ラブ・ダッシュ!
「はい、ヤナップ、あーんして」
「ヤナヤナ〜!!」
にっこり笑顔のデントは、デントお手製のポケモンフーズを一粒つまみ、ヤナップの前に差し出してそう指示。するとヤナップはこれでもか!ってくらい満面の笑みを浮かべて、大きく口を開ける。デントがヤナップの口にポケモンフーズを入れてあげると、ヤナップは両頬を抑えて、幸せそうに笑う。
デントとヤナップはものすごく仲がいい。もちろん、サトシはピカチュウと、あたしはキバゴと、という風に、パートナーと仲がいいのは当たり前だって分かってる。分かってるけど………、あたしはどうしてもちょっぴりヤナップに妬いてしまう。あと、自分が作ったものを食べてる人を見るデントの目って、とっても優しいんだよね………。
そんな二人の様子をじっと見ていたあたしは、ヤナップに試作のポケモンフーズを味見させたデントとふっと目が合った。
「アイリス、どうしたの?」
「へ!?べ、別に!?何にもやることないから見てただけよ!」
「………もしかしてアイリス………、」
デントがじっとあたしを見つめてきた。な、何?あたし、デントにものすごく怪しまれてる………!?
あまりにデントが真剣な顔であたしを見てくるもんだから、あたしは身動きが出来ない。うううっ、好きな人に見つめられるとこんな感覚になるんだ………!!
そう思ってたら、デントはにこっと笑ってポケモンフーズを指差し、こう言った。
「………これ、食べたいのかい?」
………あたしは思わず脱力。何よ、さっきのあたしのときめきを返してよー!!
「あのね、いくらあたしが食べるの好きだからって、さすがにポケモンフーズまでは食べないわよ!」
「いやあ、アイリスがものすごく熱烈に見つめてるからさ、」
「ポケモンフーズなんか熱烈に見てないわよ!あたしは………、」
ここまで言いかけて、あたしは咄嗟に口を押さえた。ちょっと、何を言おうとしたのよあたしの口!!勢いって怖いよ………!!
「あたしは?何を見てたんだい、アイリス?」
「え、えっとね、そ、その………、ヤ、ヤナップが!ほんとに美味しそうに食べてるなって思って!!」
慌ててデントの足元にいるヤナップを指差す。ヤナップはあたしに指を差された理由がいまいち理解出来てないようで首を傾げてたけど、デントは理解してくれたようで。
「ヤナップがこんなに喜んでくれるなら、きっとどのポケモンだって食べてくれるからね。安心したよ」
うんうん、ってデントは頷く。よ、良かった………!な、何とか気は逸らせたみたいね。
「ところでアイリス、」
「なあに?」
「今度、新しいおやつを作ってみようと思うんだ」
「おやつ!?楽しみ!!」
「だから、今度アイリスに食べさせてあげるよ」
誰よりも、一番最初にね。
あ、あたしが一番最初………!!そ、それってパートナーのヤナップよりも先に、ってことだよね………!?あたしは心臓の鼓動が跳ね上がるくらい嬉しかった。だって、好きな人の手料理を一番最初に食べられるんだよ………!嬉しくないわけがない。
「もちろん!喜んで!!」
「良かった。アイリスが美味しいって言ってくれたら自信つくし」
一瞬、それってあたしは毒味係?って思ってしまったけど、でもやっぱり“誰よりも一番最初に”っていう言葉の響きとデントの微笑みに、あたしの頭の中を一瞬よぎったことがあっという間に消え去ってしまった。
「アイリスに喜んでもらえるように、頑張らないとね」
「楽しみにしてるね、デント!」
―――もしかしたら、今はまだあたしの一方通行な恋かもしれない。デントって、バトルやテイスティングの時以外は案外と天然で鈍感だったりするから。
だけど、いつか必ず―――、あたしはデントに想いを伝えてみせるから。待っててね!
ラブ・ダッシュ!
(………アイリスだから一番最初に食べて欲しいんだよ?気付いてるかい??)
………一方通行の恋、というわけではなさそうです―――。
鈴蘭様から頂きました! 何これ可愛い、の一言に尽きます…!ピュアップル!可愛いぞ! 改めまして有難うございました!
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