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ColdStar

コンビネーション

フェンリル広報部は財源確保の為にフェンリルの活動を様々に喧伝している。
たとえばアラガミと戦うのに生中継を入れたりだとか――あれは戦っている私たちからすれば気が散る事この上ないのだが、本部の意向とあっては逆らえないのが辛い所だ。
そして、これも財源確保の一環としてアラガミとの戦いを収めた記録写真集が発行された、らしい。
アラガミの神々しい姿が評判らしくそこそこの売れ行きは出たそうだ……好評の理由を聞くとなんとも複雑ではあるが。

そして。

「……そんで1冊貰ってきた、と」
「新種のアラガミとの戦闘記録となるとどうしても、前線に立っている第一部隊の写真が多くなるからな。一度確認してくださいってことで渡されたんだ」

ソファにソーマと並んで座ったまま、写真集のページをおもむろに開く。記録写真集というだけあって、主体となっているのはアラガミの姿が多い。
しかし一枚目の写真から、前衛としてヴァジュラに切り込んでいった私……の、腕と神機だけははっきり写っているのが見て取れた。

「完全に俺たち添え物じゃねえか」
「そうは言うがこっちの写真にはほら、コウタとアリサが写ってる」

私の腕だけが写りこんでいた写真の隣のページの写真には、シユウの背中を前面に写しその向こう側でシユウに向けて銃を構えるコウタとアリサの姿がはっきりと写されていた。
更にページを捲ると、今度はハガンコンゴウの腕を斬撃だけで崩壊させている私の背中が写っていたり、かと思えばその隣のページの写真にはテスカトリポカの前面装甲を叩き潰したソーマの姿があったりする。残念ながらフードに覆われていて顔は確認できなかったが。
その次のページには、グボロ・グボロの背ビレに向けて狙いを定めるサクヤさんの姿。更に次のページには連携して攻撃を繰り出す第三部隊の姿もある……
最初の1枚は腕だけだったが、ちらほらと私やソーマの姿が確認できる写真もあった。

「にしても、いつ撮られたのか良く分からない写真も多いな」
「遠くから望遠レンズを使って撮ったものが多いとは聞いている」

そんな話をしながら再びページを捲る……そこに写っていたのは金色に輝く荷電製のボルグ・カムラン。
そして……地面に突き刺さった針に向けてバスターブレードを振るうソーマと、回転斬りで尾を狙う私の姿、だった。
遠くからレーザーと弾丸が淡い光を発しながらボルグ・カムランに向けて飛んでいっている――おそらく、サクヤさんとコウタだろう。
写真に写る私とソーマは互いにアイコンタクトを交わしながら、崩壊させるのを狙って自分の得物が得意とする場所に攻撃を仕掛けている――ソーマの神機が光を放っているのを考えれば連結解放されているのも明らかだ。
この写真が撮られたのがいつなのかははっきりとは思い出せないが、確かにこんな事があったのは間違いない。

「……へえ」

私がその写真に目を留めたのと同じように、ソーマもそこに目を引かれたらしい。私がページを捲ろうとする手首を掴んで止めさせ、その写真にじっと見入っていた。

「……これ、解説文読んでみろ」

ソーマの視線の先、写真の下辺りに解説文が残されている。
荷電性ボルグ・カムランについての解説の後、きっとソーマが目を留めたのはこれなのだろうと言う言葉を視線だけで追いかける。

『なおこのアラガミと戦っているのはフェンリル極東支部第一部隊隊長櫻庭藍音中尉、及び同じく第一部隊所属ソーマ・シックザール少尉である。
 櫻庭中尉は極東支部に初めて配属された新型神機使いであり、本人の実力もさることながらこの写真での戦いのように周囲の旧型神機使いとのコンビネーションも高く評価されている』

「……褒められると悪い気がしない」
「俺も藍音が褒められるのは悪い気はしないし、それを俺と一緒の戦いの場面で言われたなら余計に……だ」

僅かに笑みを浮かべたソーマは写真集へと手を伸ばし、写真に写ったボルグ・カムランの尾をなぞるように指を動かす。尾を切ろうとしている私の神機から、針に叩きつけられているソーマの神機まで。

「……こうやって見てると」
「ん?」
「お前は公私共に俺のパートナーなんだなって改めて思った」

写真に触れていた手が伸ばされ、今度は私の肩を引き寄せる。

「色々考えて……お前でよかった」
「今更、何を」
「そうだな、今更だった」

こうして共に在ること、死線を潜り抜ける毎日を共に戦える事。その相手が互いでよかったなんて……きっと、今に始まった話じゃない。
それを確かめ合うように視線を合わせ、私とソーマは軽くだけ唇を触れ合わせていた。

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