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  • 俺を選ぶ、違うか? 2/2

「仕事、というより、人間関係…だな」
「人間関係…ですか」
「コミュニケーションは大事だしな、うまくいってないってのを聞いて」
「いえ、そんな事は…」
「相川は真面目に働いてるから、ペアを変えたくなったらいつでも言っていいんだぞ?」
「課長…」

心配して言ってくれているのが分かった。
たぶん、他の社員というのはこの間の女子社員たちの事だろう。
課長にあれこれ言ったに違いない、そう確信した。
(何てはた迷惑な…)
課長は部下のメンタル面も気にしてくれる素敵な上司の一人だ。
そんな課長を悩ませることをする女子社員に対して、ふつふつと憎しみがわいてきた。

「大丈夫ですよ」
「そうか、ならいいが、いつでも言うんだぞ?」
「はい、ありがとうございます」

そう笑顔で告げて、自分のデスクへと向かった。
PCの電源を切り、一番下の引き出しから鞄を取り出し、如月をにらみつけた。
「飯、食うんでしょ?」
立ち上がり、オフィスの入り口へと向かう。
「おま、だったら早く言え!!」と怒鳴りながら如月は慌ててあたしの後ろから走ってきた。

エレベーターの中、無言が二人を襲う。
「おい、何かあったのか?」
「別に、ただ腹がたつだけ」
「はぁ?何に」
「課長を困らせる女子社員たちに」
「…なるほどね」

察しがいい如月は、それだけで課長の話が何だったのか分かったようだ。
その後は無言で1Fに着くのを待ち、「こっちだ」という如月の声に導かれるまま如月の車が駐車されている場所まで歩いていった。

「お前、課長に惚れてんの?」
ドアを開ける前にそんな事を聞かれてしまった。
「はぁ?何言ってんの」
「違うならいーけど」
何をすっとんきょんな事を言ってるんだ、こいつは、と文句を言ってしまおうかと思ったが、如月の顔が何だか沈んだように思えたから、何故か言えなかった。

「課長は、尊敬する上司よ」
目をじっと見つめて、呟いた。
すると、満足したような笑顔で「そっか」と言った。
その顔を見た瞬間、体が蒸発するんじゃないかと思うくらい、全身から熱が出た。
(何て顔をするのよ…)たまに無邪気な表情を見せる如月。
たぶん無意識に見せてると思うけど、その顔はあたしにしか見せていないんじゃないかと錯覚してしまう程、オフィスでは見せない顔だから。
胸が苦しくなる。またこれだ。

「お前、どうすんの?」
「何が?」
「ペア、変えたいって、言う?」

お互い車を挟んでの会話。

俺を選ぶ、違うか?



いつもの意地悪な顔じゃなかった。
真面目な、顔をしていた。


「選ぶわ」
それだけ、呟いた。



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