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Sweet bubble







「………」



ちゃぷちゃぷ。ちゃぷちゃぷ。………あたしが浴槽に溜めたお湯をはじいても、一つも身じろぎさえしない、あたしの真後ろで、あたしを背中から抱っこして座ってる状態のグリーン。多分、あたしの頭の後ろからすうすうと寝息が聞こえるから、後ろの彼は確実に寝てる。

一人で入ってるんだったらまだいい。でも、せっかく一緒に入るってことになったんだから、こう、二人で楽しみたいじゃない?

あたしはくるっとグリーンの方を向く。さっき頭を洗ったばかりだから、毛先から水滴がいくつも垂れてる上に、いつもと髪型が違う。こういう、いつもと違う髪型が見れるのも彼女の立派な特典よね………。でも、今は気持ちよさそうに寝てる彼がさびしくて、憎たらしい。

あたしは浴槽に浮かべてさっきまで一緒に戯れていたプリンの置物の口をぎゅっとすぼめた。すると、プリンの口から勢いよくお湯が出てきて、それは綺麗な放物線を描いて、見事にグリーンの顔に命中。



「っつ………」

「おはよ、グリーン」

「………なんだその不細工なプリンは」

「ブサイクじゃなーい!可愛いでしょ??」



今ではプクリンになったあたしの手持ちのぷりり。先週くらいに雑貨屋に行ったらこのプリンがおいてあってひとめぼれ。ぷりりがプリンだった時代を懐かしく思ったのもあったし、だいたいお風呂に浮かべるのってアヒル型のものが多いじゃない??だから面白いなあって思って。



「って、何か匂うぞ、この風呂」

「あら、気付かなかった??」

「いつの間にこんなん入れたんだ」

「だってグリーンが起きなかったのがいけないのよ?起きないんだからブルーちゃんは楽しいお風呂タイムを満喫してたの」



やっぱグリーン嫌そう。そりゃそうかも、だってプリンの口から発射されたお湯は、人工的に香り付けされた所謂チョコ風呂になってるお湯なわけで。甘いものがあんまり好きじゃないグリーンはしかめっ面。不機嫌って顔が言ってる。



「………お前、絶対根に持ってるだろ」

「いーえ?」

「帰るの遅くなるって言っただろ」

「あたしが入れてみたかったから入れただけだもの」



分かってる。グリーンのお仕事はこういうお仕事なんだって。でもいろいろ準備して待ってたんだもの。こういうすぐに拗ねるところが自分のキライなところ。きっと彼のお姉さんだったら、にこにこ笑って、お疲れ様って言って迎えてあげるんだろうけど、あたしなんて拗ねてベッドにダイブしちゃったし。しかも起きてて、グリーンが帰ってきたの気付いたけど、頭撫でてくれたもの分かってたけど………、無視、しちゃったし。



「で、食ったんだろ、用意した本人が」

「………だってついカッてなっちゃって」

「冷蔵庫入れるとかできただろ」

「………もしかして期待してたり??」

「………」



あ、そっぽ向いた。こう無口になってそっぽ向く時って、だいたい照れてたり、核心突かれたりした時なのよね。



「グリーン可愛い〜♪大丈夫、また作ってあげるから!」



ご機嫌になったあたしは、再びプリンの口から水鉄砲ならぬチョコ湯鉄砲を発射しようとしたけど、グリーンがプリンの顔をわしづかみにして阻止。何か、さっきの静かにお風呂につかってるのもそれはそれでいいけど、やっぱりこうやってわいわいしてる方がずっとずっと楽しい。



「………甘ったるくて耐えれない」

もう1回洗い直しだ。



ふうっとため息をつくグリーン。



「じゃあ、あたしグリーンが洗い終わるまでここで待ってるから」

「………何言ってる。お前も洗い直しだ」

「へ??」

「そんな甘ったるい匂いさせてるお前と同じベッドで寝る俺の身にもなれ」

「ちょ………!!」



―――その後、ベッドで寝ることになったあたしの身体からはチョコの匂いは全くなく、石鹸のいい香りがしました。





Sweet bubble





(「グリーンにいじめられた………」)

(「お前が先に吹っかけてきたんだろ」)




鈴から頂きました!
お風呂!一緒にお風呂!虐められたとはやっぱりあれですか、あれですよね(最低
素敵な文章有難う!





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