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「…っ、頭…痛い…」



物凄い頭痛に頭を抑えながら私は身を起こした。





「………?」




あれ…?

ここ…何処?


ぼんやり薄暗い辺りを見回すと見たことも無い殺風景な部屋。



クローゼット、窓、カーテン、ソファ、テレビ、キッチン……



……これは…私のうちではない…。






「あ、起きた」





その声の方向に目をやると一人の男がタオルで濡れた髪を拭きながら立っていた。

パンツ一枚で。





「………」


思考回路停止中…。





「大丈夫?」

ははっと笑いながらその男は私のいるベッドに腰をかける。


…って!私なんつー格好でベッドにいるの!!?

下着じゃん!下着っ!!!



慌てて掛け布団で胸元を隠した。



ってか、問題は格好だけじゃない。



これはちょっと昨夜の出来事を整理しなくては。






えーと、えーと、

いつもと同じように着替えて奈津美と呑みに行って


そんでほろ酔い気分で歩いてたら



ホスト…

そうだ、ホスト!







「………」

「あれ?ひょっとして記憶とんじゃってる感じ?」

「……とりあえず…お水ちょうだい…」



冷蔵庫から持ってきてもらったミネラルウォーターをゴクッと飲んだ。


カラカラの喉に潤いが戻ってきたと同時に昨夜の記憶も少しずつ戻ってきた。





私と奈津美を接客してくれてたホスト、ヒカルは私の働いている学校の生徒、瀬戸和樹。


そいつが今目の前にいる半裸の男。







「…あの…ここって…」

「俺んち」

「…何であたしが“俺んち”に…?」

「酔いつぶれて起きなかった迷惑な客を手厚く介抱したヒカルくんにそういう口の利き方するんだ?」

「………」





私はお酒には強い方で滅多に潰れないのに、やけになって呑んでしまったのは“ヒカル”っていう存在のせい。

コイツがホストなんてバイトしてるせいだ。



地味で目立たずやってきたのにフルメイク見られるし、(ミニ)スカート姿見られるし、遭遇場所がホストクラブ

酔わずにはいられなかった…


反省…。






「ってか、奈津美は?一緒じゃないの?」

「奈津美さんは元彼からの電話の後、代金支払って先に帰ってったけど」

「はぁっ!!!?」



奈津美!!アンタまだあの男と完全に切れてなかったのね!!!





「“マキが起きたら宜しく”って言い残して自分はさっさタクシーで去って行ったよ」

「はぁぁっ!!!?」

なんつー薄情なヤツ!!!






「“マキさん”起こしても全然起きないし」

「………」

「俺、人気ホストヒカルだから“マキさん”のこと頼まれたまま付きっ切りってわけにもいかないのが現状だし」

「………」

「ま、俺も何か今日は早く帰りたい気分だったし他の指名入ったりウザかったからあがらせてもらったんよ“マキさん”を連れて」

「……そ、そう…」



ってか、その“マキさん”っていう呼び方やめてっ!





「…てのは建前で」

「…え?」

「本当はちょっと興味がわいたんだよね、“仲村先生”」




ニヤリと不敵な笑みをしながら私を覗き込んできた瀬戸和樹は悔しいけど格好良かった。



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