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ColdStar

隊長と死神

「それにしても、クルトはさすが隊長だな。俺も隊長やってたけどここまでしっかりした作戦立てたことないぞ。俺がした命令なんてたった3つだからな。死ぬな、死にそうになったら逃げろ、そんで隠れろ。運がよければ不意をついてぶっ殺せ……ってこれじゃ4つだな」
「……それで成り立つと言う事は、リンドウの部下は皆優秀だったんだな」

戦いの合間に少し手が空いた合間にクルトに話しかけると、彼はリンドウの言葉にしみじみとそんな事を呟いていた。

「まあ、優秀っちゃ優秀だな。ソーマとアリサ見てりゃ分かるだろ?……尤も、俺は一時的に隊を離れてた事もあるから、実際にあいつらを纏め上げたのは藍音……ここにはいない今の第一部隊隊長なんだけどな」
「ああ、あの……前に言っていた、『生きる事から逃げない』って言う命令をリンドウさんにしたって言う人?」

リエラの呟きに、リンドウはそうそうと答えながら頷いてみせる。
クルトとリエラにそのことを伝えたら随分と感心されたものだから、なんだか気まずくなって真実を明かしたのだった。自分がした命令ではなく、自分の後に隊長になった元部下から自分へ最初に下された命令だ、と。

「そう。普段は口癖みたいに眠い眠い言ってるくせにでっけえ声でな……俺の部下だった時は『どうすればソーマの心を開かせる事が出来るんでしょうか』なんて真顔で言ってたくせに、俺がいない間にソーマも含めて隊をうまいこと纏め上げて。大した奴だよ、あれは」
「ソーマとアリサは隊長には恵まれた、ってことだね。……クルトが隊長だった私のほうが恵まれてるかもしれないけど」
「おいリエラ……」

冗談めかしてくすくすと笑うリエラに、クルトは僅かに困ったような表情を浮かべてリンドウとリエラを交互に見ている。
その表情がおかしくて、リンドウも思わず声を上げて笑っていた。

「……昔のソーマは、出撃した作戦での生還率が異様に低かった事もあって『死神』なんて呼ばれてたんだ」

一通り笑った所で、リンドウがぽつりとそんな事を呟く。
その時に何故か……リエラの表情が僅かに変わった、ようにリンドウには感じられた。
だが、特に言葉を発するでもない彼女を視線だけで確かめるとリンドウは更に話を続ける。

「けど、そんなソーマに対してずっとお前は死神なんかじゃない、お前と一緒にいても死を招いたりしないって自分が証明するって執拗に言い続けたんだと。他にも色々あったらしいが、最終的にソーマが根負けておまけに惚れちまった、ってオチらしいな。俺はそのときアナグラにいなかったから、これは後からうちの嫁さんに聞いた話だけど」
「……ソーマ、嬉しかっただろうな……自分を皆と同じ、「人間」なんだって認めてくれるひとが近くにいて」

しみじみと呟いて、リエラは今いる場所から少し離れた場所で戦っているソーマの方に視線を送る。そのリエラの表情の意味が今ひとつ飲み込めず、リンドウは首を捻りながらクルトの方を見遣る。
クルトも何かを思うように、ソーマを……そして、自分の隣にいるリエラを交互に見遣り、そしてぽつりと付け加えていた。

「共に戦った仲間が多数死んでいき、それが理由で死神と呼ばれる……リエラと同じだ」
「……お前にもそんな過去があったってのか」

聞かされた言葉に、リンドウは驚きのあまりに目を見開いた。
リエラは僅かに目を伏せ……かすかに頷いて、視線を伏せたまま言葉を繋いでいく。

「でも、クルトのお陰で私はネームレスでは孤立しなくて済んだ……クルトには感謝してるの、私も。だからきっとソーマも……その隊長さんには感謝してるんじゃないかな、なんてね」

呟いて一度目を閉じたリエラは笑顔を浮かべながらリンドウの方へと向き直る。

「さっきの、訂正していい?」
「ん?」
「リンドウさんの後を引き継いだって言う今の隊長さん、きっと……クルトと同じくらい素敵な人なんだろうな」
「ああ、自慢の新入りだ……っと、もう新入りじゃねえか」

豪快に笑い飛ばし、リンドウは神機を手にする。
手が空いていたが、ふと見遣れば近くに機械兵たちが迫ってきていた。

「さて、さっさと事件片付けて元いた場所に帰るとしようぜ。ソーマの奴も多分藍音に会えなくて寂しがってるだろうしな」

冗談めかした呟きはソーマには聞こえていないはずなのに、何故かその瞬間遠くからソーマに睨まれたような気がしたのはリンドウの気のせいだったのだろうか……いや、気のせいと言う事にしておこう。
武器を構えたクルトとリエラの一歩後ろに控え、リンドウはそんな事をぼんやりと考えていた。

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