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連載主とマルコとサッチ

2010/05/18 16:39

うろこ雲が空に漂う空を、快調に進んでいく。
空との境が分からなくなるほど青々とした海の中に、白い点のようなものを見つけて、おれは思わずほぅ、と息を吐いた。白い点、それは約一日ぶりに見る我が家だった。


「よっ…」

甲板に降り立つと、デッキブラシで甲板をみがいていた奴らが手を止めて笑顔で手を振ってきた。

「マルコ隊長!おかえりなせェ!」

「おう」

それに軽く手を上げて答えて、とりあえず風呂にでも入るか、と歩きだした。
オヤジに頼まれて傘下の船までひとっ飛びしてきた身体は、それなりに疲労を感じていた。サッパリして早いところベッドに転がりたい。

「さっち!さっち!ぴーす!」

「イェーイ!ピース!」

「…一体なんだい」

聞こえてきたのは、楽しそうに弾んだチビ助の声と、同じく楽しそうに年甲斐もなく弾んだサッチの声。
またなにかアホなことをしてるんだろうと思うのに、自然と声のする方に足を向けてしまうのはなんでだろうなあ。

「なァにしてんだい」

「あ!まるこー!おかえりなさい」

「ああ。ただいま。で、なにしてんだい?」

「しゃしん!とってたんだよー」

そう言って笑うチビ助の手には、言葉の通り小振りなカメラが握られている。

「マルコも撮ってもらえよ。チビ、うまいんだぜ」

「へぇ」

「えへへー。まるこまるこ、ぴーす」

満面の笑みでカメラを向けるチビ助に負けて、苦笑まじりでピースをする。

「…海賊が、ピースねい」

「そう捻くれんなって!ほら!空高くピース!ってな」

ニッと笑ったサッチに無理矢理肩を組まれた。サッチの手もおれと同じようにピースを作って、空に伸ばしている。
しかたない、と笑って、おれも空に伸ばした。

「くくっ。写真撮られるなんざ、手配書の写真いらいだよい」

「ぷっ!違いねえ!」

「とるよー」

カシャッとシャッターの下りる音。

ジーッと妙な音がして、カメラの下から紙が出てきた。なるほど、ポラロイドカメラか。珍しいもんなのに、一体だれがチビ助に持たせたんだか。まあ、予想はつくけど。

「どれどれー?」

興味津々といった感じで、サッチはチビ助の手元を覗き込んだ。おれも、なんだかんだ言いはしたが、撮られたんだからどんなものか気になる。
サッチのように覗き込みはしないが、少し首を伸ばして写真が浮き上がるのを待つ。

「…」

「…」

「…」

「…ブハッ!」

「あ!わうなよー!さっちー」

「…これは、ねい…。…くくっ」

「まるこまでー」

浮き上がった写真には、うろこ雲が広がる空と、おれたちのピース、そして、髪の毛だけが写っていた。


「タイトルはあれだな」

「なにー?」

「うろこ雲とピースとリーゼントと、バナ…ッブ!」

「うるせえよい」





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