Dream | ナノ

Dream

ColdStar

プリムカフェ

第一部隊のリーダーともなれば、なんだかんだと用事があるものらしい。
今日の藍音は先般新しく確認されたアラガミの対策会議に呼ばれている上、どうやらアリサになにやら相談事を持ちかけられたらしくそれが全部終わったら俺の部屋に来るとさっきメールが来ていたのを確認している。
それにしても遅すぎる気がしないでもない。さっきエントランスに行ったら、一緒に対策会議に出ているはずのタツミの野郎がいたから会議はもうとっくに終わっているんだろう。
それならアリサに捕まっていると考えるのが自然だが、それにしては長すぎる。いい加減様子を見に行った方がいいかと考えてベッドから身体を起こしたところで――ノックの音がして、扉が開いた。

「遅かったな、藍音……っ、お前なんだその恰好!」
「うるさい」

腕組みをしたまま俺ではなく部屋にかけられた銃撃ターゲットの方へ視線を送っている藍音の顔はどこか不機嫌そうにも見える。
こいつに愛想がない――俺に言われたくもないだろうが――のはいつものこととして、それにしても着ているものと表情の釣り合いが取れていないにも程がある。

普段の藍音は割と男っぽい恰好を好んでいる。動きやすいのがいいと上半身は身体にぴったりした服やフェンリルの制服を着ていることが多いし下半身はウェザードだかなんだったか、それを気に入って穿いている。
俺とふたりで過ごす時間が増えてからはたまにスカートを穿くようになっちゃいたがそれでも割と落ち着いたデザインのものや、やはり動きやすさを重視した物が多かった。
だが今日の藍音はどうした風の吹き回しか、フリルをあしらった黒いワンピースにエプロンをつけている。以前コウタに無理やり見させられたバガラリーに出てきた喫茶店にこんな店員がいたな、とふと思い出した――あの店員は、今の藍音ほど憮然としちゃいなかったが。

「似合わないのは分かっている……ただ、アリサが」
「そう言えばアリサから相談を持ちかけられたんだったな」

相槌は打ってみたもののどんな相談をされたら藍音がこんな恰好で俺の部屋に来ることになるのかはさっぱり分からん。
流石に表情に出てたんだろう、藍音はいつも以上に低いトーンでぽそぽそと話を続けた。

「……もうすぐサクヤさんの誕生日らしくて、サプライズでパーティをやろうと思っていると」
「そう言えばコウタがそんなことを言っていたな。俺は出るつもりはないが」
「で、そのパーティで……せっかくだから仮装でもしないかと、アリサとコウタとの間で話が決まったらしい。その結果、私に割り当てられた衣装が……」
「それだった、と」

何度目だか分からないため息をついて藍音は大きく頷く。

「部下が盛り上がっているのに水をさすような真似はリーダーとしてもしたくないから着たはいいんだがあまりの似合わなさに自分でも嫌気がさしてたところだ」
「そんなところでまでリンドウの方針を忠実に守らなくていい……それにそんなに嫌だったんならここに来る前に着替えてくればよかっただろ」
「それは……その、着替えるのが面倒だった。それにソーマをこれ以上待たせるのも悪いなと思ったし」

……全く。
不機嫌そうな表情は変わらなくても、その声色がほんの僅か緩んだことに気付かないほど頭は悪くないつもりだ。
藍音が自分と一緒に過ごしたいと思っているのと同じように、俺も――確かめるように身体を起こして、藍音の髪に触れた。

「しかし、面倒だったって……お前、そんなに面倒くさがりだったか」
「面倒くさがりだったらソーマを好きになったりしてないと思うが」
「違いないな」

笑いながら藍音の身体を引き寄せ、背中から抱きしめた。いつもと違う手触りの服、いつもと違う雰囲気の藍音。だが腕の中にいる藍音はいつもと何も変わらない。

「なぁ、藍音」
「なんだ」
「着替えるのが面倒だからそのまま来たってんなら……脱いじまえばいい」

呆れたように藍音がついたため息の意味はさっきまでとは違う。視線は相変わらず逸らしたままだったが、ぽつりと藍音が「はじめからそのつもりだった」と呟いたのを聞き逃すわけがなかった。

← Return 



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -