頂き物 | ナノ

君の好きなもの


今日は天気が良い、絶好の散歩と釣り日和。
ワタルも来たことだし、僕はワタルを連れて外に出た。


何ともない時間なのに、何だかすごく幸せに感じる。
あぁ、僕、やっぱりワタルに会いたかったんだなぁ。
本人には言わないけど、僕はそう思って少し笑った。



「あ、ワタル!今日は晩御飯作ってくれる…うわ、」



少し前を歩いていると、ポニーテールを引っ張られた。
痛くはないんだけど、いきなりの行動が理解出来ない。



「お前は食うことと寝ることしか考えていないのか。」

「ワタルの料理が美味しすぎるのが悪いんだよ…ていうか、何してるの。」

「いや、特に何も。」



言いながら、ワタルは僕の髪に指を通した。
何だか少し恥ずかしくなって、ワタルをちょっと睨んだ。



「何もって、何だよ。」

「いや…少し、似ていた。」

「似ていた?」

「ドラゴンに。」



……………はぁ?

いやごめん、意味が解らない。
ドラゴンに似てるって、はぁ?
僕が?いや、僕のどこが?

あぁ、やっぱりワタルの考えは一生理解出来ないかもしれない。



「ハクリュー…いや、ミニリュウか?何処かの地方にいるフライゴンとかにも似てるかもしれない。」

「ごめんワタル、僕にも解る言葉で喋って。」

「あぁ、可愛さが似ているとかそういう訳では無い。お前がミニリュウの愛らしさに敵うと思うな。」



むかつく。僕はドラゴン以下ですか、このドラゴン馬鹿。
むかついたから、僕はワタルのお腹に軽くパンチを入れた。
痛くはないだろうけど、ワタルは少しきょとんとしていた。
「俺、何か言ったか?」そんな感じ。あれ、充分ワタルの考え理解出来てるじゃないか僕。



「…何を怒ってるんだ?」

「怒ってないよ。それより、僕のどこがその可愛いドラゴンに似てるんだよ。」

「だから、これ。」

「…髪?」



さら、とワタルに髪を掬われて、少しどきっとしてしまう。
ワタルはいつもよりずっと優しい穏やかな笑顔を浮かべていて、何だかすごくどきどきする。
これがドラゴン達に向ける笑顔か、と思うと、ちょっと羨ましく感じた。



「こう、ぴょこぴょこ動くところとか、細長いところとかが何となく似ている。」

「…そんなこと言われたの初めてですよ。」



ワタルは、こうしてすごく抜けた発言をする。
きっと四天王の人達は、ワタルにこんな可愛い姿があることなんて知らないだろう。
僕だけがこういう姿を知ってるんだ、そう思うと何だか嬉しかった。



「俺はお前の髪、好きだ。」

「…ミニリュウだから?」

「……お前、だからだろうな。」



そう言うと、ワタルはその優しい笑顔を僕に向けた。

すごく綺麗で、僕はそれに見惚れてしまった。
顔が熱くなるし、おまけに何だかにやけてしまう。そんなの見られたくなくて、俯いて呟いた。



「………ずるいや。」

「?何がだ?」

「何でもないですよ。」



ワタルは、むっと眉間に皺を寄せた。
あの顔は、「気になるだろう、教えろ」そんな辺りのことを思っているんだろう。
それには気付かないフリをして、僕はワタルに話しかける。



「…そろそろ行こうか?良い釣り場があるんだ。」

「…俺は釣った魚を運ぶ係か。」

「それを調理するのもワタルの仕事だよ。」

「中途半端な魚だったら晩飯なんて作らないからな。」

「任せてください!」



笑ってみせると、ワタルも微笑んで僕の頭を撫でた。
くすぐったくて嬉しくて、僕ははにかんでから「案内するよ」、とワタルの手を引いて歩き出した。






その一言で、をもっときになる





僕、ポニーテールで良かったな、なんて思って笑ってしまった。




白石由様から頂きました!
竜黄も好きなんですがこれって年齢的にどうなの?といつも考えてしまいます。
竜王からすれば妹的位置なのかな。






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