山蛇は再びソファに座り直した。そして珍妙なことに、その長い足の間に俺が収まっている。震える指先でジジジとファスナーを下げていく。その様子を楽しむよう見つめる視線が俺を焦がしていく。視線が熱くてたまらない。逃げ出してしまいたかった。
 でも、もしここで俺が逃げだしたら。家族同然の子供たちの姿が脳裏に過り、俺は固く瞼を閉じる。ここまで来たら、しゃぶっていかせて終わりだ。さっさと終わらせてやろう。

 男のものをしゃぶるなんてしたことがないことを俺はスッカリ忘れていた。同じ男なのだから、まあ簡単だろう、なんて思っていたのだ。

「ホラ、早く勃たせないと終わらないよ」
別に、君の大好きな園長にこんなところ見せてもいいならいいけど、と続けた山蛇に俺は自分の身体から血の毛が引いていく音を聞いた。
 そうだ、忘れていた。緑茶を淹れてくると言った園長が帰ってくるのは時間の問題だ。なんならもう帰ってきてもおかしくないはず。こんな姿を見られるなんて、嫌だ。

 萎えた状態のモノに襲る襲る舌で触れる。山蛇の舌映えが金髪なことに気付き、視線を上げて山蛇の頭髪をチラリと見ると先程と変わらず綺麗な黒髪だった。もしかしたら、地毛は金髪なのかもしれない、とどうでもいいことを考えて気を逸らせた。

「ふふ、その上目遣い、いいね」
「ふっ…るせ、」

 山蛇は俺の頭を撫でるように手を這わせる。それは逃がさないようにするための保険にしか思えないけれど。その手つきは優しかった。

「そう、いいね。口に唾液をたっぷり溜めて。舌全体で竿を舐めるんだよ、ッ…ああ、いいね。どうやらこっちも優秀なんだね、俊平くん。覚えが早くて嬉しいよ」

 山蛇の声はとても優しく、甘い毒のような響きだ。褒められると嬉しいと感じてしまう。萎えた状態でも既にデカかったものが勃起していく。咥え込めるような大きさではないのに、亀頭を思い切って咥える。頭を撫でる手が頬へと下がり、褒められたような気分になって山蛇の顔を見上げるとその目がしっかり笑っていた。
 山蛇の笑みは綺麗だった。

 ぴちゃ…ぴちゃ…と部屋に広がる水音が羞恥心を掻き立てる。鼻で息をしているのに、どんどん息は荒くなり、耳まで顔中に熱が集まっているのがわかる。
 客観的な位置から見た己の姿を想像すると余計に恥ずかしくなり、胸が苦しくなった。

「んーちょっと苦しいと思うけど、我慢してね」
「んッぐ!?ふぐッ、ク、ン”ッ!!」

 焦れたような表情をした山蛇が俺の頭を両手で押さえつけると、腰を思い切り振ってきた。苦しい、苦しい、喉を突かれて痛かった。喉を突かれる度に嘔吐き、喉が締まるせいで余計に苦痛だ。

「俊平くん、喉開かないと吐いちゃうよ。嘔吐物で窒息死しちゃうかも」
 喉開くってなんだよ…!わからないのに、やらなければ死ぬかも言われれば必死だ。舌を喉の方にぐっと下げるように喉を開くと更に山蛇が入り込んでくる。
 吐いたらさすがに死ぬまでイラマさせんじゃねえよ、と文句はあるのに、息をすることと吐かないようにすることに必死で生理的な涙を拭うことすらできない。

「ふぐッ…ッ…グッ、ガ、あ”…」
 縋りつくように山蛇の高そうなスーツを握りしめる。きっと山蛇にとってはどうでもいいかもしれないが、少しでも皺くちゃにしてやろうと強く強く握りしまるが、山蛇は何も言わない。

 早く、終われ。早く。早く終われ!と願っているとフッと息が楽になったと同時に顔に生ぬるい液体がかかる。俺の涙ではない。

「あ、ごめん。制服にかかちゃったね」
山蛇がちっとも申し訳なそうに思ってないような顔で謝ってきた。自分が着ている制服には白い液体がかかっている。
 俺はイラマチオをさせられたことよりも、このクソ野郎を殴れていないことよりも、もっと大事なことに腹が立った。

「だーーーッ!なんてことしてくれてんだアンタ!!明日も学校あるんですけど!?これどうやって染み抜きすんだよーーーッ!!」

 俺は廊下でチビ達に出会わないこと願いながら、洗面所にダッシュをする。急いで来ていた制服を脱いで、洗面所でゴシゴシとついた精液を落としていく。必死に俺が洗濯をしようとしている時に、置いてかれた山蛇が爆笑していたことなど知りたくなかった。


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