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先入観とミルクティー




人は見かけによらないものだと、アタシは今日、思い知らされた。


先入観とミルクティー


アタシとグリーンは所謂“初デート”の真っ最中だった。

最近リニューアルしたタマムシデパートを下から上まで見て回りたい!と言ったアタシのワガママをグリーンが叶えてくれた。


「ごめんね、忙しいのに!」

そう、彼は新米のジムリーダーだから多忙を極めているはず。
なのにアタシのワガママに付き合ってくれるのが嬉しかった。

「…スケジュールは別にいいが、買いすぎじゃないか?」

文句を言いながらも荷物を持ってくれたり、さりげなく歩幅を合わせてくれたり。
並んで歩くだけで、ますます彼に牽かれていく。

「そうかしら?女の子の買い物なんてこんなものよ!
…ふふっ」

「どうかしたのか?」

ほら、また。
ちょっとしたことにも気づいてくれる。

「いーえ!ね、あそこの喫茶店で休憩しましょうよグリーン!」

「あぁ、そうだな。」

普段無表情の彼が、いろんな表情を見せてくれて、いちいちときめいて。

そんな気持ちを隠すようにテンション高めに喫茶店に入った。


「ご注文はお決まりでしょうか」
「じゃあー…アイスレモンティーと苺のショート!」

グリーンが奢ると言ってくれたから、好きなものを選んだ。

「グリーンは?」

なんとなくブラックコーヒーとか飲みそう、なんて思いながら聞くと、




「…ミルクティーのホットとチーズケーキ」




「…えっ?」

店員が去ってから、まずそんな情けない声が出た。

「意外か?」

苦笑いを浮かべる彼。
また、新しい顔。

「ええ…てっきりブラックコーヒーとかかなって」
「…よく言われる」

さらに苦笑い。
実際、彼の大人びた─それもクールな─立ち振舞いを見ていたら、誰もが“甘いものが苦手なブラック派”だと思っている。レッドですらも。


「コーヒーでもよかったんだが…どうせデートするなら、オレの好みも知っといて欲しくて、な。」

先入観に囚われないでオレを見て欲しかったんだ。
つまり甘いものも嫌いじゃないし、コーヒーよりは紅茶が好き、って訳だ。


そう照れ臭そうに告げたグリーンにつられて照れてしまったアタシは

「じゃあ、アタシがグリーンのために紅茶淹れてあげる!」
と口走ってしまった。

そんなアタシに楽しみにしてる、と優しく微笑んだ彼に惚れ直してしまったのは秘密だ。



卯月さんちからフリーで頂いてきました。
コーヒーより紅茶派な兄さんも良いかもしれない…!ちなみに九条は紅茶>コーヒー←どうでもいい
そのうちジムで兄さんの為に姉さんが紅茶を淹れてあげてるんだろうな!







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