隣に座ってきた。







………気まずい…。




生徒が校則違反の夜のバイトをしているところに遭遇してしまったことより




地味に地味に過ごしていた国語教師仲村マキが




実は派手でホストに遊びに行くような女だってバレてしまったことが気まずい。








……終わった…

私の地味ライフ…。








「ねぇ、マキ。さっきヒカルのこと見て二人揃って何かクチにしなかった?」

「え!!?」




さっきの会話(というかお互い名前を呟いた)奈津美に聞こえてなかったんだ…。







「ねぇ、ヒカルかっこいいでしょ?」



そう言ってくるギャル男風味に




「カッコイイわ」


と、肯く奈津美。






「マキもこれはタイプなんじゃない?」




ニヤニヤと笑う奈津美に「さぁ…」と曖昧に返した。








「ヒカル、お姉さん達が美人だからってぼんやりしすぎだぞ」

「あ、や、本当、あんまりキレイなもんで見とれてしまいました」






キョドりながら上手く交わす瀬戸くんに感心してしまう。




普段学校では無愛想な上に態度も悪いのに


ホストなんかしちゃって




超意外…。






「飲み物どうしますか?」

「ワイン飲もうかな」

「ワインですね?赤と白どちらにします?」

「赤で。マキも同じでいい?」

「う、うん」






凄い、まるで別人。


今は瀬戸和樹じゃなくて“ヒカル”なんだ。





でも何でホストなんかしてんだろ…。



親は大企業の社長で豪邸に住んでるって話なのに。







「ねぇ、ヒカルって若いね。いくつなの?」



ぼんやり瀬戸和樹の家族構成などを思い出す私の横で楽しそうに質問をする奈津美。







「20歳です。先月から働いてるんです」



3つもサバよんでるし!!
しかも先月から…ってことは夏休みから?






「20歳か…じゃさ、あたし達のことはいくつに見える?」

「んー、僕とあまり変わらないんじゃないですか?」



んなはずないだろっ!!!
何その営業トーク!!!






あぁ、ダメだ…
ストレス溜まる…。





[*prev] [next#]

PageTop

.


.





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -