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  • 正直に、好きって言えよ@ 1/2

「あーむしゃくしゃする」
「お前、もう出来上がってんのかよ」
「つーか、何で居酒屋?普通お洒落なお店とか連れてかない?」
「いや、お前そういう店好きなの?」
「ううん、無類の居酒屋好き」
「じゃ、いーじゃねーか」

チェーン店が多い、安い、早い、旨いで有名の居酒屋。
駅のすぐ近くに店舗があるせいか、夕方のこの時間はサラリーマンや若者で賑わっている。
あたしも学生時代はご用達だったお店の駅前店とあれば、お酒の力もあるが気持ちが軽くなって当たり前だ。

「他にどんな店行くんだ?」
「んーよく行くのはさ○ら水産」
「おま、それ本当親父ご用達じゃねーか」
「何よ、文句あんの?旨いし安いし、最高じゃない!」
「あーそーですか、まじでこの店で良かったと心底思ったよ」
「…むかつく」

他愛ない話を続けていた。
でも、何故か心が落ち着いた。こうやって憎まれ口ばっかりはいていると
さっきまで課長を困らせた女子社員達への苛立ちも少し落ち着いてきていた。
如月といるから…なんて悔しくて思いたくないけど、確かにそうだった。

「言ってやらないけど」
「あ?何か言ったか?」
「別にー、あ、お姉さん中ジョッキー」

「ありがとうございますー」

「人の話聞けよ」
「はいはい、如月様はいつも偉そうですね」
「お待たせしましたー」
「お、早い、ありがとー」
「だから……まぁいいや」

わざと聞いてないフリをした。
だって追求されて「如月のおかげ」なんて口走ったら何を言われるか分からない。
それは、悔しい、その一言に尽きる。
どうしてこんなに対抗心があるんだろう。
ただの同僚なら軽く流せばいいじゃない。
女子社員相手ならいくらでも出来るじゃない。
どうして如月だといつもこうなんだろう。

「うー、気持ち悪い」
「飲みすぎだ」
「うーあんた、何であたしにキスしたの?」
「は?何を今更」
「今更って何よ!お金取るわよ!」
「…お前、酒が入ると性格変わるタイプ…いや、いつもに増して強気になるだけか」
「いいから、何で?」
「教えない」

わざとそっぽを向いて、ビールを飲み干した。
「あ、俺も中ジョッキね」
「かしこまりましたー」
「ちょっと、ごまかさないでよ」
「うるせぇ」

そういいながら目の前のテーブルに並んでいるたこわさをつまんでいる。
あたしが注文した時「親父くさ!」って言ってたくせに、好きなんじゃない。
素直じゃない奴、ううん、人の事言えないか。


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