Dream | ナノ

Dream

ColdStar

call the name

「それじゃ藍音、今日はお疲れ様。助かったわ」
「こっちこそ。ジーナと同行すると色々勉強になるから助かってる」

今日は防衛班の男性陣が揃って出払っているらしく、また第一部隊には緊急の任務などもないということでジーナが受注したミッションに私とアリサが同行していた。
アナグラに戻った所でそんな話をしていると、アリサが不意に不思議そうに首を傾げる。

「……私、今思ったんですけど」
「何を?」
「ジーナさんのことは呼び捨てにするんですね、藍音さん」

言われた私とジーナは揃って何の事か分からずに顔を見合わせるが、当然私達2人が顔を見合わせたところでその答えがわかるわけはない。
唯一答えを知っているアリサにそれがどうした、と聞き返す前にアリサの話はまた進み始めていた。

「私の記憶が間違ってなければ……ジーナさんって、サクヤさんより年上でした、よね」
「ああ、そうね。私は22歳……サクヤは21歳だったわね確か」
「でも、藍音さんはサクヤさんはさん付けで呼ぶし敬語で話すのに、ジーナさんには敬語を使わないし呼び捨てでしょう?なんだか面白いな、と思って」

……言われてみればそうだ。
どうしてこうなったのか、自分でもあまり思い出せないが……首を捻っていると、ジーナが小さくくすくすと笑う。

「他人行儀なのは好きじゃないから呼び捨てにして、って私が言ったの」
「あ……そういえばそうだった」
「それに、藍音は入隊した時からサクヤに色々と教わってたんでしょう?サクヤが特別扱いでも何も不思議はないと思うわ」

僅かに目を細めたジーナは私とアリサを交互に見ながらまだ淡々と話を進めていく。
彼女のこの、淡々とした性格は嫌いじゃない。――そんなジーナも怒らせると怖い、と言っていたのはカレルだったかシュンだったか。

「それに私から言わせれば、貴女も相当不思議よアリサ」
「え……そうですか?」
「藍音はさん付けだけどソーマのことは呼び捨てにしてるでしょう。藍音とソーマは確か同い年だったはずよね?それに、神機使いとしてのキャリアはソーマの方が長い」

ジーナの言葉に、私とアリサは互いに顔を見合わせる……こちらも確かに、言われてみればその通りだ。

「えーと、それは……私にとっては、藍音さんはとてもお世話になった人だし……ソーマにお世話になってないって言ってるわけじゃないんですけど、えーと……ああ、藍音さんは隊長だし……あれ、でもコウタは藍音さんを呼び捨てにしてて、いやでもコウタは藍音さんとは同期で……でもソーマも藍音さんも私にとっては先輩だし……あれ?」

ジーナに指摘されたことを考えているうちに自分でも分からなくなったのかアリサは腕を組んでぶつぶつと何かを言いながら考え込んでいる。
考え込んでいるアリサの様子がおかしくて、私とジーナは思わず顔を見合わせて小さく笑みを交わしあった。

「もう、藍音さんもジーナさんも笑わないでくださいよ」
「人同士の関係なんてそんなものよ。区別の付け方なんて自分にしか分からないもの、相手がそれを気にしてなければそれでいいの」

僅かに目を細めたままのジーナの言葉に、私もアリサも納得したように大きく頷いていた。
なるほど、確かに気安く話してはいるもののこうして見ればジーナは私よりも遥かに大人だと思える。
確かに、年齢どころか人種もバラバラの人間ばかりが集まるアナグラにいると他人のことに頓着しなくなっては行くものだが、改めてそんな事をしみじみと考えさせられた。

「私からしても今更サクヤさんを呼び捨てにするのもジーナをさん付けで呼ぶのも違和感があるからな」
「違和感。確かにそうですね、今更藍音さんを呼び捨てには出来ないです私」
「いずれにせよ、こうして仲良くやっていけてるんだからいいと思うわ。私も、あなたたちと一緒にいるのが楽しいもの」

口の端を僅かに上げたジーナの言葉に、私とアリサは大きく頷く。
細かい事は気にしなくても、このアナグラでの暮らしは……戦いが続く厳しい毎日ではあるけれどそう悪いものじゃない。なんとなく、改めてそんな事を考えていた。

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