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  • 正直に、好きって言えよ@ 2/2

「じゃ、質問変える!」
「はいはい、何でもどーぞ」
「好きなタイプは?」
「またおかしな事聞くよな」
「いいじゃん、教えろ」
「何で命令口調?」

どうやら酒がかなり回ってるみたい。
顔が赤いのが分かる。目の前も少しぼんやりしてきた。
お酒はそんなに強い方じゃないけど、何となく今日は飲みたい気分でビールを何杯もおかわりしていたのがいけなかったんだろう。

「仕事に文句を言わないやつ」

突然如月が呟いた。

「怒られても、ちゃんと仕事に向かうやつ」
「それ、当たり前の事じゃない」
「怒られて、給湯室で上司の悪口言わずに、黙々と作業するやつって事」
「ふーん、でもそれってあたしの事?」
「…自信過剰」

「…違うよ」

あ、目の前が本格的にぼやけてきた。
まぶたが自然と落ちてくる。

「あたしが…いつも仕事で、気をつけてる事だから、それを…見て…いてくれてたら…うれし、なと…おも…て………」

おぼろげに口にした言葉を最後まで言えたか、全く分からなかった。
ここの所意地でも納期に間に合わせてやると思って残業ばっかりだったから、疲れがたまっていたんだろう。
睡魔があたしを襲い、そしてあたしは、負けた。



「…おい、寝るのかよ」
目の前でテーブルにうつ伏せて寝ている相川の顔を指でつついてみるが、全く反応がない。
疲れていたんだろう、その上課長からの話だ、真面目なこいつが落ち着いていられるはずがない。
いつも仕事に熱心で、失敗しても挽回しようと真剣で、他の女子社員が合コンだのデートだので仕事中も鏡を見たり、給湯室に勢ぞろいで上司や同僚の悪口言ってる中、いつもパソコンと向き合って、仕事で褒められるとすごく喜んで。
そんなこいつだから、ペアに選んだ。
そんなこいつだから、好きになった。
だから、キスした。俺の事気にしてほしくて、仕事だけじゃなく、俺の事にも真剣になってほしくて。

「賭けだったんだよな…」
俺を心底嫌いになるか、慌てふためいて俺の事考えるようになるか、どちらかだろう。
でも、賭けには勝ったみたいだ。
そして、少しは気にしてくれているようだ。
いや、認めていないだけで、もしかしたら俺の事を好きになってるかも…なんていうのは、お前の言う通り、自信過剰…かな?

「嬉しいと思うなら、俺の事好きになってよ」
「………」

寝てるこいつに言っても無駄なのは分かっていても、穏やかに眠る相川の顔を見ていると言わずにはいられない。

「好きだ」



小声で呟く俺に、「…あたしも」と言ったのは寝ぼけているから?
本音?それとも、夢の中で俺じゃない誰かに言ってる?




(あー、クソ!振り回されてばっかだ!)

それでも、相川の言葉が嬉しくて、顔がほころぶ。

今日だけは、「俺に言った」そう思わせて。


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