Dream | ナノ

Dream

ColdStar

Katana

ターミナルから閲覧できる、アラガミ発生以前の時代の映像は神機使い達にとっては束の間の娯楽となっている。
俺は勿論そんなものに興味がないから視ることなんてなかったが、たまに藍音の部屋にやってくると藍音が熱心になにやら見ているので付き合って一緒に視ることも最近はままある。
藍音の持つ神機に組み込まれた片刃の細い剣……昔の極東地域辺りで「カタナ」とか呼ばれていたものを模したものだと俺に教えてくれたのも藍音だったが、その「カタナ」を握って変な髪形の男たちが斬り合ってる映像を藍音が食い入るように見ていると一体何が楽しいのかと思ったりはする。

「シオに見せたら喜んでくれたんだが」
「ああ、その話も聞いたことがある。皆美味そうとか言ってやがった」

シオらしい、と小さく笑ってから藍音は再びモニターへと視線を移す。

「刀には浪漫があるだろう。あの細い刀身で、殺傷能力の高さだけじゃなく繊細な美しさを秘めている。匠の職人の手で打たれた刀は芸術品としての評価も高いんだ……刀を真似たブレードが作れると知ったときは本当に嬉しかった、私も刀を持って戦えるんだと」

藍音がこうやって饒舌にぺらぺら喋る時は大抵、口調こそいつものままだが相当に気分が高揚している。
それに気付いたのはこんな調子で何度か藍音に饒舌に怒られたときなのだが……それはさておくとして。

「しかし、俺には分からんな。こんな細い剣で戦おうって気持ちが」
「ソーマはバスターブレードを扱えるからそう思うんだろう?私は駄目だ、何度か使ってみた事があるが空中で思うように動けなかった」

神機を片手に飛び上がって空中で華麗に舞うように刃を振るってアラガミをぶった斬る藍音らしい言葉に思わず笑みが漏れた。
同じ強襲兵とは言え戦い方は随分と違うな、なんて話は俺たちの間ではもう何度も繰り返されてきている。戦い方の違いが、選んだ武器の違いにもなる……
力任せに叩き斬る俺と、細身の長剣を片手に空を舞う藍音。目を閉じれば思い出せるほどに何度も見てきた藍音の戦う姿を思い出し……ふと思い浮かんだことを、特に考えるでもなくそのまま口にしていた。

「ただ、あの……カタナだったか、あれは藍音には良く似合ってる」
「そうか」

俺の呟きに、藍音は嬉しそうに口の端を上げた。
藍音はどうやらこのカタナってやつが随分と気に入っているらしいことは先ほどの饒舌ぶりで分かる。似合うと言われて喜ぶのは当然かも知れない。
だが、俺がそう言ったのは藍音を喜ばせるのが目的だったわけではなく……再びモニターに視線を向けた藍音の身体を、背中から抱き寄せてやった。
そのまま……腹回りを隠さない服を好んで着る藍音の、しっかりとくびれた細い腰を指先で撫でる。

「くすぐったい」
「この細い身体で、よくあんなでかいアラガミどもと渡り合ってるな」

くびれた腰から引き締まった腹の辺りの肌をなぞり、そのまま掌を上へと運んだ。やがて親指にぶつかるのは柔らかな膨らみ。
そう言えば第三部隊の連中が、藍音も含めて第一部隊の女どもは出るところは出てて皆スタイルがいいと噂しあっていたことがあったな、なんてふと思い出した。

「……後から」
「別に今盛ってるつもりはない」

胸に触れたことで確かに余計なことを考えはしたが……それはまあ、後からでいいだろう。
先ほど思い出したことを確かめるようにもう一度しっかりと藍音の身体を背後から抱きしめていた。

「自分で言ってたな、カタナって言うのは細い刀身で高い殺傷能力と美しさを併せ持ってる、って」
「ああ」

 ――まるで……藍音みたいだ。

……なんだか気障ったらしくも思えるその言葉を口にすることはどうしても出来なかった、が。
特別美人だって訳じゃないが、凛と前を向き真っ直ぐに生きる藍音は……華奢な身体に強さと美しさを秘めている、カタナって奴によく似ていると思えてならなかった。
元々は藍音がやたら気に入ってるから話を聞いてただけだったが、そんなことを思いついてしまうと急にそのカタナのことが気になり始めてきたくらいには。

「そのカタナってやつのこと……今度詳しく教えてくれるか」
「私が刀のことについて話し始めたら長いが覚悟はできてるか?」

藍音が自分でそう言うんだからきっと相当長話になるんだろう。
だが別にそれが嫌だとは思わない……そう考えたら、俺も随分変わったもんだなんて思えて、自然と俺も笑みを浮かべていた。

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