垂れ流しのラブソング
「結婚なんてするもんじゃないわよ」
きっぱりとブルーは言い切った。 向かい合わせに座っているレッドは、そうなのか、と答える。
「でもさ、好き同士で結婚するんだから、楽しいもんじゃないのか?」 「そりゃあ、ずっと一緒に居られるなら楽しいかもしれないし、幸せだと思うわ」 「違うのか?」
レッドが頭の上にハテナマークを浮かせながら訊ねると、ブラックコーヒーが入ったカップに角砂糖7個目を入れ、ブルーは不満げな顔をした。
「なんてゆーか、思い浮かべてたのと現実の差についていけない」 「うわあ」 「新婚生活舐めてたわ、ドロップアウトしそう」 「…オレ、グリーンともブルーとも3人でまだ仲良くしてたいから離婚しないでくれ」 「しないわよ、お馬鹿」
レッドが割りと真剣に言うと、ブルーは即答する。 そして8個目、9個目の角砂糖が投入された。ブラックコーヒーは既に味が変わっているだろう。
「ジムが忙しいからって帰りは遅いし、ご飯作っても無言で食べるし、家の中すっごく綺麗にしても無関心だし。なんなのっ!?」 「お、オレに怒られてもっ」
ばんっとテーブルを叩くと、レッドは反射的に身を縮ませる。 そしてブルーが10個目の角砂糖を入れた。
「そのくせ滅多にない完全オフの日は、昼まで一緒に寝たり、昼食作ってくれたり、出掛けたり、ずーーっと甘えさせてくれたり、甘えたりすんのよ、アイツっ!」
ブルーは勢いよく角砂糖10個入りのブラックコーヒーを飲み込んだ。
「…あまっ!」 「そりゃ甘いだろ」
10個も入れてんだから、という言葉を胸の中にしまいこんだ。 数えてたことがバレたら、きっとまた、真面目に聞いてなさいよ!とか何とか突っ込まれということをレッドは知っているからだ。
「こんな最低な奴どう思うっ!?」 「どう思うって、オレには今の話が惚気にしか聞こえなかったんだけど」
垂れ流しのラブソング (ところで何でブラックコーヒーなんだ?) (アイツに合わせてるからに決まってるでしょ!)
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