Dream | ナノ

Dream

ColdStar

テルオミ→怜那

--2015.01.15追加分--

++届かない本当
「今日もありがと、テル」
ミッションを終えた怜那の笑顔に、テルオミは曖昧な笑みを浮かべて会釈を返す。
こうやって、「仲間として」の自分に向けられる笑顔は何処か作られたもののように感じられて――
「本当の笑顔には届かない、か」
立ち去った怜那に向けられたテルオミの笑顔はとても自嘲的だった。

++大人しく降参して
手首を押し付け怜那の身体を壁に縫い止める。
瞳はいつもの緑の裏に強気な色を湛えていた。
「大人しく降参してくれたらここまでするつもりはなかったんですよ」
「あたしがそう簡単に忘れるとでも?」
知っている、それでも……反論の言葉を押し込めるようにテルオミは怜那の身体を力一杯抱きしめていた。

++罠だったとしても
時々怜那が見せる悲しそうな表情の意味を知らないわけではない。
ただ、だからと言って怜那を諦めることもあの悲しそうな表情を自分が忘れさせることも出来ない。
そう考えて、思っていた以上に怜那に惹かれている自分に気づく。
「まるで罠だ」
勿論そうだとしても逃げ出すつもりなんてテルオミにはない。

++カーテンコール
任務が終わり、帰投の準備が整った後もテルオミは怜那に言葉をかけ続ける。
「今日はいつもより動きが洗練されてましたね」
「それより、任務は終わったんだからテルもゆっくりしたら?」
「いえ、これはカーテンコールのようなものですから」
オペレーションに紛れて声をかけられる特権を手放す気はない。

++距離のつかみ方
思い返せば最初に距離の掴み方を失敗しているのだ。
知らなかったとはいえ、怜那の傷を抱えたままの心に土足で踏み込んで怜那を傷つけた。
その一件がなかったらもしかしたら、なんてことを思って――テルオミは視線を動かす。
「それでもああはなれない……か」
怜那と何事か話す兄の背中が大きく見えた。

++だいじなもの
怜那が大切にしている天使の羽のバッジが何の意味を持つのかテルオミは知らない――一度聞いたが答えはなかった。
だが、その時の怜那の横顔を見れば大体の意味は察しがつこうというもの。
「……私のことをそのくらい、大事だと思ってくれる日は来るんですか?」
怜那はきっと、首を横に振るだろうけど。

++よみがえる記憶
隣に並んで歩く怜那の手を、自然な動きでそっと握る。
その瞬間に怜那が僅かに身をこわばらせ、テルオミの方を見た。
「どうしたんです、怜那さん」
「……あったかいなあ、って」
その言葉だけなら手応えを感じるにふさわしかった、が。
「ロミ男もこんな感じだったわ」
続いた言葉がテルオミを絶望させた。

++帰りたくない
「今日はご馳走様」
「いえ、大したものではありませんし」
ミッションを終えた怜那を食事に誘ってみれば特に何を言うでもなく同行してくれる。
少なくとも嫌われてはいないがそれ以上踏み込むことはテルオミには出来なかった。
――帰りたくないし、帰したくない。それを口にすることは決して許されない。

++ときめきは誰のせい
モニター越しに見ている、戦う怜那の姿。
鍛えられた神機と、しなやかな動き。戦いながらも仲間を気遣うことを忘れない――
「テルオミさん、ぼーっとしてちゃダメですよ」
ウララの指摘に我に返り胸を抑えた。
仕事を忘れてしまうほどのときめきはモニターの向こうにいる人のせいだと口にはできないまま。

++言葉をなくして
雄弁な彼女が言葉をなくしてしまう瞬間を見かけてしまうことがある。
押し黙った時の、泣きだしそうな表情は戦っている彼女の姿からは想像もつかないようなもので。
「……どうして私にはあんな顔をさせることができないんでしょうね」
会ったこともない、彼女から言葉を奪う存在が恨めしくも思えてくる。

++諦めてしまえば楽になれるのに
たまには兄弟で酒を飲み交わそう、と言うことになっても出てくる話題は結局ひとつ。
「レイは今でもロミオしか見ちゃいないんだよ。ほんと、諦めれば楽になれるのに」
「好きになった人を簡単に諦められるなら兄貴はとっくに怜那さんを手放してるだろ」
テルオミの反論に、今日はハルオミが答えを失った。

++瞬間、求めたもの
衝動に任せて怜那を抱きしめた。
何も分かっていないまま、彼女を傷つけてしまったけれど……あの瞬間のことを後悔したことは一度もない。
あの瞬間にテルオミが求めていたものは――確かに怜那だった。
「だから、怜那さんを諦めるつもりなんてない」
己に言い聞かせるように呟いてテルオミは目を閉じた。

--2014.07.03追加分--

++困ってる顔がすき
始めは確かに怜那の悲しそうな表情の意味を誤解していた。
だがその誤解が解けてもなお、彼女を目で追う癖は治りそうにない。
「どうしてもっと早く出会えなかったんでしょうね?」
その問いかけの意味を分かって困った顔を見せる……そんな顔まで好きだと思ってしまうテルオミは相当に重症かもしれない。


++期待したのに
テルオミのオペレーションも功を奏したのか、困難なミッションにも関わらず大きな被害を出すこともなくアナグラに戻ってきた神機使い達を出迎える。
「テル、今日は結構いい感じだったぞ」
「……兄貴じゃなくて怜那さんに褒めて欲しかった」
勝手な期待は届くことなく、怜那はラウンジへと消えて行った。

++それだけは言わないで
仲間たちとロミオの思い出を話している時の、寂しそうでそれでもとても楽しそうな表情がテルオミの目を引いた。
「で、お前はレイにあんな顔させられるのか?」
「それだけは言わないでほしかった」
美化されていく人間に勝てるわけがないことくらいは分かっていてもハルオミに噛みつくことしかできない。

++幸せにするよ
時々浮かべる怜那の悲しそうな表情を少しでも和らげたい。
その一心からテルオミは必死で語りかけた。
「幸せにします。怜那さんを、悲しませたりしない」
「……駄目よ。テルじゃ駄目なの」
自分がどんなに言葉を、心を尽くしても……もうこの世にはいない人に囚われた怜那を振り向かせることはできない。

++もっと知りたい
最近アナグラにやって来たばかりのテルオミは怜那の事を何も知らない。
「……それを理由に諦めるつもりはないけど」
だが彼女を知らない自分には彼女に恋をする資格がない気がして。
せめて怜那のことをもっと知りたい。戦う姿をモニターで眺めながら、戦いの中で見せる癖や表情を記憶に刻み込んでゆく。

++実はひとつだけ秘密が
テルオミから向けられるストレートな好意に対して怜那が応えることはない、ただ仕事仲間としての関係。
「テルはそれで満足なのか?」
「ええ、なんとか乗り越えて行く為に……一つだけ秘密がありますから」
暴れ出しそうな恋心を抑える為に、想像の中だけで怜那を何度も抱いていることは誰にも言えない。

++婚前旅行
「旅行にでも行きませんか、怜那さん」
「藪から棒に何よ」
任務の合間にアナグラに戻った怜那にテルオミがかけた言葉はあまりにも唐突過ぎる。
「旅行なんて、その間にアラガミが出たらどうするのよ?」
「大丈夫ですよ、神機は私が整備します」
テルオミの言葉がどこまで本気か分からず怜那は黙り込んだ。

++理性がふっ飛ぶ
怜那が大変な難敵と戦い、ボロボロになって帰ってきた。
オペレーションしていたテルオミはなんとなくの罪悪感から怜那が休む医務室へと向かう。
……ベッドに眠る怜那の、無残に引き裂かれた衣服と隙間から覗く素肌と塞がりかけた傷跡――理性が吹っ飛びかけた事実から目を逸らして、医務室を後にした。

++待ってた
ラウンジで食事でも、と誘いをかけると怜那はあっさりとOKを出してくれた。
「正直意外でしたけどね」
「あら、食事くらい断るわけないじゃない」
当たり前のように返して来た怜那に嫌われているわけではないと確認する――こうして距離を縮めるチャンスをテルオミが待っていたことを、彼女は知らない。

++近いのに、遠い
「お帰りなさい」
アナグラに戻ってきた怜那に投げかけた言葉に、笑顔が返ってくる。
「今日はテルのおかげで随分やりやすかったわ」
「ありがとうございます。そう言ってもらえると私も頑張った甲斐がありますよ」
こうやって言葉を交し合う距離は近いのに――怜那との間には埋めがたい距離を感じていた。

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