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初恋




オレの初恋はねえさんだと思われていることが多い。
実際、幼い頃はずっと一緒にいたし、助け合って生きてきたから、そう思われるのも無理はない…と思う。

だが、それは恋ではないのだ。

オレの初恋は、そう───。

初恋



『わかりました!自分で取ります!』

そう叫んで、“彼”が麦わら帽子を取った瞬間。

靡いた黄金の髪、恥じらった顔。“彼”でなく“彼女”だと気づいた瞬間、オレは目を奪われていた。



それから2年が経ち、オレは自分が彼女と同郷であると知った。


自分のルーツを探しに行けば、彼女にも会えるかも知れない。
そう思って行ったトキワでオレは、彼女とタッグバトルをした挙げ句連れ去られ、彼女に助けられるという男にあるまじき失態を演じてしまった。


なんだかんだ言っても彼女の方が年上で、普段は守ってあげたいと思わせるような人なのに、いざとなったらいつもオレが守られていて、そんな強さにも牽かれた。


想いを伝えたい。
そう思うようになったオレだが、どうしていいのか解らず、かと言ってねえさんに相談するのも照れ臭い。
そんな時、ある人物の顔が浮かんだ。



「───で、オレの所に来たって訳か?」
「ああ」

オレだって恋愛経験なんかほぼないんだが、とぼやきながらも親身に話を聞いてくれたのはグリーン先輩だった。
ねえさんを取られたようで面白くなかったが、お父さんのことで彼に諭されて以来、兄のように思っていた。

「…お前が伝えたいと思うなら、思い切りぶつかってみろ。イエローなら結果はどうあれ真剣に受け止めるだろうからな。」

それなら悔いは残らないだろう?

彼はそう言って微笑んだ。

「…はい。でも…」
「報告、待ってるぜ。仕事があるから失礼する。」

自信がない、と言おうとしたオレの言葉をニヤリと笑って封じ込め、彼は去った。




…告白の言葉はなんだったろうか。
緊張しすぎてほとんど覚えていないが、向こうもオレに好意を持っていたと知ったときは、柄にもなく泣きそうなほど嬉しかったのは鮮明に覚えている。


「シルバーさーん!置いて行きますよー?」


そんなオレの初恋は、無事に実って今に至る。
まさかこんなに幸せな日常が待っているとは、昔のオレが知ったら卒倒しそうだ。

「ああ、今行く…イエロー。」

聞いた話ではブルーねえさんがイエローから似たような相談を受けていたらしく、2人でオレたちを引き合わせてくれたらしい。
礼を言ったら、仲良くしてればそれだけでいい、と言われた。


だからオレは、2人への感謝と彼女への気持ちを込めて毎日言う。

「イエロー、愛してる。」



卯月さんちからフリーで頂いて来ました。
銀黄!何気に好きな組み合わせだったりしますトキワ組。
姉さんのことだからそのうちWデートするわよ!とか言い出しかねない。笑






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