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ちょっぴり成長連載主とマルコ

2010/06/26 00:22

「マルコー」

間延びした、けれど、どこか楽しそうなチビ助の声に、おれは振り返った。

「なんだい?」

「みてみてー」

そう言ってチビ助はニッと笑った。
よく見慣れたはずのその笑顔に違和感を感じて、おれは身を屈めてチビ助の顔に少し顔を近づけた。

「ん?」

前歯が一本、無くなっていた。

「ぬけたー」

「ああ、やっとかい」

そういえば、数日前からグラグラして気持ち悪いと騒いでいたっけか。
それがやっと抜けてスッキリしたのか、嬉しそうに笑うチビ助の頭をぐしぐしと撫でる。

「よかったねい。おめでとう」

「うんー。すっきりー」

前歯が一本無くて、なんだか間抜けなその笑顔がやたらと愛おしく感じるのはなんでだろう。そして、ほんの少し、ほんの少しだけ寂しく思うのはなんでだろうな。

「ふへっ。もうすぐ大人の歯だねー」

「…ああ、そうだねい」

チビ助の言葉に、この微妙な気持ちの答えを見た気がする。

着々と成長していく、それでもまだ幼い子供を抱き上げる。
ゆっくり、大きくなってくれ。
そんな、らしくない思いをこめた手の平で、そっと頭を撫でた。

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