「お願いだから教室に迎えに来るのはやめてもらえませんか」
放課後、副会長がこうして迎えに来ることが久しぶりに感じる。俺は講堂でこの人を見ているけど、実際に会った訳ではない。
ただこの人があまりに頻繁に来ていたくせに、あの講堂での実戦授業以来俺のところにぱったりと来なくなったから、久しぶりに錯覚しているだけだ。

いつものように、教室まで俺のことを呼び有無を言わさず連れていかれる。
どうせ実戦授業のために行動を共にするならば、目立つようなやり方ではなくさり気なく呼び出してほしい。

文句を言うと、副会長はいつものごとくキラキラを振りまいてこちらを向く。
「こうでもしないと、シキ君逃げちゃうでしょ?」
「…逃げませんよ。実戦授業のペアがあなたなんですから」

鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした副会長を見て、怯む。え、なんか変なことを言ったか?
「…知らないの?タクトと僕、勝った方が君とペアになるって」
わ、忘れてた…!頭の中が一気に曇り模様から嵐だ。大荒れだ。
「でも、君は俺の方が良いってことだよね」
ま、待て…!この腹黒副会長!勝手に俺の気持ちを語るんじゃない!嬉しそうに微笑む姿はまさに王子様そのものだ。周りからの評価は正しかったのだ。だとしても、俺にはそんなこと関係ないし、全く持って嬉しくない。

いや、待てよ。俺に残された選択肢は、コイツとペアを組んで親衛隊からの制裁を耐えるか、あのバ会長とペアを組んで新たな親衛隊からの制裁を受けるだ。

後者の場合、会長との接触をなるべく避けたい俺からしたら地獄そのものだし、親衛隊からの制裁が落ち着いてきたのに、自ら火に油を注ぐようなことになる。

これはこの男に全て任せてしまった方がいいのでは…!?
「オレ、アナタノホウガイイデス!」

実に嬉しそうに笑う副会長に、嫌な予感がする。そして、この予感が的中することになるとは、思わなかった。

次の日、新聞にはなっていなかったものの、会長と副会長の『愛の攻防』は、副会長が勝利したという噂が広まっていた。




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