不釣合いな願い事
珍しい光景に、あたしは思わず目を丸くした。
だって、あのグリーンがソファの上でぐっすり寝てるなんて。
普段休めと言っても聞かない彼がこんな風に熟睡してるなんて、稀有な話。 遊びに来て良かった、と思ってあたしは寝ているグリーンに近付いた。
本当によく寝てる。 明日は雨だわ、なんてちょっと笑ってから膝をついて彼の顔を近付いて見た。
本当、むかつくくらい非の打ち所が無い整った顔。睫毛だって長いし、今は解らないけど瞳もすごく綺麗なのよね。 すごく、綺麗。
そうやって思うと、あたしは彼に触れてはいけない気がしてきた。
容姿だけじゃない、心もすごく綺麗な彼とあたしなんかじゃ釣り合わないんじゃないかしら。
不安になってきて、思わず彼に伸ばしかけた手を一旦止めた。 触れたい、でもあたしなんかが触れてはいけないかも。
そう思いながらも、あたしは彼の髪にそっと触れてみた。
「…ごめん、なさい。」
何を謝ったのか、自分でもよく解らない。ただ、なんだかいけないことをしている気分になってしまっただけ。
髪に触れても起きる気配の無いグリーンに安心して、あたしはそっと顔を近付ける。
頬に口付けて、次に額に唇を落とす。 ほんの一瞬のことなのに、なんだかすごく長い時間に感じた。
何やってるの、あたし。なんて苦笑してグリーンから離れようとすると、手を引かれてバランスを崩してしまった。
「きゃっ…、……え?」
「…人の寝込みを襲うなんて、良い趣味だなブルー。」
「………!!」
グリーンの上に倒れてしまい、耳元でくすくす笑われた。 何よ、あんた起きてたの?
「…グリーンこそ、狸寝入りなんて良い趣味じゃない。」
「残念だが、さっき起きたばかりだ。…何をしてた?」
「…秘密。」
「……またお前は…。」
呆れながらもあたしを抱き締めてくれるグリーンの温かさが心地好い。 さっきまでの触れてはいけない、なんて考えを忘れてしまうくらい。
けれど、とそこであたしの能天気な思考に終止符が打たれる。
忘れたって、過去が変わる訳じゃない。忘れたって彼とあたしの差が埋まる訳じゃない。 あたしは、結局グリーンの優しさに甘えてばかり。救われてばかりだわ。
「…ブルー?」
「…え?」
「どうした…?」
あたしの様子がおかしかったらしく、グリーンは心配そうに声をかけてくれた。 何でもない、そう言おうとして体を少し起こして彼の視線に自分の視線を合わせようとすると、グリーンの頬にぽつ、と雫が落ちた。
あたし、何で泣いてるの。
そう思っても涙が止められなくて、あたしはただ声を殺して泣く。
「……泣いてもいい。俺の前で無理なんてするな。」
優しい言葉の後、目元にそっと口付けられた。
嬉しくて、情けなくて。 あたしはグリーンに抱きついて、気の済むまで涙を流させてもらった。
共に穢れてしまえたら
でも、それを望むには貴方は綺麗すぎるから
白石由様から頂きました! 甘いのも好きですがこういうシリアス系も大好きです。 緑青は大人なイメージがある所為か、個人的にはシリアスの方が描き易かったり。
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