事務所に着くと、山蛇が鬼を背負って待っていた。まあこれは比喩だが、俺にはしっかりと見えた。ニッコリと微笑みながらも、物凄く怒っているのがわかる。
「園崎、君にはこの仕事してもらうからね」
戻ってすぐ山蛇は園崎に書類の束を渡した。書類に目を通さなくても内容がわかったのか、園崎は心底嫌そうな顔をした。
 「…着替え持ってこ」と言ってすぐに事務所から出ていった。

 「さて、俊平君」
 今日もまたされてしまうのかと思うと思わず身構えてしまう。しかし、山蛇の次の言葉は予想していたものとは違った。
「お勉強会しようか」



 「はあ? お前こんなのもわかんねえの?」
 お勉強会しようと言ったのに、俺にスパルタ教育を施しているのは山蛇ではなく、玄だった。
「でも玄さん、こんなの学校じゃやんないっすよ!」
そう、玄に出される問題は高校生が解くレベルではない。テスト期間中の俺にとっては、性的なお勉強よりもこうして勉強出来る方が嬉しいが出される問題が問題だ。
 俺の通う一海高校は進学校だ。学習のレベルも県内ではトップレベルでそこそこの問題がテストにはでる。それでも今までバイトしながらでもどうにかなっているし、授業を聞いていれば成績に関して悩んだことはなかった。
「はあ? こんなん常識だろ?」
「玄、少しは加減しなさい。日本の高校は海外の学習状況とはまた話が違うのだから。それに彼が通う高校は結構高いレベルのはずだし、彼が悪いわけじゃないさ」
山蛇のフォローにもなっていないフォローにムッとする。別に習っていないだけで、やればできるし。
「俊平君も、君は高校での成績は優秀と聞いてるよ。玄はね、こんなんでも一応海外の有名大学をでてるんだよ、そうだよね? 玄」
山蛇に褒められて少し照れたように「…親に言われたんで」と答える玄。
 山蛇はあの蛇のような目を細めて笑顔を作り、俺に向けて言う。
「俊平君は高校の学習内容には大分余裕があるんだろう? きっと玄の言う事を聞いておいて損は無いと思うよ」
「……はい」
大人にそう言われては俺は頷くしかなかった。「できない子」と思われたくない。

 俺の尻穴を狙うクソみたいな大人のくせに、勉強はしっかりやっておけという山蛇に増々わけがわからなくなってきた。
 山蛇の目的はなんなのだろうか、俺にはさっぱりわからない。

「いてっ」
玄に問題集の固いところで頭を叩かれた。待って、結構痛かった。頭割れてない?コレ。大丈夫?
「オラ、俺っちがこってり勉強みてやるから、覚悟しておけよ〜?」

 この後、勉強は嫌いではないのに、もう二度としたくないと思う程勉強させられた。


戻る / 次へ
top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -